第0話 転生
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作者が喜びます!(/・ω・)/
俺はアパートの扉の鍵を閉め、手に水を濡らすだけで手洗いを済ませると、机にポツンと置かれた一冊の本に目を向ける。
「……はあ、やっぱりハズレだったよな、これ」
ラノベ『パーティーに追放された僕は、最強の能力に目覚め、レベル9999で世界を無双する。するとツンデレ美少女に懐かれ、人生逆転しました。今更パーティーに戻れと言われてももう遅い』、略して『僕最強』を手に取り、そのままベッドへダイブする。
今回このタイトルだけで胃がもたれそうな本を手に取ったのは、ひとえに巨乳の表紙に占める割合を一冊ずつ測った結果書店で最も割合が大きかったから、ただそれだけの馬鹿みたいな理由からである。
寝転がりながらスマホを立ち上げ、ネットにおけるこの本の評価を確認する。
『読んだだけ時間の無駄。まず主人公がうざ過ぎて読む気にもならん』
『ヒロインがチョロイン過ぎて笑った。ストーリーに捻りがなさすぎる』
『買った1時間後にはゴミ箱に入れてたw』
「…ひどい言われようだな、しかし…」
ネットの評価は全てぼろクソで、クソラノベとしての地位を盤石にしている事が分かった。
確かに昨日この本を読み終えた時点での俺の感想も、これと似たようなものになってしまうだろう。
挙げればきりがないほどに作品の粗は出てくるのだが、まず挿絵のクオリティが低すぎる。
表紙の巨乳のクオリティに騙された読者諸兄を裏切るかのような、のっぺりとした、下手すりゃ中校生でも描けそうな造形の美少女?が登場したかと思えば、次の挿絵では同じ美少女?であるはずなのに顔の形から何から少しずつ違って違和感マシマシのキャラが出てきたりと、読者の期待をある意味裏切り続ける最高の一冊になっている。
「…まぁ分かるけど、そんな言ってやんなよ」
とはいえ俺はこの作品がそれほど嫌いではない。
ありきたりな設定に、ネット小説で嫌というほど見た展開、ただただうざいキャラクター達、と言った欠点は数多あるものの、良かった点がなかったわけではないのだ。
絶対無駄なほどに入れられた情景描写や、変なとこで独特がすぎるストーリー展開などは個人的にも気に入っていて、なかなか憎めないつくりになっている。
「こんなクソラノベにハマるようじゃ俺もおしまいかな」
自嘲するようにふっと笑うと、ラノベの1ページ目を開く。
俺ならこの世界観、このキャラクター達をどう描いただろうか。
もし俺がこの本の作者だったら、どのようなストーリーを作り上げていっただろうか。
作者はそんな風に苦悩しながら作り上げたこの一冊を、クソラノベと酷評され、低評価と共に蔑まれ、一体どんな気持ちなのだろうか。
「そんなのは知った事じゃない。…でも、俺だったら、かぁ…」
もし俺がこのラノベの作者だったら……。
もし俺がこのラノベのストーリーを作ったら………。
もし俺がこのストーリーの中に、行ったなら…………。
俺は眠けに勝てず、ゆっくり瞼を閉じると、仰向けで顔の上で広げていたラノベがするりと指から零れ落ちる。
そしてそのまま、本は俺の顔を覆うように落ちてきて……
「…いてっ!」
鼻の頭に本が当たったような痛みがしたような気がして、勢いよく跳ね起きる。
(やばい、明日までの課題あるのに、寝落ちしそうになってた。早く目を覚まさないと…)
と、そこまで考えて俺の頭はフリーズした。
目を開くと、ワンルームの薄汚い白の壁紙じゃない、木の壁と木の扉。
それに俺が家に帰った時は夜だったはずなのに、小鳥がピヨピヨと、朝日と共に音楽を奏でている。
「ここどこ!?」
これが物語の中の一人の俺が紡ぐ物語の、その始まりだった。