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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第3章 ざまあされる癖にただのいい男なお話
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第15.5話 幕間 じゃんけん戦争

幕間から始まる今日の更新!

ブクマ、評価、よろしくお願いします!


溜め息をつきながら私は、教室の扉に手をかける。

思い出すのは、先程リゼ先生と交わした会話だ。


『シャルロッテさんは真面目ね。分からない所があればすぐ私の所に聞きに来てくれて』

『そんな事ないですよ。まだまだですから』

『それに比べてシエル君は…今日も日直だったのに、全然学級日誌返しに来てなくて』

『あぁそれなら、さっきここに来る時ヘンリとかアレクとかとくっちゃべりながら、学級日誌書いてましたよ。すぐ来るんじゃないですか?』

『……悪いんだけど、帰りがけ、忘れないよう釘だけ刺しておいてくれないかしら。なんだか不安で』

『……その気持ち分かります。なら、一応声だけ掛けときます』


前回の時を思い出すと、よりによって放課後にだけはあいつらと関わりたくはなかったけれど、たった一言掛けるだけだ。


しかし、今回は前回のように、教室の外まで聞こえる声というものは一切ない。

あいつもとうとう真面目に日誌を書いているのだろうか。


そんな希望を2%ほど抱きながら教室の扉を開けると、アレク、シエル、ヘンリの三人は仏頂面を浮かべながら、一斉にこちらへ振り向いてきた。



「な、なによ」

「あぁなんだ、シャルロッテさんか。悪いが今、俺達は重大な危機に直面してしまったんだ」

「聞きたくないから。えーと、リゼ先生が…「というのも!」……だからリゼ先生が!「俺達はぁ!?」分かったわよ!聞けばいいんでしょ!?」


完全に私を逃すまいと、話を遮ってくるシエルに、私は渋々自分の席についた。

そして肘を机の上に置いて、三人の方へ体を向ける。


「…で?」

「最初にそれを見つけたのは…俺だった…」


するとヘンリは顔を伏せて、どこか悔しさを滲ませながら話を始めた。



「なに、この、仕方なしに犯罪に手をつけてしまった男の告白みたいな雰囲気」

「……ちょっとシャルロッテさん。茶化すのやめてくれないか」

「しばくわよ!?ボケてきたから突っ込んであげたんでしょうが!」


シエルがヘンリ君の肩を掴んで、大丈夫だぞ、と声を掛けるとヘンリは涙ながらに、俺は大丈夫、俺は大丈夫、と繰り返し答える。

私は一体何を見せられているのだ。


「そう、あれは…俺がシエルの学級日誌に落書きでもしてやろうと、筆箱を探していた時だった。何を思ったのか覚えていない。……でも、ぱっと後ろを向いた時…それは俺を試すかのように!……佇んでいた。そう!あの!……燃えるごみのパンパンに詰まった、ごみ袋が!?」

「………は?」


そう言われて教室の後ろの方を見てみると、確かにゴミ袋の口が結ばれた、ごみ袋が一つ、そのまま置いてあった。

掃除係がゴミ袋をゴミ置きに持っていくのを忘れでもしたんだろう。


「……そして次は、僕が見つけたんだ。後ろを振り返ったまま固まったヘンリ君がおかしいな、って思って……ただ僕は気になっただけなんだ!気になって、見てみようと思っただけなんだああああ!」

「…うん、だから何なのよ」


「そして最後は……俺だ。さっきまで笑ってた二人が突然だんまり決め込んだものだから、学級日誌に大量のゴキブリの絵を描くという遊びをやめて、こいつら変な奴だなーって思って…「お前が言うな!!」…ぱっと振り返った時だ。俺の目にも、そいつは見えた」


「…………うん、だから何なのよ?持っていけばいいじゃない?あんた日直でもあるんだか…」

「俺はぁ!なんかめんどくさいから行きたくないんだぁ!!」

「俺もゴミ置き場まで行くの疲れるからやだぁ!!」

「僕も、帰ってゴロゴロしたいんだあ!!」


「あんたら揃いも揃って何アホな事大声で叫んでんのよ!?」


すると皆揃ってゴミ袋から目を逸らし、ただ前だけを仏頂面で眺める。

私は溜め息をついて、椅子に手をかけて立ち上がろうとする。


「お、シャルロッテさん、ゴミ出し行くのか?行かないのか?え?どうなんだ?」

「顔と声で圧かけるのやめなさいよ!なんで私が行かなきゃ…」

「だって、シャルロッテさんさっき言ったよね。『あんた日直でもあるんだし』って。そして俺の日直はさっき放課後になった時点で終わり、次の日直は…シャルロッテさん、あなただ!」

「……っく、地味に痛い所突くわね。でも、それで言ったら、私だってまだ明日の授業始まってないんだし、負担する責任はあんたと同じくらいのはずよ。それに最初に見つけた人が行くべきでしょ」

「…なら僕は二番目だからいいよね!」

「なっ!ほとんど同時だっただろうが!」


よくよく考えたら学級日誌をまだ先生に返していない時点で、シエルはまだ日直であるのだが、それに気が付くのは先の話だ。

醜い押し付け合いが続いていると、おもむろにアレクが背もたれに背中を預け、こちらに振り向きながら言う。


「ならさ……じゃんけんで、決めようよ」

「じゃ、じゃんけんだと!」「あの命を懸けた死のゲーム…」

「ただのじゃんけんでしょ?それでいいわよ」


私は早く終わらせて、この場をさっさと後にするために、すっと手を前に出すが、それをシエルが、遮るように手を前に出す。


「じゃあ、最初は…」

「待て待て待て待て!まだ誰も心の準備できてないだろうが!」

「だからただのじゃんけんでしょ?何を準備することが…」

「ちょ、ちょっと待ってシャルロッテさん。今からシエル君とヘンリ君のこれまで出してきた手の統計を思い出すから!」

「いるけど!確かによくフィクションの世界にデータめちゃくちゃ重視する奴いるけど!いいから早く…」

「待て!俺の地方では『無敵!』っていう手があったんだが…」

「地方のルールとかなしだから!オーソドックスの奴で!」


溜め息をつきながら手を振り上げる。

なぜこんな簡単な事でここまで躓くんだ、こいつら?

早く決めて…

すると、今度は私の手を止めるように、アレク君の手がすっと私の手を制す。



「…今度はなに?」


「……皆、僕パー、出すから…」



アレク君はそう言って滅茶苦茶悪い笑顔でパーを宣言する。

いや、結局どんだけ仕掛けても運ゲーでしょ、このゲーム…。


「な、なにい!パーを出すとあえて宣言することで、俺達にグーを出させる、と見せかけて実はほんとにパー?……っくそ、こんなのどうすりゃいいって言うんだよ!?……ふーん、了解了解」

「あんた心の声全部聞こえてたわよ…よくその状況で冷静装えるわね…」

「くそ、分かんねえ、アレクが何の手出すのか分かんねえよ!シエル、俺は何を出せばいいんだ!」

「だから結局運ゲーなんだから、適当に出せばいいの」

「『無敵!』でいいんじゃね」

「それがあったか」

「絶対なし!!」


皆の準備が整ったのを確認して、今度はシエルが手を振り上げる。


「それじゃあ、最初は…」

「ちょっと待って」


そして今度は私がシエルの振り上げた手を制する。

皆が固唾を飲んで私の方を見る。


「シャルロッテさん…?」


アレクの声を無視し、私は目の前で拳を握る。



「私、次…グー出すから」


「シャルロッテさんんんんん!?」

「な、なにぃ!?」

「グー!あえてアレクがパーを宣告したのに、わざわざ負ける手であるグーを宣言するなんて!?クソ、なんて高度な頭脳戦なんだ!アレクの裏を読んだのかその裏の裏を読んだのか…くそ、もうどうしよもねえよ、こんなの!?最悪だぁ!!……ふーん、いいじゃん」


「だから心の声全部聞こえてんのに、なんで冷静装おうとするのよ、あなた…。『最悪だぁ!!』ってがっつり聞こえてるから。私もやってみたくなっただけだから、そんな深く考えないでよ」


私が照れを隠すようにその場を沈め、もう一度左手を振り上げようとした時、今度はヘンリがその手を止める。



「皆、俺、次チョキ出すから」

「それは……分からないわ。早くじゃんけんするんだから、わざわざ止めるなよ……止めるなよ」

「可哀想でしょうが!今までの流れ汲んだんでしょ、ヘンリだって。それになんで今回だけ心の声と一致してんのよ。余計可哀想よ」


しゅん、とうなだれるヘンリをよそに、各々最後の準備を終える。


「勝っても負けても恨みっこなしだからな」

「分かってる」「…ええ」「…おう」


そしてシエルが腕を振り上げて、今度こそ本当に下ろした。


「最初はグー……じゃんけん、パー!!」

「僕パー」「私グー」「俺チョキ」

「何お前ら全員正直に手出してんだよ!」


シエルが全員に突っ込むと、その場には一瞬の沈黙が訪れる。

あいこ、ということは…


「……よし、もう一回、やるぞ」

「仕方ないわね」

「皆、僕、次はチョキ出すから」

「な、なにいいいいい!」

「またこの流れやるの!?」


結局、そんなこんな高度な頭脳戦を繰り広げていると、日誌を取り立てに来たリゼ先生に見つかり、私たちは全員大目玉を食らう事となった。


リゼ先生が来てからも、色々な悶着があったのだが、このお話のまとめとしての結論だけを言うのであれば、結論、リゼ先生は途轍もなくじゃんけんが弱かった。


おまけ


「っしゃあああああ!」

「ウェイウェイウェーイ!」

「あんたら何マジで先生をパシリにしてんのよ!!」

「いや、シャルロッテさんもノリノリだった気が…」

「……あなた達、次は覚えておきなさい…。絶対、負けないんだから!」


こうしていつもの放課後は終わっていく。


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