第29話 浮遊魔法の使い方
ちょこっと裏話~!
リゼ先生が大きなため息をついた皆のダンジョン演習前テストの結果は、
シャルロッテ:100点、アレックス:62点、シエル:28点、リアラ:15点、ヘンリ:8点
という結果でしたー!
ダンジョン演習までの1週間で間に合わせるため、リゼ先生がどれだけ苦労したか分かりますね。
フレアさんとイレーナさんは互いに目を合わせる。
「ああ、俺とリアラさん、君たちはその二人でいい。俺らが勝ったら本物の地図を渡してもらう。負けたら地図はいい。俺達はこのでたらめな地図で隠し穴を警戒しながらゆっくり進むことになるな」
「……私は賛成する。本気で私達に勝てると思ってるなら、正面から負かしてあげるよ」
「なら私もそれでいい」
「わ、私もシエルさんがいいなら…」
「という事で、ジャック君達が見ててくれよ!これは決闘だから、ジャック班だからって贔屓にはしないでよ!あと魔物が来たら追っ払っちゃって」
「っち、わかったよ、やってやるよ」「僕この展開が何が何だか、よく分かんないんですけど」「安心しろ、俺もだ」
ジャック君の取り巻き達はいまいちよく分かっていないようであったが、それでも腕はまぁまぁある奴らだ。
ジャック君もいるのだから、いざとなればちゃんと止めてくれるはずだ。
俺はその場で軽く屈伸をする。
この空間はあの時の決闘場に比べれば狭いが、それでもダンジョンの中で考えれば大分広い空間になっている。
「し、シエルさん?」
「だ、だだだだ、大丈夫!!緊張なんてしてない、してない!!」
「は、はい!ですよね!!」
心配してくれたリアラさんに思いの外大きな声で反応してしまったが、俺は息を整える。
大丈夫、大丈夫、相手はヘンリ君でもシャルロッテさんでもない。
むしろ原作を思い返してみれば彼女たちはやられてるイメージしかなかったはずだ。
そう思うとなんだか気持ちも軽くなってきた。
我ながらどうしようもない男だと思う。
「そういえば、2対2、初めてだな」
「私、火魔法と風魔法でサポート、するので、し、シエルさんは思い切ってやってくれたら…」
「了解、なら諸々はリアラさんに任せるから、俺も最初から飛ばしていくよ」
「はい!」
「ならお互い準備はできてっか?」
「おう」「…ええ」
俺がジャック君に返事をすると、リアラさんはあのステッキに込める力を強くして、フレアさんとイレーナさんを睨む。
その二人はリアラさんにひるむことなく、余裕の表情でジャック君のコールを待つ。
俺は首を回しながら、浮遊魔法の詠唱を始めると、しばらくして体がふわりと浮かぶ感覚に包まれる。
ずっと考えていた、この浮遊魔法の原理を。
浮かびながら移動したい方へ魔力を込めると、猛スピードで突撃してしまうのだが、きっとこれは本来の浮遊魔法の使い方ではない。
俺の見てきたファンタジーの中の魔法使いはもっとふわふわ浮かびながら魔法を使っていたし、原作アレクもそのように使っていた。
俺はダンジョン演習までの期間、そのイメージに少しでも近づこうと、訓練を重ねてきたのだ。
その結果、
「始め!」
「俺やっぱ無理だったからさ、『浮遊魔法・ベクトル真っ正面』!」
俺は目の前で手を広げて、叫ぶ。
込める魔力は、二人の美少女の方向へ向けて、俺は飛んだ……というよりさながら闘牛のように、突っ込みに行った。
二人はそれを予見していたのか、俺が突撃する一瞬で左右に別れ、俺の体はそのままダンジョンの壁に向かう。
(急、ブレーキ!!からの…)
反対方向に向けて魔力を込めて体を急ブレーキすると、なんとか体を捻って二人の方へ体を向ける。
二人は俺の動きを目で追うために、二人してその顔をこっちに向けてくる。
やっぱりこの魔法、体の負担が大きすぎるが、まずは、
「フレアさん、あんたからだ!」
「っ舐めんな!!」
「『ファイアー』!」
俺は火の魔法を詠唱して、シャルロッテさんと比べたらまだ大分小ぶりだが、その火の玉はまっすぐフレアさんに向かっていく。
フレアさんは魔法というより身体能力で戦うパワー型だったはずだ。
魔法でごり押していく!
しかしフレアさんとてこの程度でやられるわけもなく、すぐさま膝を曲げて地面に伏せると、魔法はそのままフレアさんの上を通過して後ろへ飛んでいく。
が、
「……がっ!」
「わ、私だって、力に…!」
「……へえ」
後ろへ飛んでいったかに思われた俺のファイアーは、リアラさんの風魔法によってその軌道を変え、フレアさんの背中に直撃する。
しかしその隙を逃さないのがイレーナさんで、俺とリアラさんがフレアさんに集中している間に魔法を発動させ、その手をリアラさんに向けていた。
「……確かにあなた達は拙いながら連携して、強い。でも、私達は一人でも強い。
『ウィンドストーム』」
「……っ!?」
次の瞬間にはリアラさんの体が、イレーナさんのとんでも威力の風魔法にやられて後ろへ吹き飛んでいく。
「リアラさ…っ!?」
「私を無視すんなよ」
地面を這うようにしてやってきたフレアさんの攻撃を防ごうと腕を交差させて待ち構えるが、フレアさんは構わず腕を振り抜く。
「ったああ!?」
「『豪炎拳』」
最初の一発でまず俺の腕はフレアさんの、火の魔法を纏った腕に弾かれていたのだが、二発目、三発目を撃たんと間を詰めてくるフレアさんから逃れるため、浮遊魔法を発動して何とか距離をとる。
リアラさんの方まで避難して、改めて二人を見る。
「……なるほど、強いわけだ」
「降参してもいいのよ、今なら…」
「だけど!…ヘンリ君に比べたらまだまだだな」
「ま、魔法も!シャ、シャルロッテさんよりも全然痛くなかったです!」
俺達の挑発に、フレアさんとイレーナさんが特に反応する事はなかったが、その表情はさらに鬼気迫るものとなっていた。
時間は刻一刻と流れるように時を刻む。
さて、どうやって勝とうか。




