第10.5話 幕間 派閥戦争
気まぐれ筆任せ
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溜め息をつきながら私は、教室のドアに手をかける。
中から聞こえるのは、二人の男子生徒が何かを言い合っているような激しい口論だった。
「……何やってるのよ…」
「だ、か、ら……あ、シャルロッテさん、なんでいるの?」
「どうせ告白受けてたとかそんな事だよ。相変わらずモテてて羨ましい限りだ」
「違うわよ。今日は用事があったからリゼ先生の所に…で、あなた達は?」
私が教室の中に入ると、中には想像通りシエルとアレクの二人が、向かい合わせに座って何かを言い合っていた。
アレクはシエルとのやりとりを中断して私に質問するが、シエルは私の姿を一瞥するだけして、あくびをしながら背もたれに背中を預けだす。
全く失礼な限りだが、私もよくしている事なので、まぁいつもの事だと思って自分の席へ歩く。
「俺達は今、重要な討論を重ねてるんだよ」
「どうせくだらない事でしょう」
「くだらないとは、なんだ。くだらないとは。言ってやれ、アレク」
「いや、まあ、そうなんだけど…」
アレクが口ごもるのを聞きながら、私は自分の鞄を手に取って帰り支度を済ます。
「……ちなみによ。ちなみにどういう議題で討論していたというのかしら」
「朝はパン派か、ご飯派か」
「くっだらねっ!」
思わず口が汚くなるが、聞いて損した、という言葉がこれほど似合う場面はそうそうないだろう。
真面目な顔して何を言っているんだ、この隣の席の男は。
「…それでそこまで白熱した議論がよくできるわね。教室の外まで聞こえてたから」
「聞いてくれよ、シャルロッテさん、アレクの奴、朝はパンじゃないと朝って感じがしないって言うんだよ」
「いやいやいや、シャルロッテさんは分かるよね!ご飯なんて朝以外にも食べるじゃんね!」
「私を巻き込むのやめて!あとアレク、この男と関わってると、あなたの精神も汚れていくわよ」
「私はただ国を思う一国民として、若者にとって重大な議題を議論しているのだ、同志シャルロッテ君!」
「同志っ!?あなた口調がもうただのおかしい人になっちゃってるのよ!?アレク、逃げましょう!」
「いや、僕の場合寮に逃げても隣の部屋だから……」
く、アレクを救うのは無理か。
せめて私だけでもこの場から…
「ちなみに、シャルロッテさんはどっち派?」
「…………そんなのパン派に決まってるじゃない」
「ほらああ!」
「く、敵対勢力がもう一人いたのか!」
な、何を答えているの、私。
早く帰って自習を…
「ご飯なんて、ご飯炊いて、皿用意して、箸も必要でしょ。それに比べてパンのお手軽さは…」
「はあぁあぁ!パンなんてスープに浸さなきゃ食えたもんじゃない欠陥食べ物だろうが!」
「いつの時代の話してるの!!?」
「それにパンは手でお手軽に食べれるって言うが、確かに食えるさ、食えるけど……こんなの猿でも食えるんじゃ!俺たち人間なら、人類の文明文化の結晶、箸や食器を使えい!お前ら猿か!」
「シエル君、すごい勢いでパン派を敵に回してるけど、大丈夫!?明日パン派に殺されない?」
「…ご飯だって、炊きあがり以外じゃカピカピの欠陥食べ物じゃない!」
「え、シャルロッテさん!?」
「ご飯なんて炊いちゃったら、短い短い言われてるパン以上に消費期限短いわ!!」
「そこは冷凍保存すれば無限だから!?」
「なんか冷凍するの、めんどくさいのよ!」
「知るかあ!?」
議論は紛糾に紛糾を重ね、結局居残っていたリゼ先生に揃って叱られるという結果で幕を閉じた。
ちなみにリゼ先生は、ご飯派だった。




