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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第5章 ダンジョン演習と逃げられない運命
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第42話 結集する力


「……おい、ロープの長さ、これ足りてねえんじゃねえか?」

「……うん、ヘンリ君の言う通り、大分地面とは近づいたけれど、ロープから降りて行動はできないかも……」


ヘンリが下を向いて叫ぶと、ロープの一番下にいたフレアが目を凝らして報告をする。


「……いや、これも予想はしてた。でも、もしシエル君に魔力が残っていたら、ギリギリ飛んで届く距離まではこのロープで降りれると思う。もし残っていなくても、そうなれば持久戦だ。先生たちが応援に駆けつけてくれるまでシエル君達を守り切れたら僕らの勝ちだ」


アレクはロープを慎重に下りながら、声を張る。


「…でも大丈夫なの?地面と近づいて聞こえてきたけれど……この鳴き声、相当な数のゴブリンが……」

「……アレク君、私の魔法なら、ゴブリンもある程度間引きできると思うのだけど……」

「いや、シャルロッテさんの魔法は危険だ。もし、シエル君達がそのゴブリンの中にいた場合、巻き添えを食らっちゃう」


シャルロッテはなるほど、と呟くと、下を向いて悔し気に唇を噛む。

力に溢れているというのに、それを友達の為に使う事が許されないじれったさ、そんな事実がシャルロッテの心を焦燥に駆り立てた。



「……着いた!ここがロープの一番下!」

「よし、なら今からはシエル君達を探す作業だ!多分ここからそう離れたところにはいないと思うんだけど……」

「暗くてよく見えん!どうやって探せばいい?ゴブリンの鳴き声も邪魔だ!」


ヘンリが声を張り上げるが、その声すらもゴブリンの鳴き声によって聞こえづらくなってきていた。


「……ここからはシャルロッテさんの力に頼る事になると思う」

「……私が魔法を使ってもいいの?」

「あぁ、シャルロッテさんにはここら一帯全部に火魔法を展開して欲しいんだ」

「ぜ、全部!?」「そんなの…シャルロッテさんの魔力をもってしても、いけるかどうか……」


フレアとイレーナはアレクの要請に驚き、急いでシャルロッテの方を見るが、シャルロッテは下を見つめながら、即答した。



「ええ、やるわ」

「よかった、ならイレーナさんも風魔法で援護してくれたら……」

「それはいいけど……やっぱり無茶よ!魔法を広範囲に展開する事は一点に集めるよりずっと難しいの!シャルロッテさんでも……」


イレーナはシャルロッテの頭上から声を張るが、シャルロッテは静かに顔を上にあげ、イレーナに笑みを向ける。


「できないなら、今できるようになればいい。違う?」

「……そんなの、普通出来ない」

「かもしれない……でもこんな私達を待っている奴らが下にいる。やるしかないの」

「………分かった」

「あなたの風魔法にも頼らないといけないかもしれない。その時は頼むわね」


シャルロッテとイレーナの話が決着したのを聞いて、アレクは今度はヘンリに向けて指示を出す。


「ヘンリ君は、前にも見せた水魔法の飛ぶ斬撃、あれで道を作って欲しいんだ」

「道?」

「そう、シエル君達と僕らの間にはきっとゴブリンがうようよいる。だからヘンリ君にはシエル君達が僕らのロープの方に来やすいよう、ここからゴブリン達をやっつけていってほしい」


「よっしゃ!!フレアさん、できるだけ近くで攻撃したいから、そっち行くぞ!!」

「へ?……ええええ!?」


ヘンリはフレアに向かって叫ぶと、ロープから手を離し、下に落ちていく。

フレアは片手をロープから離してヘンリの腕を掴むとそのまま引っ張り上げて、抱え込むようにしてヘンリを抱き抱える。


「……ふぬううう!!何してんの、ヘンリ君!!」

「悪い、悪い。フレアさんならちゃんと受け止めてくれるだろうと思ってな。しばらくこの態勢のまま耐えれるか?」

「え、まあうん、ヘンリ君のためなら、全然いける、というかむしろ嬉しいというか……」

「そこの馬鹿力女、ヘンリ君にやましい気持ちで抱きついてるんじゃないよね」

「ふん、イレーナも悔しかったら、もっと体鍛えなさい」

「フレアちゃん、あとで覚えててよ…」

「よし、木刀の準備も完了!アレク、準備は万端だぞ!」


「……大分修羅場の匂いがするけど、いいや!それじゃあ、シャルロッテさん頼んだよ。僕が必ずシエル君達を見つけてみせるから」

「分かった」


アレクがシャルロッテへ向けて言うと、全員が一斉にその集中力を研ぎ澄ませ、その場は緊張感だけが支配した。

目を瞑ったシャルロッテさんは、目を開くと、指を体の周りに弧を描くように振るう。


その瞬間出現した火魔法は、シャルロッテさんの指の動きに合わせるように、一斉に広がりながら弧を描く。


「……まさに化け物ね……」


一斉にダンジョンの中を照らしたシャルロッテさんの火魔法を見ながら、イレーナは風魔法をもって、火の広がりを放射線状に伸ばしていく。

イレーナの魔法は、シャルロッテの魔法で行き届かなかった所までその魔法を届かせており、的確にダンジョンの中を照らしていた。


そこでアレクは一つ気付く。

ゴブリンが皆して一斉にどこか一点を見て立っていたのだ。


その先には……



「イレーナさん、あそこ!あそこに一回り体の大きなゴブリンがいる。あそこにシャルロッテさんの火を送れる?」

「でき、るわよ!今も大分しんどいけれど!」


シャルロッテとイレーナは必死に集中をしながら魔法を生み続け、かつ火魔法をアレクの指定した場所へ送る。


そこには…



「……ヘンリ君」

「あぁ、俺にも見えた!」

「……やっと、見つけた。シエル君だ!!……ヘンリ君、急いで!!」

「もう詠唱は終わった!『水刃』!!」


その瞬間、フレアさんに抱えられたヘンリは背中に掴んでいた木刀を振り上げ、一気に下ろす。

木刀の斬撃を伝えるように猛スピードで地面まで向かっていくその水の斬撃に、並のゴブリン達は太刀打ちする事が出来ずに、ゴブリン達を蹴散らしながらボスゴブリンの方まで向かっていった。


アレクはボロボロになりながらリアラさんを背負うシエルの姿を見て、ここで何が起こったのか、その全てを悟った。

シエルはアレク達を見つけて安心したのか、ふらふらと足をもつれさせる。


そしてそれと同時に、ボスゴブリンはヘンリの斬撃に向かって腕を振るうと、斬撃はボスゴブリンの衝撃に耐えきれずにその場で解除されてしまう。


「っち!やっぱり距離が…」


ヘンリが二撃目を放とうとした頃、アレクにはもはやボスゴブリンの姿など目に見えていなかった。

周りのゴブリン達が一斉にシエル達へ襲い掛かる。

今、シエルにかけるべき言葉。

届くかは分からないが、それでも声を張り上げて、アレクは手を伸ばした。




「シエル君!!飛べ!!」



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