第26話 最強のパーティー
「マジで、マジで!?俺見てみた…」
魔物としての代表格、ゴブリンが現れたのだ。
もはや現代ネット小説における魔物を語るうえで花形といえば、ゴブリンとスライムの2強といってもいい。
そのうちの一つが目の前にいるというのであれば、是非その姿をお目にかかりたい!
という事でその姿を確認するため隊列を抜けて先んじた俺だったが、そのすぐそばを何かが、ヒュンと飛んでいく。
俺の後ろには今はシャルロッテさんしかいない。
前を見ているとヘンリ君も同時に動き出していた。
「『炎球』!」
「『水刃』!」
次の瞬間ゴブリン…だったものはその場で形も分からなくなっていた。
「…え?何してんの、君達」
「何って……魔物の討伐じゃない?それをしに来たんだし」
「変に時間かけると仲間呼ばれるらしいからな。サクッと」
「それは、そうだけど……俺の感動返せええ!?」
「何!?感動って!」
ゴブリンだったものの前で俺は膝をつく。
とはいえすぐさま動き出して魔物を討伐してくれた二人に文句を言うのも筋違いだ。
どうせこのダンジョン演習が終わるまでの道のりは長い。
次に会う時が来れば、その時こそその姿を見てやる。
「はあ……じゃあ、これだったっけ。討伐した証って」
「そう、ゴブリンの角は比較的どんな魔法にも耐えれるからね。……シャルロッテさんの魔法でちょっと溶けてるね……」
「ま、まあこれでも一応ちゃんとした証にはなるので、私が、持っていきますよ」
「ん、よろしく!」
俺がリアラさんにゴブリンの角を渡すと、やたらでかいリュックサックを下ろし、リアラさんは丁寧に中にその角を入れる。
ちなみにそのリュックサックには、他にも万が一の為のダンジョンアイテムが詰まっている。
今回の演習では索敵に徹してもらう予定だったリアラさんがその荷物を運ぶ役目を買って出てくれたので、俺達は比較的軽装で探索できている。
意外とリアラさんは体力があるようで、ここまで全然ペースが落ちることなくついてきているのは予定外の収穫だ。
「でも改めて5人班はそういう意味で有利だよな。数の利がある」
「だからその分この地図では遠回りが設定されてるんじゃない?ほら、もっと近道があるのに、順路ではここを通ってはいけない事になってる」
「……なるほどな。確かに筋は通ってる」
アレクの話を聞きながら俺は考える。
果たしてどう動こうか。
いや、俺達はどう動きたいのか、だ。
「……ちょっと急ごうか。魔物は見つけ次第ヘンリ君とシャルロッテさんは討伐してくれていい。敵が複数だった場合はアレクが状況に応じてサポートしてくれ。俺も多少の指示は出すけど、リアラさんはどんな状況になっても俺から離れない事」
「「「「了解」」」」
探索自体は順調だ、がしかし、気を抜いたら駄目だ。
俺は息を吐いてから、隊列についていこうと足を早めた。
「……もっと急がなくてもいいのか?シエルたちと競ってんだろ?」
「驚いた、あなた達はあの男の味方じゃなかったの?」
「…今はジャック班の一員として聞いてるんだ。それに普段からあいつの味方では決してない」
「……そう」
フレアはそれだけ答えたら、それ以上ジャックに対して何かを答えるという事はなかった。
「……ボス、どうしやす?雰囲気最悪ですけど」
「ジャック氏!!ゴブリン、ゴブリン!!僕初めて……」
「一旦黙っとけ、カンザス!」
ジャックはそう言って振り向き様に火の魔法『ファイアー』を4つ同時にゴブリンへ放つと、ゴブリンは見るも無残に吹き飛ばされる。
「……へい」
「おい、お前ら、俺達は班の仲間として協力してかなきゃいけねえんだ!!いい加減なんか作戦があるならこっちに教えやがれ!」
ジャックはゴブリンやカンザスなど気にも留めず、二人の女子に向かって怒号を飛ばす。
二人は歩みを止めてジャックの方へ振り向くと、それを軽くあしらう。
「あーこわこわ、大丈夫だよ、最初からあなた達の戦力に期待した作戦立ててないから」
「なに?」
「もう手は打ってあるって事だよ。君たちは評点アップの方法を考えてて。急いではいるけど、あくまで体力は残しておくように。あと少ししたら本気で急ぐことになる事になるから」
二人はそれだけ答えると、前を向いて再び歩き始める。
「……ヨーク氏、どうすれば学園の評価ってあげれるんですか?」
「…たしか、魔物の討伐数はそれなりに基準にはなるけど、ちゃんと探索できてるか、その時間はどれくらいかかったか、が一番の基準だった気がする。ですよね、ボス」
「………あぁ、今日のゴールであるダンジョン1層の最奥にはチェックポイントがあり、そこに俺達がちゃんと到達した証として、リーダーの私物を何でもいいから置いていく事になってるからな。その後の先生からのちょっとした尋問で、きちんと順路を通ったのか、その様子はどうだったかが聞かれる、だったか?」
「………それなら、ちゃんと探索してればあまり他の班との差別化は難しいですね。なら必然的に求められるのは、魔物に襲われながらもどれだけ早く帰ってこられるかの時間という訳ですか」
カンザスはリュックサックを背負いながら歩き始める。
なら、
「……なんでフレアさんとイレーナさんは急がないんでしょうか」
「………分からん、だが、信じるしかないか」
「ですね、成績で言えば俺達全員あの二人に遠く及びませんからね」
「「……………」」
すっかり黙ってしまった3人は静かに二人の女子の後ろをついていく。
「ちゃんと探索の様子、先生に聞かれても答えれる程度には見ててよね」
「「「はい!」」」
「……急に従順ね、あなた達」
成績という絶対的な権力を前に、人は従順になるものなのである。
「ちょっと止まって、これ」
俺は指さすと、そこにはダンジョンの壁が相も変わらず佇んでいた、が、その一部に…
「あ、あぁ!なるほど、馬さん、です!」
「そ、これが先生達からの挑戦ってやつだな。こうやって、あえてダンジョンに手を加えることでちゃんと探索したかを見極めてる」
「いやらしいわね」
シャルロッテさんが言うようにその馬の壁画は、俺達が焦って急いだりしたら見つける事ができない様な目立たない場所に描かれていた。
こういう仕掛けを見つけていくために、過度に急ぐことはできない。
「……もうすぐ中間地点、入って来てから10分は経ってるけど、いいペースだよね」
アレクは地図を傾けながら言う。
確かにあと少しでダンジョンでいう所の中間地点だ。
ここまで魔物にも結構ぶつかっているはずなのだが、その全てをヘンリ君とシャルロッテさんが一瞬でなぎ払うため、まだ一度もその姿を見ることは叶っていない。
あとは、すぐ目に見えている分岐を順路通りに進めば言う通りダンジョンの中間地点だ。
しかし、俺はアレクから地図を奪い取る。
「な!何してんのさ、シエル君のはシエル君のであるんだから…」
「ちがう、多分ここだ。奴らの狙いは」
「……どういうことだ?あの女二人がここらで妨害してくんのか?」
「違う。多分なんだけど……この地図、細工されてる」
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