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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第5章 ダンジョン演習と逃げられない運命
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第41話 最後の希望


魔法においてステッキを使う事で直接的に何か影響があるかと聞かれれば、何もないと答えるほかない。


ただ、魔法の触媒としてステッキを使っているという感覚の方がしっくりくるという意見がある事は確かなのだ。

それも実際に魔法の威力が変わる事はないので、気のせいの延長でしかないのだが、その事をリアラさんに尋ねると、


「な、なんかステッキを使ってると、強くなった気がして、いつもの10倍くらい上手く魔法が扱えるんですよ!……まぁただの気のせいではあるんですけど、気のせいにもすがりたい、みたいな、そんな感じです……」







俺は背中で寝息を立てるリアラさんの言葉を思い出して、ステッキに込める力を強くする。


(リアラさんは背中に紐で縛り付けてはいるけど、今迄みたいに浮遊魔法を使った激しい戦闘スタイルは使わない方がいい。そうなると、残った俺の武器はルーベルトさんとの修行で身に付けた初心者程度の火魔法だけだ。……勘違いにもすがりたい、そんな気持ちも今なら分かる気がする)


俺は息を吐いて、リアラさんのステッキを前に出す。

ダンジョンの中という事で、幾何かは魔力も回復しているが、それもほんの少しだ。

ここを緊急脱出するための浮遊魔法分の魔力は残しておきたいから、それを差し引けば雀の涙ほどしか残らない。


ならどうやって勝つか。


「『ファイアー』!」


俺はステッキの先から火の玉を生み出し、まっすぐ前に飛ばすが、それを見たボスゴブリンの周りのゴブリンは一斉に俺の方へ襲ってくる。

俺は気にせず、ステッキをくるりと回して火の玉を操る。


「ぎゃ?」

「……ぐぬううう!!」


魔法のコントロールなんてリアラさんは軽々とやってのけるが、実際は死ぬほど難しい。

だが俺だってリアラさんに教えて貰った特訓はずっとしてきたのだ。


俺のファイアーはボスゴブリンの前に控えていたゴブリン達の上空を飛び越え、ボスゴブリンの頭の上も飛び越える。


ボスゴブリンが警戒しようとその火の玉を追って後ろへ振り返った瞬間、俺のファイアーは飛んでいく方向を真逆に変え、まっすぐボスゴブリンへ向かう。


「ぎゃあ!」


しかしボスゴブリンの反射神経はそんなファイアーにもしっかりと対応し、拳でそれを弾いてしまう。


(ここだ!)


俺はリアラさんを庇い、やってきたゴブリンの体当たりや投石を直に受けてしまうが、そんな猛攻に耐えながら魔法を完成させる。


「「ぎゃっぎゃ!!」」

「……できた!『炎球』!!」


俺はステッキを振りかぶって、まっすぐ、炎の球をボスゴブリンへ向けて放つ。

シャルロッテさんの魔法を見よう見まねでコピーした技だが、これが魔力で作れる最大限だ。

今度はコントロールなんて考えない。


まっすぐ猛スピードでやって来たそれに、後ろへ振り向いていたボスゴブリンが気付いた時には、俺の『炎球』はボスゴブリンの眼前に迫っていた。


「…っぐぎゃああ!!」


炎の球はボスゴブリンの顔面に直撃し、その体を地面へ倒す。


(……できた、浮遊魔法がなくても、倒すことができた!)


俺はそれだけ見届けると、俺を包囲するように集まっていたゴブリン達の一点に浮遊魔法を少しだけ使って突っ込んでいく。

浮遊魔法の勢いの乗った俺の蹴りはそこのゴブリンを吹き飛ばし、俺は包囲網の一点突破に成功する。


(……よし!最小限の魔法だけで切り抜ける事ができた!というかこれ以上は魔力切れを起こしかねないから、ここからは……)



「ギャアああああ!!!」


思わず耳を防ぎたくなるその鳴き声が、俺が倒したはずのボスゴブリンから発せられているのは明らかだった。

ボスゴブリンは顔をさするようにして起き上がると、俺の方を向いて、何度も鳴き声を上げる。


「ギャアああああ!!!」

「…うるさいな、いい加減……!」


その瞬間周りを見渡すと、周りのゴブリン全員が俺の方を見ている事に気が付いた。


(まさか……全部のゴブリンが一斉に、俺達を標的にしたっていうのか!?)


そうなると、やばい!いや、やばすぎる!

全部のゴブリンを相手にできる魔力なんてあるはずもないし、浮遊魔法でもどうにもできない。

何よりあの耐久力を誇るボスゴブリンをどうすれば……。


顔をさすりながらニヤニヤと笑みを浮かべるボスゴブリンはゆっくりこちらへ近づいてくる。


終わった……のか?

もう生き残る方法はないのか?



俺はリアラさんの吐息を背中に感じながら、再びステッキをボスゴブリンの方へ向ける。


「それでも!それでも俺は諦めるわけにはいかないから!ここまで一人で来れたわけじゃないから!…だから…」


その時、叫びながら俺はふと天井の方を見上げた。

そこには、先程までと変わらない真っ暗な闇……ではない、一筋の火の道が天井から俺達を照らしていた。


あれは……。






「……やっと、見つけた。シエル君だ!!」


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