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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第5章 ダンジョン演習と逃げられない運命
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第39話 いつも通りの事


俺は走り回りながら、どこかゴブリンの少ない所を探す。

落下地点への方角は把握しているつもりだが、実際どこまで離れてしまったのかはよく分からない。

戦う相手は少ない方がいいに決まっている。


「……シエルさん!2時の方向!」


「……っぶね!!」


俺は体を後ろに反らして、ゴブリンによって投げられた投石を避けるが、リアラさんを背負っている為、足がくらくらと安定感を失う。


「ウサギさん!」


そうしている間に俺達に近づこうとしていたゴブリンを、リアラさんは火魔法のウサギで牽制する。


「……すまん!」


俺は足に力を込めて踏ん張ると、急いでその場を後にする。


駄目だ、どこもゴブリンしかいない。

しかもゴブリンの攻撃も単純なものではなく、石を絡めた攻撃をしてくる分神経が擦り減る。


ゴブリンの中には魔法を扱うゴブリンもいるし、このゴブリン達を束ねるリーダーは、他のゴブリンとは格が違うと聞いたこともある。

まだこれらと遭遇していないだけ、運はいい方……


「し、シエルさん!!」

「……なっ!?」


目の前に急にリアラさんの蝶が現れたかと思うと、すぐに何かと相殺され消えてしまう。


これは、ゴブリンからの火魔法!?

よくよく目を凝らしてみればゴブリンの集団の奥に、木の棒を握ってこちらを見つめ、少し知的な雰囲気を醸し出すゴブリンがいる。

いや、その横にはそのゴブリンよりも二回りほど体の大きな……


「……ボス、ゴブリン?」

「……もう俺、何も考えない。思った事全部フラグになってるだろ、これ……」


俺はこれ以上の災難を呼ばない為にも思考を中断し、目の前の敵を睨む。


「よし、逃げよう!!」

「ですね!」






アレク達一行は、ロープを伝いながら、ゆっくり降りていた。

大分体力を要する作業であるため、女性陣の疲労を心配していたヘンリであったが、シャルロッテも、フレアも、イレーナすらも全く疲労の様子を見せず淡々と降りていく。

その中でも、


「ま、待って、皆。なんでそんな淡々とロープ降りれるのさ」

「……さっきまでの頼りがいの塊だったあなたはどこいったのよ」

「いや、僕、若干高所恐怖症で……」

「じゃあ、なんで来た!?」


アレクは泣き言を言ってはいるものも、落ちそうになって、必死にロープにつかまって、を繰り返して、必死についてきている。

腰はすっかり引けているが、まだその目には確固たる意志と決意が滲んでいる。


「……そんな事より、シエルとリアラさんはまだ踏ん張ってるんだろうな?音も何も聞こえてこねえ」

「……多分、落下したところからは離れてるんだと思う。魔物がうじゃうじゃしていたか何かで」

「……随分アレクは楽観しているようだけど、普通に考えて死んでいる可能性だって高いのよ。何か根拠はあるの?」

「シャルロッテさん。根拠ならあるよ」


アレクはロープにしがみつきながら、下にいるシャルロッテさんに声をかける。

シャルロッテの手は淡々とロープを降りているようであったが、かすかに震えている事をアレクは知っていた。

だからこそアレクは思い出すようにロープに込める力を強くする。


「……だってシャルロッテさんも知ってるでしょ。シエル君は、学園に来てから一度だって努力をやめたことがない。浮遊魔法ができなければ、何度だって練習して、失敗して、なんとかものにした。ダンジョン演習のリーダーになったら、ダンジョンの予備知識も全くなかったくせに、必死に勉強して……皆知らないようだけど最後の小テストでは点数でも僕に勝ってた」


「「…………」」

「リアラさんも同じだ。あの魔法、見ただけで分かる。努力をしてないわけがない。きっと何度だって失敗して、それでも立ち上がってる。……そんな二人が、簡単に死ぬわけがないだろ?」

「……そうね、そうだったわ。こんな所でくたばるようなたまじゃなかった!」

「結局信じるしかねーってこったな!!」


アレクは、元気に返事を返すシエル班の面々を見下ろしながら、笑みを浮かべると、改めて下を向いて考える。


(正直下で何が起こっているかは分からない。でもきっとシエル君なら何とか凌いで時間を稼いでいるはずなんだ。僕らは僕らにできる事を、確実にやるだけだ!)


「……し、しまった!高所恐怖症なの忘れてた」

「うおおおおい!!お前の真下俺なんだから、ちゃんと力込めてロープ持て!お前のけつが俺の頭に乗ってんだよ!」

「…やばい、力込めたらおなら出そう!」

「本当にやったらマジでこっから落とすからな!?」

「……なにこんな場面でコントやってるのよ」

「いつも通りで、いいって事にしときましょ……」


ゆっくり着実に、アレク達はシエル達に近づいていた。







「あ!あれ私のリュック!!」


リアラさんが指さすと、確かにそこには俺が途中で捨てたはずのリアラさんのリュックが落ちていた。


「あの中に確か、いざとなった時の魔物除けのお香入ってたはずですよね!それがあれば、この危機的状況も何とかなるかも!」


今の俺とリアラさんは強そうなゴブリンを避けている分遠回りをしているが、着実に、元の地点に戻りつつあった。

だが正直体力的にも、リアラさんは魔力的にも限界に達していたので、クソラノベクオリティのご都合アイテムではあるのだが、正直神アイテム過ぎる!

クソラノベ世界最高!!


「そういえば、先生そんな事言ってたな!これは使える!あのリュックもそのお香のおかげか、無傷だ……」


その瞬間、リュックのそばに控えてたゴブリンが顔を出して、中身を荒らしだした。


「……え゛」

「あ、そういえばお香の封、全然開けてませんでした」



「「………」」


ゴブリンがリュックを持って集団に帰っていったのを見届けた俺の顔は、おそらく40歳ほど老け込んでいた事だろう。

特に意味はないが、頭の中を病院で心肺停止して、ツーという音と共に息を引き取る見知らぬおじいさんの映像が流れる。



「……もう俺、喋るのも心の中で思うのもやめる」

「な、なんでですか!?」


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