第17話 そしてやって来るもう一人のメンバーが普通なわけがない
「よし、とりあえずこの班で、いこうか」
俺達四人はシャルロッテさんの周りを囲んで、集まっていた。
「僕とシエル君は置いておくとしても、シャルロッテさんとヘンリ君だけでも戦力に関しては頭一つ抜けてるよね」
「確かに、魔力量最強と戦闘力最強が揃ってたら、大抵どうにかなりそうではあるな」
「…あなた達の性格を無視すれば私もメンバーが決まって素直に喜べたのだけど…」
「ま、なんとかなるだろ!」
俺達は話し合いながら、班決めの紙に自分たちの名前を記入していく。
改めて見てもすごいメンバーだ。
原作勢からしてみれば原作で一度も組むことがなかった、アレク、ヘンリ、シャルロッテのパーティーなんて夢のチームだ。
最後に名前を書いたアレクがじっくりと紙を見つめる。
「…んーと、リーダー決めないとダメなんだってさ。誰かやりたい人いる?」
「「「はい!」」」
見渡すと、手を挙げたのは俺だけではなく、ヘンリ君とシャルロッテさんまでも手を挙げてぎょっとした目でこちらを見ていた。
「あなた達に任せてたらパーティー崩壊するに決まってるでしょ!」
「えー、でもリーダーってかっけえじゃん!それにシャルロッテさんリーダータイプじゃないだろ?」
原作を知っている俺からしてみれば、マジでパーティーで崩壊させたヘンリ君を知っている為シャルロッテさんの指摘を否定する事は出来ないが、その指摘に俺も含まれているのは心外だ。
「よし。なら、間をとって俺、シエルでいいな?」
「「「いや、ないない」」」
「お前らなんでこういうとこだけ心通わせてんだよ!!」
「…だって、先導きって厄介ごとに突っ込む未来しか見えないというか…」
「…しょっちゅう先生に怒られることになりそうというか…」
「…不安しかないよな」
「たった1か月でこんなイメージ持たれる俺の気持ち考えろよ!?」
そうこう議論していても時間だけが過ぎていく。
1時間目の授業が始まるまでに決めておきたい。
「よし、じゃんけんしようか」
「……嫌な記憶が蘇ってきたわ」
「今回はチャチャっと決めるから大丈夫だろ。あ、ちょい待ち」
すると俺とヘンリ君、シャルロッテさんの三人は一斉に制服のローブを脱ぎ、腕の袖もまくる。
シャルロッテさんの巨乳が……などという俗な気持ちを抱いている場合ではない。
「……いや、皆じゃんけんに本気出し過ぎだから」
「私の未来がかかってるんだから」
「俺だってリーダーっていうなんかかっけえ肩書の為に、命張ってんだよ!」
「俺も、仕切りたがりの血が騒いでんだよ!こんなとこで負けられっかあ!」
「後半二人の理由がひどかったけど、まあいいや。早く終わらせるよ。はい、じゃんけん……」
アレクの合図と一緒に、一斉に手を振り上げる。
「ぽん!」
俺が出したのはチョキだ。
恐る恐る他の手を確認するとシャルロッテさんはパー、そしてヘンリ君は…パー!!
「しゃああああ!!」
「…終わった、私の学校生活…」「ぐああああ、かっけえ肩書があ!」
「ふっふっふ、天は我を選んだんだよ」
俺がチョキの手を掲げながら負けた二人に対して勝利をアピールする。
こういう所が皆からの信頼を得ていない所以なのだが、やらずにはいられない。
そんな俺に構うことなく、アレクは淡々と紙に記入をしていくが、そこに教室を回っていたリゼ先生が通りかかる。
「じゃあ、リーダーはシエル君でいいね。……あ、リゼ先生」
「あなた達の班は決まったのね。えーと、……リーダー、シエル?…………まあ頑張って」
「俺もしかして深刻なレベルで信頼されてない!?そんな不安ですか!?」
「……それより、あなた達4人班にするつもり?」
「なんか俺の質問はぐらかされた気がするけど……まあ一応4人のつもりですよ」
するとリゼ先生は考える仕草を見せてから、教室を見渡す。
「あなた達の班、やっぱり戦力だけ見ると結構安心できるのよ。だからあと一人くらい面倒を見て欲しいというか」
「あぁ、確かにヘンリ君とシャルロッテさんの二人がいれば、どんな弱い子が班にいても何とかなりそうですしね。そういう心配な子を預かるっていう意味なら、この班結構安心できますよね」
「そうね。だから無理に、とは言わないけど、一人で困っている子とかがいたら班に入れてあげて欲しいの」
「了解しました」
俺はリゼ先生に敬礼しながら見送ると、そのまま振り返ってアレク達の方へ向かう。
「で、皆はどう思った?」
「俺は全然構わんぞ。賑やかになっていいんじゃないか」
「私も、別にこれ以上状況が悪くなる事はないだろうし……」
「僕も、仲間が増えたらその分安心もできるだろうから」
皆新しいメンバーが加わるのに前向き、か。
確かに俺自身もヘンリ君とシャルロッテさんという、チートレベルの戦力を俺と覚醒前のアレクで独り占めするのも、よくないとは思ってたので、この話は全く悪いと思ってない。
班員の名前の書かれた紙を手に取り、見つめる。
このメンバーにプラスして、あとできれば欲しいのは……
「……あ、シエル君、後ろ」
「ん?」
アレクに指を指されて急いで振り返ると、そこには俺の制服をちょこっとだけつまんで顔を赤くする、黒髪の女子が立っていた。
目を合わせようとしても、顔を伏せていて、全然合わせてもらえない。
「……あの、さっきの先生とのお話聞いてて、その、あの……」
「……班に入りたい?」
俺が助け船を出すと、ガンガン首を縦に振って、それを肯定する。
(この人コミュ症タイプの人だ!)
そうと分かれば俺は息を整えて、怖がらせないように笑顔でその女子に向き直る。
「こっちとしてもうちの班に入ってくれるならすごい嬉しいよ」
「よ、よかったです……。私も、憧れの人と一緒に班になれるなんて……」
「憧れ?あぁ、ヘンリ君かな?学年一位の実力者だし、カッコいいしね」
「いえ、違うんです………その、私、シャルロッテさんと同じ学校だったので……」
その女子が震える手でシャルロッテさんの方を示すと、俺達男三人は一斉にシャルロッテさんの方へ顔を向ける。
「………え、私?」
新しいキャラクターはいつも波乱を持ってくる。
そんな物語の基本をその時忘れていた事に気付いた。




