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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第5章 ダンジョン演習と逃げられない運命
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第30話 嫌いな男


「多分シエル君はわざとこういう勝負に突っ込んでいったんだと思うんだ」


アレク、ヘンリ、シャルロッテの三人は小さなランタンを灯しながら、ダンジョンの暗い道を歩いていた。

ヘンリは首を傾げてアレクに反応する。


「わざと?あいつに何のメリットがあるんだ?」

「……メリットか。多分そんなのはないんだよ。シエル君にはね」

「……つまりはリアラさんって事か?」

「うん。僕はシエル君の…僕らに対する態度と、リアラさんに向ける対応が違うと思う、というか感じるんだ。リアラさんに対しては、シエル君は寄り添って、一緒に戦おうとしている、ように見える」

「…なんかちょっと分かる気がすんな。あいつは俺達に関しては信頼してくれてるのか、大分放任主義のくせに、妙にリアラさんを気にかけてるよな」



ヘンリは首を回しながら、思い浮かべるように語る。

シャルロッテは依然目を薄く開きながら前を向いて、歩き続けていた。



「この勝負だって、本来する意味が全くないはずなんだ。でもシエル君は受けた。きっと…リアラさんに勝たせてあげようと思ったから、とかかな」

「…あいつがそんな深い事考えてると思ってるの?」

「シャルロッテさん。ならこの班の分け方はどうなんだ、って話だよ。絶対にシャルロッテさんとヘンリ君、この二人を分けて配置するべきだった。ましてはその二人をまとめて恐らく行き止まりの道に追いやるなんて、普通に考えたらリーダーとして愚かとしか言えないよ」


「……すべてはリアラさんの為って言いたいの?」

「…それが理由じゃないかって思ってるだけだよ。リアラさんに、自分の手であの二人に勝たせてあげるため」


アレクは先頭で明かりを灯しながら、後ろを振り返って呟く。

ヘンリはダンジョンの壁を眺めながら、つまらなさそうにあくびをする。



「そんだけ肩入れしてるって事はシエルはリアラさんが好きなのか?」



その瞬間シェルロッテの肩がピクリと動いたのを、アレクは見逃さなかった。

アレクは再び前を向いて考える。


「…多分そういうのとは違うんだ。なんて言うんだろう?言い方は悪いんだけど、お節介っていうのが正しいかな。きっと助けたいと思っちゃっただけなんだ。シエル君はそういう奴だから。だよね、シャルロッテさん?」

「……なんで私なのよ」


アレクが振り向いて言うと、シャルロッテは明らかに不満げな顔でアレクを見る。


「いや、なんとなく、シエル君の事はよく知ってるかなって思っただけで…」


「はあ…私だってあいつとは知り合ってたったの1か月だし。でも……あいつは知れば知るほど分からなくなる。その場の感情で動いているかと思えば、もっと先を見ているし、先を見て動いてるかと思えば、その場のノリで解決してようとする。まったく何がしたいのか、訳の分からない男だけど…きっとそれがあいつの本質だから…」

「……………………」


そこでシャルロッテは間をおいて、口に手を当てて考えると、アレクの目を見て少し微笑みを浮かべる。



「私は、アレクが思っているよりもずっと、あいつの事が嫌いだよ。いい意味でも悪い意味でも、これが私の正直なあいつに対する評価よ」

「……そっか……」


アレクは少し笑みを浮かべながら、前を向いて歩みを再開する。


(今頃そっちはどうなってるんだろう)


シエル達の動向には気になるが、アレクは前に進む事だけを考えて探索を続ける。

信じる事、それが唯一今の自分にできる事だと言い聞かせて、アレクは息を吐いて頭をダンジョン探索に集中した。





「へくちゅんっ!」

「し、シエルさん、風邪ですか?…随分かわいらしいくしゃみでしたけど」

「いや、誰かが俺を過大評価してくれたかと思えば、突然嫌いって言われた気がして」

「そ、そんな具体的なくしゃみってあるんですか!?」


俺は手についた土を払って、前を向く。

そして考える。

勝てるとすれば、それはどういう場合だ?


俺とリアラさん、フレアさんとイレーナさん、正直魔法の使い方、身体能力を考えると俺達じゃ太刀打ちできないほどの差はある。

でも、100対100の戦いじゃなくて、100対50なら、つまり相手が本気になる前に叩くなら……十分にあり得る。


いわゆる奇襲というやつだ。

その為にはまず俺達が100になる必要がある。


「ふう、できるかできないかじゃないな、やるっきゃない!」

「シエルさん?」

「リアラさん、全力で行くしかない。頼んだよ」

「……っはい!」


俺は頭の中でシャルロッテさんの馬鹿でかい火の玉を思い浮かべる。

あんな化け物サイズは無理だが、俺は人差し指を立てて、火の魔法を頭の中で詠唱する。


「イレーナ!」

「分かってる!」


俺の人差し指に魔法を集めているのが二人にも分かったようで、火の玉が形成される前に邪魔をしようと、イレーナさんが風魔法を俺に放つ。


しかしそれを防ぐのはリアラさんで、ステッキを俺の方へ向けて、イレーナさんと同じ風魔法で対抗する。


「…っイレーナ、押し切れる?」

「大丈夫!!」


「し、シエルさん、もう…」

「オッケー、魔法解除してくれていいよ。ちょっといつもよりしんどいけど…」


リアラさんに合図をすると同時に、俺は浮遊魔法で空中に浮かぶ。

実は浮遊魔法では横に移動するよりも、縦に移動する方が精密なコントロールと魔力量が要求されるので、あまり使いたくはなかったが仕方ない。


すぐ下ではイレーナさんの風が通り抜けるが、俺の人差し指の上には今の俺に作れる、最大級の火の玉が出来上がっていた。


「さて…」


俺は狙いを定めるべく、辺りを上から見下ろす。

ここからは一気に決める。

決めれなければ、負けるんだ。


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