第16話 パーティーの結成は追放イベントの始まり
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…いつか、たぶん、きっと、もしかしたら。。
4月もそろそろ終わりに入ろうか、という頃だった。
「あと10メートルだよ、シエル君!」
「…っく、10メートルが遠いっ…けど、どうじゃあ!」
俺は扉を開いて倒れるように教室へなだれ込む。
隣で周りの人を整理していたアレクは懐中時計をちらりと覗く。
「…うん、ジャスト15分!普通に来た場合と比べたら10分ロスだね」
「使えるかぁ!こんな欠陥魔法!浮遊しながら、ちょっとゆっくり移動しようとしてもコントロール難し過ぎるんだよ」
俺は制服のごみを払いながら立ち上がる。
学園付属の寮から教室まで、普通に歩いてくれば約5分ほどで済むというのに、全部浮遊魔法で来ようとしたら15分もかかってしまった。
正直急アクセルと急ブレーキに関してはお手の物なのだが、ちょうどいいスピードを保つのが無理なのだ。
急アクセルと急ブレーキだけでは体の負担もでかいしたまにミスると損害が大きいため、早く身に着けたいのだが…
「朝から騒がしいわね」
「…あぁ、おはよう、シャルロッテさん。……あ、そうだ、シャルロッテさん魔法のコントロールについて…」
「私に聞いてどうするのよ」
「……………」
そうだった、この人魔力の量と威力は一級品だが、毎回とんでもない量の魔力をぶつけるだけで勝てるから、コントロールを諦めたという逸話がある人だった。
この前の実技演習でシャルロッテさんと組んだアレクの惨状を見れば、シャルロッテさんはもはや、コントロールするっていうつもりがないんだ。
そこまで他の部分が突出していれば諦めても何とかなるのだろうが、俺の場合はそうはいかない。
「……皆、席につきなさい」
「……っしゃっ、セーフ!え、セーフですよね?」
「……大分ギリギリだけど、セーフでいいわよ」
「よかったぁ!あ、トイレ行ってきていいですか?」
「…………」
俺以上に慌ただしく入ってきたのは、ヘンリ君だ。
毎回遅刻の常習犯なのだが、今回はちゃんと来れたようだ、えらいぞ、ヘンリ君。
リゼ先生がいつものように連絡事項を説明していると、トイレからヘンリ君も戻ってきたようで、それを見たリゼ先生は書類をまとめて皆へ配る。
シャルロッテさんが素っ気なく配られた書類を俺の方へ回すと、俺もそれに倣って後ろへ紙を回す。
その紙には『ダンジョン演習』と書かれていた。
(ついにか!)
来た!というより、来てしまった、というのが本音だろう。
なぜならダンジョン、それこそが原作ストーリーの基礎なのだから。
「5月の頭からはダンジョン演習が始まります。説明事項に関しては配った紙と、あとで後ろの黒板に張り出すのでそれを参照して。今からやるのは、班決めです」
リゼ先生が言葉を切ると、クラス全体がざわざわと、ざわめき出す。
「皆さんは全員で26人いるので、4人組を4つ、5人組を2つ作ってください。あくまでダンジョン演習の為の班なので、話し合って、仲良くなくても、数を合わせて班に入れてあげてください。それではあとは好きに決めてください」
リゼ先生が切り上げて教卓の椅子に座り込むと、途端に教室の喧噪が大きくなった。
「ヘンリ君、私と一緒に組まない?」
「ヘンリ、俺はどう?」
「俺も俺も!」
後ろを振り返ると、ヘンリ君の周りには人だかりができて、その中心のヘンリ君は困ったような笑みを浮かべていた。
「……ヘンリ君は人気者だなぁ」
「そりゃそうでしょ。成績とか考えたら、誰だって学年1位と組みたいと思うわ」
「ヘンリ君は選り取り見取りか、羨ましい」
俺とシャルロッテさんはその輪の中には参加せず、いまだ座りながらクラスの様子を眺めていた。
この班決めは今後のダンジョン探索におけるパーティー結成に少なからず影響する大事なイベントだ。
(……よし!)
そして、俺は覚悟を決める。
「シャルロッテさん、俺と組まない?」
「嫌よ、なんでよりによってあなたと組まなきゃいけないの?絶対厄介ごとに巻き込まれるわ」
「どんなイメージだよ…」
とは言葉で言いながらも4月までの俺の言動を振り返ってみれば、あまり言い返すこともできないのでどんどん声は小さくなっていった。
しかし俺には、伝家の宝刀がある。
さっき腹は決めた。あとは勇気を出すだけだ。
俺は息を吸って、それを口に出した。
「……でも、シャルロッテさん、ボッチでしょ?」
「……」
「あ、黙ちゃった」
「………ええ、そうよ!上級生から告白とか受けてるくせに、クラスでは硬派ぶって冷たい態度とってたら女子からも見離された哀れな女子とは私の事よ!何か文句ある?!」
「…何も、そこまで言えなんて言ってないから」
シャルロッテさんは立ち上がって、俺に必死に言い返すが、聞いているだけでも悲しくなるから一旦落ち着くように、シャルロッテさんをなだめる。
「……いいわよ、あんたの班に入ってやるわよ。どうせボッチよ、私なんて」
「ちょ、卑屈にならないでよ、シャルロッテさん。ほら、アレクだってシャルロッテさんの魅力につられてこっちまで来てくれたぞ!」
そう言って手で、こちらに駆けよって来ていたアレクを指さす。
「いや、僕はシエル君と組もうかなって……」
「ほら、アレクもシャルロッテさんと組みたいってさ!な!な!なぁ!」
「は、はい、僕アレクはシャルロッテさんと組みたくて、来ました!」
「……余計悲しくなったわ」
「アレクてめえ!!」
「あれ、僕また何かやっちゃいました?」
「はあ……まあこっちもまだ人集まってないから、組む分にはいいけど」
さながらなろう主人公のように頭を手でかくアレクは、周りを眺めながら俺とシャルロッテさんの前に立つ。
「皆も大分決まって来たみたいだね」
「あ、ジャック君もヘンリ君にアプローチしてんじゃん」
「でも、断られたみたいだね。いつもの取り巻きの人と相談してる」
そういえば原作『僕最強』の世界のアレクとヘンリ君のパーティーの中には、性格の悪い美女が二人いたはずだ。
クラスの不良的な立ち位置のジャック君とも仲良く、パーティーでは外面だけは美女の二人から愛されていたヘンリ君はクラスの中で順調にヘイトを溜めていったわけなのだが、今回はどうなるんだ?
アレクは既にこっちの班に入ってしまっている。
それにアレクのいじめにがっつり加担していた性格の悪い二人の美女は……
「ヘンリ君、私と演習いかない?」
「私、ヘンリ君の強い所尊敬してて…」
いたあああ!
がっつりヘンリ君にアプローチ掛けてるよ、あの子達!
原作では紹介があっさりしてたけど、スポーツ女子系のショートカットの女と文学少女系の大人しそうなポニーテール女子という二人組は、原作のあの二人とまんま同じ特徴だ。
そう、表はいい子のふりをしているが、裏の所業を知っている俺からしてみれば、ヘンリ君にアプローチしてるだけでも恐怖しかない。
「悪いけど、今回は遠慮しとく。また今度な」
「…そう、じゃあまた誘うね!」「うぅ、分かりました」
断られてるぅ!
なんだこの展開、まさか原作が変わっているのか?
でもリゼ先生は今回だけの班だ、って言ってたし、まだ分からない部分ではあるけど…という事はヘンリ君は誰と組むつもりなんだ?
するとヘンリ君はこっちを見て、立ち上がってるアレクを指さす。
「そこのミスター平均点!一緒に組もうぜ!」
「あだ名がひどいっ!?確かにこの前のテストで全教科平均点ぴったりっていう、僕自身目を疑う点数取っちゃったけど!…でも僕、もう一緒に組んでる人がいるんだけど……」
「ん?シエルとシャルロッテさんじゃん!全然いいぞ!」
「……はあ」
シャルロッテさんの盛大なため息と一緒に、俺達の班が決まった。
なかば期待していた班ではあるのだが、原作主人公アレクに原作ヒロインのシャルロッテさん、そして極めつけにざまあ要員ヘンリ君……この班一体どうなるんだ?




