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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第5章 ダンジョン演習と逃げられない運命
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第37話 主人公の資格


「……そういえば、もしシエル君に何かあった時は誰が代わりにリーダーをするの?」


リゼ先生はシエル班の馬車を降りようとした時、振り向いて問いかける。


「たかが演習で、そうそう有事なんて起こらないですからね。……まぁでも、もしそんな有事があるならば……」


「はあ、仕方ないから私が…」「俺だろ!俺!俺!」「僕、この人らまとめる自信がないから、僕だけはやめた方が…。」「わ、私も絶対そういうの向いてないので……」


「……この班、ポジティブにもネガティブにも、自己主張強い人しかいないわね……」

「……ですね。でも、この中で選ぶなら……断然アレクですかね」


シエルは顎に手を当てながら、アレクの方へ顔を向ける。

するとアレクを含めた皆が驚いたように、本気かと言いたげな表情でシエルの方を見る。



「……よりによって僕?」

「アレクにリーダーなんてできるのか?」

「まあ、見てなって。有事になれば、ここにいる誰よりも、頼りになる男はアレクだよ。なんかもうここまで来たら、有事が起こる気しかしなくなってきたけど、とにかくアレクに任せれば大丈夫!!」

「……僕も、もはや全部、有事が起こる伏線に思えてきたよ……」








「……ジャック君はここに残って、ロープを見てて欲しい。ジャック君なら一人でもなんとかなるだろうし、信用もしてる」


アレクはロープをそれぞれ固く繋ぎながら、淡々と指示だけを飛ばしていく。

その様子を眺めるのが、シャルロッテとヘンリである。


「……あの時、私を含めて皆不思議に思ってたけど、今ならなんであいつがアレク君を指名したのか分かるわ。ここまで淡々と、それも一つの間違いを犯す事無く、指示を出し続けるなんて狂気じみてる」

「……これがアレクの才能ってやつか?この集中力と冷静さ……シエルには全部分かってたのか?」

「……さあ」


感心するようにアレクを見つめるシャルロッテとは対照的に、ヘンリはアレクの冷静さに、ある種の恐怖を抱いていた。

純粋な力の部分で、ヘンリがアレクに負けているところは何一つないと誰もが断言できる。

それなのに、ヘンリはこの瞬間、アレクに負けたような、そんな劣等感を抱いていた。


(……どんな相手でも、勝てないかもなんて思った事はなかった。負けたとしても、いつかは勝てると、そう楽観してきた。なのに、アレク……俺はお前の中の何かに、俺でも分からない何かに、勝てないかもしれないって思ってしまった)



「……僕らを引き上げるのは、先生たちやヨーク君達に任せるとして、ヘンリ君。もし下で魔物が溢れてたとしたら、その時はお願い」

「……お、おう!」


突然振り返ったアレクに驚きながらも、ヘンリは返事をして頭を振る。

今はシエルの救出に集中しなければいけないのだ。







「……さて、ここなら急場は凌げそうだ」


俺はたまに浮遊魔法を使いながらゴブリン達と鬼ごっこをしていたわけだが、ちょうどいい岩陰を見つけたので、そこに腰を下ろす。


「にしてもリアラさんがいなかったら、多分3回は死んでたよ。背中越しのサポートありがとう」


そう言ってリアラさんを地面に下ろすと、リアラさんはくらくらと体を揺らしながら立ち上がろうとする……が、


「…いっつ」

「……大丈夫、まだこっちの体力自体は残ってる。まだ背負えるよ」

「……す、すいません。…ほんとに、私、ずっと役立たずだ……」


リアラさんは足を庇いながら、腰を下ろすと、岩陰から魔物がいないか、顔を出す。

その顔は疲弊もあるのだろうが、いつも以上に深刻で、真剣なものだった。

俺はその様子を見てゴロンとその場に寝転ぶ。


「……リアラさんと俺は一緒なんだよ」

「え?」

「俺は何かを変えたくて、この学園に来た。まだ自分自身、何を変えたいのか、どんな未来を思い浮かべたいのか、何も分かってない。でもそんな中で行動を起こすべきだと思ったから、必死になってもがいて、もがいて、もがいてここにいる」

「…………」


俺はリアラさんを眺めながら寝返りをうつ。


「シャルロッテさんとも違う、ヘンリ君とも違う、アレクとも違うかな。リアラさんも俺も弱い、一般人としてのモブなんだ。でもそんな中で必死に戦ってる、仲間なんだ。初めてできた、そんな友達なんだ。俺の勝手ではあるけど、応援したいと思うし、支えたいと思うのは当然だろ?」

「……でも、私は!……私はそんなシエルさんに何も返すことができない。それがどうしようもなく、苦しいんです!」

「大丈夫だよ。返すなんて思ってくれなくていいし、俺もあげたなんて思ってない。あとこれはヘンリ君の言葉の受け売りにはなるんだけど……」



そこで俺は半身を起こし、膝に手をつく。



「俺もリアラさんも、皆も含めて全員、友達だろ?それでいいんだ。これでいいんだよ」

「……っ!!……はい!」



リアラさんが顔を隠すように再び索敵に集中すると、俺は上を見上げて考える。



(……俺もリアラさんももう残存魔力は使い果たしたと言ってもいい。あとはアレク次第……いや、あいつに関しては心配はしてない。俺達がここをどう乗り切るか。こここそが本当の正念場だ)



……というか今思ったけど、上にいるメンバーってアレク、シャルロッテさん、ヘンリ君に、ジャック君と愉快な仲間達、そしてフレアさんにイレーナさんの原作オールスターメンバーじゃねえか。

頼もし過ぎるだろ。


俺は手をついて立ち上がると、周りを見渡す。

落下地点から少し離れた場所ではあるが、円を描くように逃げてきたため、そうは離れていないはずだ。


アレク達が助けに来てくれるならば、できるだけ落下地点には近づいておきたい。

その為にはできるだけいつでも浮遊魔法が使えるように魔力を温存しておきたいが、問題はどうやって、ゴブリン達を退けるか。


すると、何かを思いついたのか、リアラさんが振り返って、俺に言う。



「……あの、私からの提案なんですけど……ここから先、シエルさんは浮遊魔法を、というか魔法全部使わないでもらえませんか?」

「それはつまり……」


「……はい、ここから先の魔物は全部、私の力で何とかしてみせます。……私を、信じて、くれませんか?」


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