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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第13章 物語の主人公が抱く嫌な予感は当たるもの
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第112話 ラスボスの到着

ちょっと前の幕間終わりから章を分ける事にしました!

やっぱりそっちの方が見やすいかなと思って

GWが終わるまでにできるだけ続き書きます!( ;∀;)


コンコンコン、と扉を叩く音が響き渡る。

じっと待っていると、あまり時間を置かずにガチャリと扉が開く。


「中央議会議員、ニュートだ。急用につきアポもなく伺って悪いな」

「ニュート様ですね!ただ、こちらもグリムが留守にしておりまして、十分な歓迎が…」

「それは残念だな、しかし代用の者がいたはずだろ?前に来た時に会った事がある」

「彼女につきましても現在留守にしておりまして、すぐに帰ってくるとは思うのですが…」

「それなら丁度いい、どれだけ待つことになっても構わないからひとまず中に入れてもらってもいいか?そちらも知っての通り、こちらも厄介な奴らに目をつけられていてね、大層なもてなしなどは要らないから」

「そうですね、こちらへお入りください。他の客人の方々も」


事務所の中から出てきたのは思いの外若い青年で、ニュートの顔を見てパッと表情を明るくする。

襟付きのシャツとグレーのベストを身に纏ったただの使用人…にしては少しラフな着こなしで対応をする青年であったが、およそアレクと同年代、もしくは少し年上ほどと当てをつけてから、ニュートは余計な焦りを見せてはいけないと考えそこで思考を打ち切った。


そして青年が扉を大きく開くのを見て、ニュートは背後のアレクとリゼに振り返り手で合図をする。

何も言葉を交わす事無くニュートの背中をついて行く二人はキョロキョロと辺りを警戒しながら事務所に足を踏み入れる。


「君は?」

「私はこの建物の管理人のルイでございます。ニュート様の噂はかねがね聞いておりますゆえ」

「そうか、悪い噂じゃなければいいけどな」

「いい噂が2割、よろしくない噂が8割ほどですかね」

「それは美味しそうなお蕎麦ができそうだな」

「ははっ」


決して余裕があるわけではないはずなのに余裕の姿勢を崩す事無く続けるニュートの姿を見て政治家としての凄みを感じるアレクであったが、異様な雰囲気を感じ取って声をあげる。


「あの、これだけ広い建物なのに人の気配が全然しないのですが…」

「住み込みで働いているのが今は私だけなものでして、他のものは皆帰ってしまったのです」

「へぇ…」


ニコリと笑顔で答えるルイの回答を聞いたニュートは、ルイの背後で悟られないようにニヤリと笑みを浮かべる。

その様子を見てリゼは呆れるように眉を顰めるが、無言でニュートの後ろをついて行く。


暫く歩いていると一つの部屋の前でルイは足を止める。


「それでは応接間で待機していてもらえますでしょうか、せめてものお茶とお菓子は用意させてもらいます」

「悪いな、3人で駄弁りながら待ってるから、急ぐ必要はないよ」

「ありがとうございます、ただ、あまりお待たせする事がないよう早急に準備させていただきます」


ルイは3人を部屋の中に案内すると深々と礼をしてその場を後にする。



扉が完全に閉まると同時に、ニュートは腰に手を置いて天を見上げる。


「……さて、行こうか!」

「行くって、どこにですか?フローラを待つって…」

「シエル君はもうこの建物の中に居て行動を開始しているだろう。こちらもいつでも動けるように、こんな部屋に閉じ籠って馬鹿正直に待ってる余裕なんてないよ。それにこんなチャンスも中々ない、少なくともグリムの書斎の部屋に鍵がかかっているか、本当に誰もいないのか、これは確認しておきたい」


ニュートは顎に手を置いて、前に訪れたグリムの書斎までのルートを考える。


グリムやフローラが居ないうちにシャルロッテの発見と裏金関連書類を取り返す事までできたらベスト、しかしそこまで都合がよく事が進むわけもない。

シエルとニュート、常にお互いがお互いの失敗をケアできるような態勢にしておかなくてはいけないのだ。

その為には応接間の部屋の中に閉じ籠っているだけではいけない、いつでも非常時に動けるようになるべくこの建物を知っておきたい。


しかしそこでアレクが手を挙げる。


「…でも、どうも僕はきな臭い匂いがします。ここまででも、都合よく事が進み過ぎじゃないでしょうか。シャルロッテさんの捜索という建前すら必要ないくらいスムーズに中に案内されるなんて…もしもグリムさんがニュートさんの言うような事件の渦中にいるならばこんな事…」

「そうだね、僕もそう思う。なんらかの罠が仕掛けてある可能性は十分にあるだろう」

「それなら!もっと対策を考えて…」

「だからこそ、今動いておくんだよ。どんな絶体絶命な状況に追い詰められたとしても、グリムとフローラの二人が居なければ僕の空間魔法で何とかできる。きっとあの二人は僕の空間魔法をきっと打ち破って来るからね。だからあの二人が居ないというのが確かな今しかないんだ」


笑顔で言い切るニュートに、アレクは何とか言葉を見つけようと探すが出てこない。

大抵の事は空間魔法で切り抜ける事ができると豪語するニュートであったが、そこには強がりなど一切ない確かな自信があった。


ただし、決して無敵の魔法ではない事もニュートは理解している。

空間魔法ほど純粋な魔力量が魔法としての強さに直結する魔法はない。

それだけではない、この魔法には存外弱点も多いのだ。

だからこそ、ニュートと共にこの魔法の事を学んだグリムは、特に空間魔法の天敵の一人だと言える。


ニュートはふうっと息を吐いてからアレクとリゼを見渡して言う。


「ちょっと様子を見てくるだけさ、すぐに帰って来る。だからアレク君はここで待っていてくれ、あとお茶菓子が早くやってきたらの誤魔化しも頼む。リゼは一緒に来てくれ」

「…私は、相手がグリムさんであろうと盗みには協力したくありません」

「あげると言ってないのに勝手に大事な書類を隠したのはあっちだろ?それにリゼにお願いしたい事は書類奪取の協力じゃない、シエル君への協力だ」

「どういうことですか?」


ニュートは人差し指を天井に向けて続ける。


「グリムの書斎は2階、そしてシエル君は4階から順に降りてくる。この時間できる限り隠密行動をしてほしくてシエル君を一人にしたけれど、リゼとしてもシエル君一人だけを別行動させ続けるのは不安だろ?だから、書類奪取の見通しがたったらすぐにシエル君と合流しシャルロッテ嬢捜索の手伝いと、帰り道の同伴をしてほしいんだ」

「先輩とアレク君を残して、私とシエル君が一緒に帰るという事ですか?」

「そう、人目の多い地上で行きの時のような移動手段は使えないから、帰り際にどうしてもシエル君を回収する事が難しいんだ。リゼはシエル君を連れて裏口から堂々と出てくれればいい、あの学長が君臨する学園の先生という身分を証明すればきっと憲兵も手出しはできまい」


リゼは顔を歪めてうーんと唸るが、ニュートは既に扉に手をかけていた。


「ほら、行こう。どうせ考えても正解なんて出てこないんだから、その場その場で何とかすればいい」

「……そういう先輩達やローラン先生の行き当たりばったりな所が、昔から嫌いでした。そのくせ、本当に何とかしちゃう所も」


リゼは溜め息をついてから握りしめていた拳の力を抜いて扉の方へ向かって行く。

その様子にふっと笑みをこぼすニュートは、ガチャリと扉を開いた。




******




ここに人通りの少ない道を早足で突き進む二人の男が居た。

一人は軽装で後ろを振り返ることなく前だけを向いて歩いていたが、その後ろを何とかついて行くもう一人の男は両手いっぱいに荷物を抱え、背中には使い込まれた木刀を縛り付けていた。


「ふ、副学長…ちょっと待って、歩くペースがもはや競歩レベルなんだけ…」

「文句を言ってる暇があるなら黙って歩けこのノロマ荷物持ち」

「別に荷物持ちはいいんすけど、どこに向かってるかだけ教えてもらえたら…」


すると前を歩く男は突然立ち止まり、後ろを振り返る。

そして前方に向かって指をさす。



「あそこだ、この街での俺の事務所。そして…どうやら間に合ったようだ」



その時、ゴーンゴーンゴーン、と鐘の音が街全体に響き渡る。

18時の到来を意味するその鐘の音は、しばらくして街の喧騒にかき消されるように次第に小さくなっていく。



8月7日 18時00分


いよいよグリムが自身の所有する事務所に到着したのであった。

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