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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第13章 物語の主人公が抱く嫌な予感は当たるもの
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第115話 シエルとアレクとヘンリ

更新再開します!

忙しくて投稿できてなかったんですけど、今日からまた頻度はゆっくりでも投稿していこうと思います!

よろしくお願いします!!


******


8月7日 朝 7:15



「随分汚らしい朝チュンが聞こえるなぁ」

「誰がドラマでムーディな夜を過ごした後の朝チュン担当のスズメだ。悪いけど今日はそういうのに付き合ってる暇はないんだ、少し頼み事がある」

「頼み事?」

「グリムさんから目を離さないでほしい」



俺は寝起きですぐにリアラさんからシャル失踪の知らせを聞くと、アレクの部屋に寄る前にヘンリ君の部屋を訪ねていた。

急いでいたために俺が浮遊魔法でヘンリ君の部屋の窓を部屋の外からガンガン叩くものだから、カーテンを開けるヘンリ君は眠け眼を擦り少し不機嫌そうな顔であったが、俺の頼みごとを聞くなり顔をニヤリとさせていく。


「ほぉ、それは何か事件の香りがするなぁ。シャルロッテさんか?」

「その通り。だから俺はシャルを探しに行かなきゃいけない」

「だけど一番の危険人物を放っておくわけにもいかん、って事だな。この前狙われたリアラさんは無論、アレクでもいざという時には力不足感がいがめない。だからこそ副学長の相手をできるのは俺しかいないって判断だな」

「…全くその通りだ、ヘンリ君とは思えないくらい勘が冴えわたってるね」

「ふっふっふ、俺を誰を誰だと思ってるよ…zzzz」

「違う!こいつ目を開けてるけど全部寝言だ!」


寝ている間だけ覚醒するタイプって実在するんだ…と呆れている暇もないので俺は部屋の中へ入ってから何度もペチペチしたり何とかしてヘンリ君を叩き起こす。


そしてもう一度ヘンリ君が自分で言っていた事と同じような説明をすると、ヘンリ君は腕を組んで頷く。

ちなみにいくらペチペチしても起きなかったのでその顔中には洗濯ばさみが無数に取り付けられ、頭からは滝に打たれたのかと思うくらいの水がしたたり落ちている。



「なるほどね、そういう事なら俺に任せんしゃい!」

「…一抹の不安は残るけど、頼めるのはヘンリ君しかいないんだ。こんな大変な事突然頼んじゃって、悪いね」

「気にすんなよ。それよりもシャルロッテさんの事は頼むぞ」

「あぁ」



それだけ言って俺は再びヘンリ君の部屋の窓枠に足をかけて、浮遊魔法の準備をする。

言葉は少ないけれど、実際の所そこまでヘンリ君に関して心配はしていない。

なんと言ってもうちのチームで一番頼れる男はヘンリ君なのだ、誰よりも強くて機転がきく、だからこそグリムさんを頼めるのはヘンリ君しかいないと思った。


俺は振り向いて、洗濯ばさみを一つずつ取り外しタオルで頭を拭っているヘンリ君へ言う。



「長い間こっちとは別行動になるかもしれないし、意外とすぐに再会できるかもしれない。いつになるかは分からない、でも確実にグリムさんは動くと思う。だから大事になるのは、こちらとヘンリ君が再会する瞬間だ。その瞬間がきっと、これからの俺達の運命を分けるから」

「分かってるよ、その瞬間までの根気と、その一瞬に対する集中力って話だろ?」

「ふふ、やっぱり何も心配はいらなかったか」

「あったり前だ。そして俺も、お前やアレク、リアラさん、そしてシャルロッテさんの事も、なんも心配なんてしちゃいないんだ」



ニッコリと笑みを浮かべながら立ち上がるヘンリ君の姿を見て俺は思わず目を見開く。

そしてヘンリ君はそんな俺を見てぐっと右手を突き出す。



「グッドラック!こっちは俺に任せろ!」




******




8月7日 18:02 (アレク視点)



「あれ、食い物用意してくれないんすか?」

「いいから黙ってろクソガキ、どうやら先客がいるようだからな」

「先客?」



玄関ですぐに腰を下ろし何かを確認したグリムさんがヘンリ君に語りかける様子を眺めながら、僕は何度もシミュレーションを繰り返していた。

ヘンリ君とグリムさんの二人が共に行動しているという事は朝にシエル君から話を聞いた時には分かっていた。

しかしそんな事実すら忘れるほどに絶望的なこの状況において、朝の短い時間のうちにヘンリ君をグリムさんにつけるという判断を下した友人には本当に頭が上がらない。


ヘンリ君がいる、たったそれだけの事実で真っ暗闇だった視界に一縷の光が差し込んだのだ。


(希望は繋がった、でも成功する確率は限りなく低い)


僕は扉の隙間から見える二人の姿を追いながら、ごくりと唾を飲み込む。


この状況において鍵になるのはやはり浮遊魔法という飛び道具を持つシエル君という存在だ。

彼と合流し逃げに徹する事ができれば、相手が誰であれこの館からの脱出も容易いだろう。


その為に突破しなければいけない障壁が、グリムさん、そしてシエル君とニュートさんを襲った犯人だ。

しかしシエル君との合流を果たす上で犯人達よりも何より僕とシエル君の中間地点にいるグリムさんという最大の敵を退けるという事は絶対条件だ。


グリムさんが僕達という先客の存在に気付いている今、残された時間もない。


(…ヘンリ君を信じろ、覚悟を決めるんだ。勝負は一瞬だ、僕とヘンリ君で、グリムさんに勝つ!)


絶対的な力の差のあるグリムさんを抑えるためには奇襲しかない、そしてそれができる位置にヘンリ君がいる。

僕とヘンリ君など簡単にあしらってしまうであろうグリムさんを制圧するには、一瞬のタイミングが勝負なのだ。


恐らく犯人と対峙しているのであろうシエル君を呼び出しながら、グリムさんの意表を突く為の作戦が必要だ。

今からヘンリ君へ隠れて合図を出すなんて事もできない。

合図なんかを出そうとすれば必ず僕の姿を捉えられ、警戒されてしまう。


ドクンドクン、と心臓の鼓動がうるさい。

だけど僕はちらりと上を見上げてから、ぎゅっと力を入れて勢いよく扉を開くのであった。




******




8月7日 18:02 (シエル視点)



逃げに徹する事を決めた俺は目の前のアルベルトさんを見据えながら、じりじりと後退していく。


(とはいえせっかくここまで来たんだ、簡単には引き下がりたくない)


早くアレク達に合流してここを逃げた方がいいのは分かってる、だけどすぐそこにシャルがいると分かっていて何もなしに帰りたくないという気持ちも正直な気持ちだ。

俺は頬を伝う汗を感じながら、アルベルトさんへ語りかけた。


「…勝手にここまで来てしまったのは謝ります、だけど俺達は消えたシャルロッテの事が心配で。ただ事情を知りたいだけなんです」

「それだけではあるまい。君らがここまでやって来た事には意図がある筈だ。別の目的が」


ひたすらに冷たい目で答えるアルベルトさんは全てが見透かされているようで、先ほどから冷や汗が止まらない。

この人はニュートさんの事も知っている。


「…どうしても、シャルロッテに会わせてもらう事はできないという事ですか」

「その通りだ。それが奴との契約だからな」

「契約?」


俺は首を傾げるが、アルベルトさんはゆっくりと左手を俺の方へ向けると、その腕から炎が溢れてくる。

いわゆる臨戦体制だ。


心の中でビビりまくりながらも、俺はまだ何かを聞き出す事ができる筈だと声をあげようとするが、先にアルベルトさんがポツリと呟く。


「…お前は分かっておらぬのだ、あの女の本当の恐ろしさを。こうなる事は分かっていただろうに」

「何を言って…」


バンッ。

しかし俺が疑問を投げかけようとした時、背後の階段の方で微かな物音が聞こえた。

本当に小さな、階下で扉を勢いよく開けた音だろうか。


俺は一瞬後ろを振り向こうとしてやめた。

ここでアルベルトさんから目を離すのはヤバイ。


だが、俺はこの判断をすぐに覆す事となる。





「副学長!!!」


「……つ!?」





突然館全体に響いたその声は間違いなくアレクのもの。

そして聞いた事がないほどに張り上げられたそのアレクの大声が意味するものは……


(副学長…グリムさんがここに来たのか!)



「浮遊魔法!後ろ!」

「獄炎龍」



俺は急いで後ろ方向へ浮遊魔法を発動し、壁に激突しながら階段を降りていく。


しかし少し遅れてやって来る炎の龍が猛スピードで俺を追いかけてくる。


この瞬間になってはじめて、俺はニュートさんの描いた作戦がどうしようもなく失敗したのだという事に気づいたのである。



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