第38話 作戦の開始
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「よし、ロープは岩に括り付けた。あとはこの、滅茶苦茶滑り止め性能の高い魔物の皮を使った、このロープ専用の手袋をはめる」
「……たかが演習ごときに、リゼ先生がやたらダンジョングッズを多めに持ってくよう指示してたけど、まさかこんな風に役立つことがあるとはね……」
アレクがジャック班のダンジョン探索用のリュックから手袋を取り出すと、シャルロッテとヘンリに向けて放り投げる。
これがあれば、ロープを片手で軽く握ってるだけでも、滑り落ちるという事を防げるだろう。
「……私達はどうすればいいの?」
そうなると何も指示の与えられていないフレアは立ち上がって、アレクに問う。
「……正直僕は君達を信用してない。進んで地図を細工したり、リアラさんをいじめるような奴、僕は信用できない」
「……ま、妥当な意見ね。なら私達もここで待機していればいいの?」
「そんなわけない。フレアさんとイレーナさんも戦力で言えば頼りになるんだ。でも……君らの言う通り、危険にさらすことになる。だから、来てもいいって言ってくれるなら来て欲しい。僕が言えるのはそれだけかな」
イレーナは自分の手に視線を落とすと、今度はフレアを見る。
その時、お互いの気持ちは一致していた。
「行くに決まってる。リアラさんには今日の借りもまだ返せてないしね」
「私達だってこんな終わり方を求めてたわけじゃない。邪魔だって言われてもついていくわ」
「……そっか」
アレクはそんな二人を見ながら微笑むと、ロープを穴に投げ入れる。
「じゃ、ヘンリ君も、シャルロッテさんもいいね」
「あぁ、そろそろ魔物をめっためったにしてやりたいと思ってた頃だ」
「ええ、あいつがリアラさんと二人きりで、リアラさんに変な気を起こしてないか不安だし」
「よっし、ならゆっくり、もし落ちても、冷静に風魔法だけはいつでも出せるように準備をして……行こう!!」
「「「「おう!!」」」」
その時既に、シエル達のダンジョン演習開始から45分が経過しようとしていた。
アレク、ヘンリ、シャルロッテ、フレア、イレーナの救出班は続々と隠し穴の中へ入っていった。
「そろそろゴブリンもここに集まってきた。行こう」
「……はい!」
アレクが隠し穴の中へ入っていった頃、俺はリアラさんを背中に背負い、立ち上がった。
「恐らく今頃、アレク達は俺とリアラさんが落ちた事に気付いて、なんとか救出しようと行動を起こしてくれているはずなんだ。だけど、助けて貰う為には、俺達が隠し穴からの落下地点まで戻る必要がある」
「……わ、分かってます。だから、だから私がちゃんと、凌いでみせます。シエルさんは助けが見えるまで、魔力は温存してください」
「……あぁ、分かってる」
リアラさんの言葉に答えるが、俺は唇を噛み、拳を握る。
俺の魔力がたくさんあって、浮遊魔法を完璧に扱えていたら、きっと落ちてすぐに1層には戻れたはずなのだ。
できないできないが重なって、今こうしてリアラさんに負担をかける羽目になってしまった。
やっぱり俺は何でもできるスーパーマンでもなければ、主人公でもない。
だからこそ俺は、どれだけ苦しい思いをしてでも、頼らなきゃいけないし、助けてもらわなければいけない。
「……絶対、無茶はしないで」
「……分かってます」
俺はリアラさんの足を担ぎ、岩陰から身を乗り出す。
アレクとのタイミングが合わなければ、落下地点に戻れた所で意味はない。
だが、不思議と分かる気がする。
絶対に皆は助けに来ている。
なんたってあいつらは、この物語の主役達なのだから。
そしてなんたって俺の、頼れる友達なのだから。




