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クソラノベの世界に転生した俺は原作を破壊する事にした  作者: 雪本 弥生
第13章 物語の主人公が抱く嫌な予感は当たるもの
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第111話 瞬間移動

111話!

111というゾロ目の数字にちょっとワクワクしてる自分がいます(´-ω-`)


「…それで、どうやって門の前まで向かうつもりですか?憲兵の人達も…」

「ここからは時間との勝負だ、フローラとグリムが居ないうちに中まで入っておきたいからね。だから一気に行く」


フローラさんに気付かれないように顔を出しながら作戦を相談する俺達であったが、グリムさんの事務所は小さな塀に囲まれ、その門を抜けた先に入り口があるという構造だ。

門の脇には憲兵が一人立っており、とても正面から突入する事はできそうにないのだが、ニュートさんには策があるらしい。


フローラさんが視界から見えなくなるまで待ってから、指をさしてニュートさんは説明する。


「アレク君とリゼは基本的に僕についてきてくれればいい。だからシエル君、君は僕が門の内まで連れて行くから、そこからは上の階から順番に部屋を当たって行ってほしい」

「浮遊魔法は便利ですけど、目立ちすぎるのがちょっと不安です」

「そう、だからスピードが大事なんだ。裏に回ると見えてくる4階部分の角部屋の前、あそこの窓は格子がないタイプの窓で前来た時にもあいていたからからきっと入れる。元々目をつけてたから、予め調べておいたんだ」

「それでも、もし開いていなかった場合は?」

「今は夏だぜ?普通あれだけの上の階に居て、厳重に鍵を閉めきって防犯なんて考えないだろ?」


ニュートさんは自信満々に言い切ってそれ以上何も言わない。

そんなニュートさんの様子に少し違和感を感じて眉を顰めていると、アレクが割り込んで質問する。


「でも、なんでフローラさんはこのタイミングで出てきたんでしょうか?ニュートさんの言う通りシャルロッテさんに誰かがついていないといけないと言うのなら…」

「話がついたんだろう。もう、傍に居る必要がなくなったんだ。深く考える必要はないと思うよ」


ニュートさんは簡潔に答えると、アレクは言葉に詰まる。

つまりニュートさんの考えでは、シャルはフローラさんと交渉をし何かしらの条件を飲んだ。

だから一時的かもしれないけれど、武力による制圧は必要なくなった。


(……しかし、なんだこの違和感は。ニュートさんはなんで急いでる?筋が通っているように思える理論も少しばかり強引にも思える。最初に会った時とは明らかに違う。どこで…)


俺はそこまで考えてからちらりとリゼ先生の方へ顔を向けると、リゼ先生はリアラさんを励ましながらニュートさんに問いかける。


「…それで、どのようにして門の中まで?」

「これだ、魔水晶。ま、見てれば分かるよ。皆で手を繋いでてもらえるか?」


俺、アレク、リゼ先生の三人は顔を見合わせて首を傾げるが言われたように手をつなぐ。

するとニュートさんは真っ先にリゼ先生の手をとって俺達を移動させる。


「ちょ、先輩…」

「あそこまで大体25メートルってところかな…ざっと2秒か」


ニュートさんは魔水晶のガラス玉を左手でニギニギしながら呟く。

その意図を理解したのか、リゼ先生はニュートさんへぎょっと目を向ける。



「まさか…!」

「覚悟はいいかい?できてなくても行くよ」



ニュートさんは左腕を振り上げると、思い切り魔水晶を投げ飛ばした。


その瞬間、手を繋いでいた俺達4人は一斉に屋根から姿を消した。




******




「あぁぁぁぁぁ!!ミスったぁ!!貴重な魔水晶だったから、地面に落ちる直前にキャッチしたかったのに!」

「頭ぐわんぐわんしてます…」

「門の中まで…やっぱり空間魔法って凄いんですね!」

「指から離れるその一瞬で私達を魔水晶の中に閉じ込めたんですか?相変わらず、無茶しますね」


地面に衝突しバラバラに砕けた魔水晶の前で膝から崩れ落ちるニュートさんと、魔水晶が割れたと同時に魔法空間から吐き出されて頭をさするアレク、そして呆れながらも感心するリゼ先生。


道を挟んだ向こうからたった2秒ほどでグリムさんの事務所の門の中まで、正面を経由することなく入り込む事ができた。

凄まじい、と表現するほかにないだろう。

この人は完全に空間魔法を使いこなしている。

学長先生と同じ、この先敵に回したらいけないと本能が叫んでいる。


とはいえ、今は素直に感心している暇もない。

俺達はそれぞれ立ち上がって、事務所の扉に視線を向ける。

しかし俺だけはこの扉をくぐり中に入る事はできない、すぐに事務所全体を見渡す。


「……裏口はどこに……」

「シエル君、ちょっと」


両膝に手を置いてキョロキョロと首を回していた俺の肩を掴んだニュートさんは、そのまま俺を引き寄せて顔を近くに寄せる。

突然の出来事にびっくりするが、ニュートさんは短く呟いた。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけは忘れるな」

「何がっ…!」

「それじゃ、ファイト!」



ニュートさんはカラっとした笑顔で言い切ると、モヤモヤとする俺の肩を押してポンと背中を叩く。


ニュートさんの背後でアレクとリゼ先生が不思議そうにこちらを眺めているのが分かる。

しかし時間がないのも確かだった。


俺はニュートさんに軽く頭を下げてから事務所の裏に回るべく、3人に背中を向けた。


何かが起こる、そんな嫌な予感を胸に抱きながら俺は歩き出した。




******




「凄い……」


屋根に残されたリアラは一人で小さく呟く。

じっと目を凝らして見ると、既に全員がグリムの事務所の扉の前にまで至っている。

まさしく瞬間移動だ。


元々あの4人については心配していなかったが、改めて空間魔法の凄さに憧れを感じずにはいられなかった。


しかしリアラは頭を振ってそんな思考を振り払う。


「ダメダメ…皆さん、頑張ってるんだから私も、シャルロッテさんの為に、私にできる事を…」


言い聞かせるように呟くリアラは一瞬目を瞑って、学園から居なくなってしまった少女の姿を思い出す。

くっきりと思い出すことができるあの綺麗で、美しくて、憧れで、そしてどこか寂しく儚げな……大切な友達の姿を。



「なるほど、こりゃ緊急事態だねー」

「……だ、だれですか!」



リアラがふと目を開くと、リアラのすぐ後ろに人の気配がする。

急いで後ろを振り返りながら火魔法の蝶を出現させるが、リアラの口が塞がれるだけでなく無理矢理体を引き寄せられて魔法は霧散してしまう。


一瞬にして姿の見えない敵によって完全に制圧れてしまったリアラは、一連の突然の出来事に頭が混乱しながらも敵の姿だけは確認しようと顔を振り向かせようとするが、ふっと力が抜けたようにリアラを取り押さえていた敵の力が緩む。


その隙に見る事ができたその顔を見て、リアラは大きく目を見開いた。


なぜなら薄茶色の髪の毛を揺らすその顔には、見覚えがあったから。

いや、()()()()()とでも言うべきだろうか。



「私は敵じゃないよ、()()の命令に従いあなたをこの場から逃がす。よろしくね」

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