第108.5話 幕間 魔貫光殺砲
しばらく更新できてなくてすいません!(。-人-。)
溜め息をつきながら私は、教室の扉に手をかける。
「はぁ、それで次のゲストは誰?ちゃちゃっと終わらせましょ」
「もしかしてテレビの二本撮り収録の二本目のノリで来てる!?だからさっきのヘンリ君の時にも言ってるけど、俺達は別にシャルの事呼んでないからね」
「台本は?いつも通り進行なら私に任せなさい」
「ねーよ!友達同士の会話に台本なんかあってたまるか!」
「あ、シャ、シャルロッテさん!」
適当な事を言って教室に入ってきた私も悪いが、午前中にいたヘンリはいなくなっており、ちゃんと新しいゲストとしてリアラさんを用意しているシエルもシエルだ。
なぜこの男は夏休みだというのに人を入れ替わりにして教室にたむろをして…いや、これ以上は私に特大ブーメランになってしまいそうだからやめておこう。
私は適当な椅子に腰かけ手を叩く。
「さ!という訳で、本日のゲストはリアラさんという訳だけど最近何か抱腹絶倒大爆笑エピソードとかある?」
「だからMCぶるなって!?そしてゲストへの振りがえげつない!」
「え、えと、私この間公園に散歩に行ったら、ハダカデバネズミがマングースと決闘をしていまして…」
「答えなくていいよ!?そしてその話の結末がまぁまぁ気になる!」
制止するシエルであったが、結局私とシエルの二人は身を乗り出すようにリアラさんの話に耳を傾けハダカデバネズミとマングースの決闘の結末を知るのであった。
まさか負けたと思っていたハダカデバネズミに仲間がいて、ずっとマングースの隙を伺っていたなんて!
「…とかなんとかあって、でもま、結局マングースが圧勝していたんです、けどね」
「へぇ!……いや、普通にちょっと面白い話するのやめてもらえる?ここは滑る話をしたあなたにツッコム私、でウケを取りに行きたかったんだから」
「リアラさん、一回このMCの頭をペチペチしても俺が許すよ」
白い目で私の事を見つめるシエルに、私は何も言い返すことができないのでとりあえず無視してこの場をやり過ごす。
ひとまずおふざけはこのくらいにして、私は本題に入る事にした。
「…それで、今は何をしていたのよ」
「リアラさんもヘンリ君と同じだよ。とりあえず自由研究のテーマだけ決めようって話になってたんだ」
「わ、私は”ゑ”を描きたいなって思ってたんです!」
「ゑ?」
「あ、ま、間違えました!”絵”です!」
「そんな間違え方する!?」
とはいえ詳しく話を聞いていくと、どうやら自由研究の一つとして工作も認められており、工作の一つとして絵画も認められているらしい。
確かにリアラさんの美的センスを考えれば、ピッタリの選択かもしれない。
するとリアラさんは身を乗り出して提案する。
「わ、私、絵の題材に迷ってて、シエルさんにも相談をしていたんですけど、どうせならお二人を描いてもいいですか!」
「つまり、私とシエルの二人を絵にするって事?」
「へぇ!リアラさんに描いてもらえるなんて光栄だな。描いてもらおうぜ?」
「……まぁ、あなたがいいならいいけれど」
思わずそっぽを向いてツンデレみたいな事を言ってしまったが、確かにリアラさんに絵を描いてもらえるのは素直に嬉しい。
シエルと二人の絵、というのは少し照れ臭い気もするが、シエル自身が乗り気だしあまりこちらだけが気にするのもなんか癪だ。
リアラさんはノートを片手に教室をゆっくり見渡していく。
「ノートにささっと下書きの方を、描いてからキャンバスに描こうとは、思ってるんですけど…一回こっち来てもらっていいですか?」
「ほいよ。でもこういう時、ポーズとかどんなポーズとればいいか分からなくてちょっと困るよなぁ」
「確かに、ピーズサインも少しおかしい気はするし、自然体が一番なんでしょうけどいざ自然体を意識したらちょっと分からなくなる事はあるわ」
「と、特にこだわりとかがなければ、私が指示しましょうか」
「お、ありがとう!」
教室の真ん中あたりで机をどかし椅子を二つ用意して隣同士に座った私達であったが、シエルの悩みに反応してリアラさんが提案してくれたのでシエルは少しほっとしたように答えた。
リアラさんは鉛筆の先で距離感を確かめながらちょうどいい席に座ると、こちらに声をかける。
「そ、それじゃあ、描き始めますね!まずはシャルロッテさん、体の前で右手の手首をつかんでもらっていいですか」
「分かったわ」
言われた通りに体の前で右手の手首を掴んでみたが、確かに絵画のポーズっぽい気がする。
「あ、シャルロッテさんはそのまま少しだけ微笑んでもらっていいですか?」
「こ、こう?」
「か、完璧です!それじゃあ、次にシエルさん、なんですけど、両手をほっぺたに持っていってもらえますか?」
「え?こう?」
シエルは突然のリアラさんの要求に困惑するが、物凄い勢いで鉛筆を動かすリアラさんの勢いに気おされるように、言われた通り両手を自らのほっぺたにくっつける。
「は、はい!それじゃあ、シエルさんだけ少し立ってもらって、くねくねしてもらっていいですか?」
「くねくね!?絵を描いてんだよね!?」
「は、早く!できれば白目で悲壮感が漂うように口をぽかんと開けてもらえれば…!」
「俺だけ注文おかしくない!?どんな絵を描こうとしてんの!?」
「きてます、きてます!あと、思い切って叫んじゃいましょうか!」
「叫ぶ!?どういう意図で…」
「早く!!」
「急いでやらなきゃいけないのもよく分からないんだけど、んじゃ、まぁ…アぁあアぁァぁぁああ!!」
なぜか急かすリアラさんと、注文に疑問を抱きながらも勢いに押され本当にくねくねと叫び始めたシエルの図式が、はたから見たら滑稽極まりないのだけど、リアラさんの筆はめちゃくちゃ乗っているようだ。
そしてシエルが叫び始めてからしばらく経って、リアラさんはふぅと一息つく。
どうやら作業が終わった事を確認すると、私達は急いでリアラさんのノートを覗き込む。
「ふぅ、完成しました!タイトルは『モナリザとムンクの叫び、夢の共演スペシャル』です!!」
「だよね!!くねくね辺りで既に分かってたけどさ!なんでこのタイミングでその二つの絵画を再現しようと思ったんだよ!」
「ただ、画力だけはぴか一なのよね……。2分くらいしか経ってないはずなのに、どっちも特徴捉えてるわ」
「ご、ごめんなさい、私も、少し筆が乗ってしまって、今度はちゃんと描きますので!」
謎に完成度の高いノートの絵をペラリと捲り、怒れるシエルを宥めるリアラさんは再び鉛筆を片手にノートに向き合う。
渋々と椅子の元へ帰ってきた私達であったが、リアラさんは今度はシエルの方から先に声をかける。
「そ、それじゃあ、シエルさん!まずはジョジョ立ちをしてもらって…」
「はい、早速アウト!!地雷臭しかしないからパスで!」
「そ、そうですか…?」
流石の危機管理能力を発揮して見事に地雷を回避したシエルであったが、リアラさんの視線はくるりとこちらへ向けられる。
「そ、それじゃ、シャルロッテさんは、シエルさんに向けて指をさしてもらっていいですか?」
「指を?これでいい?」
「あー、それじゃあ、中指も足して2本の指をシエルさんにさしておいてください。やっちゃうぞ!みたいな感じで」
「ん?やっちゃうぞ?」
既にダメな雰囲気しか漂っていない気がするけれど、ひとまず私は指示にしたがって少し顔を強張らせてシエルに2本の指をさす。
「か、完璧です!そ、それじゃあシエルさんはシャルロッテさんの方へ両手を広げてもらって…」
「え?両手をがばーっと?」
「はい、がばーっと!背中を何者かに拘束されてるみたいな感じで」
「どういう状況!?そんな状況になる事おそらくこの先の人生でないんだけど!…こ、こう?」
「はい、見えます、見えます!背中を拘束するサイヤ人の姿が見えます!」
「サイヤ人!?」
そして先ほどと同じように、リアラさんがふぅっと息をついたタイミングでリアラさんの元へ駆け寄る。
「ふぅ、今回は大作ですよ。タイトルは『魔貫光殺砲に貫かれる悟空とシエル』です!」
「なぜそのシーンを選んだ!?というかさっきから俺への配役に悪意しか感じないのだけど」
「凄いじゃない、ほら。ちゃんと魔貫光殺砲のぐるぐるのビームであなたの胴体と孫悟空の胴体が貫かれてるわ」
「確かにクオリティは凄い…じゃない!!なんで俺の背後に孫悟空が描かれて、どっちも腹を貫かれて死んでんだって話だよ!」
リアラさんのノートには、私の指から放たれた魔貫光殺砲がシエルと孫悟空を貫く、DB好きならだれもが知っているであろうあの名シーンがパロディされていた。
画風もちゃんとあの大先生の画風に寄せられており、静止画というよりも躍動感の感じられる動きのある絵が描かれている。
「そりゃあ、あなたジョジョ立ちを拒否したのだから、当然じゃない」
「復讐だった!?確かに、ジョジョ立ちを拒否ったすぐあとにシャルに魔貫光殺砲うたせる指示出してたけど、リアラさんがそんなことする訳…」
「あ、ご、ごめんなさい、ちょっと腹が立って、これは魔貫光殺砲だなって…」
「マジだった!?どれだけ腹が立っても、魔貫光殺砲で殺そうとしないで!」
「ごめんなさい!やっぱり、元気玉の方がよかったですよね!『元気玉に押しつぶされる魔人シエル』にするか迷ったんです」
「そこじゃない!!どうやら分かってないようだけど、とりあえず俺と魔人ブウを勝手にフュージョンするのはやめようか」
とか言い合いながらもなんだかんだお互い楽しくなってきたリアラさんの絵画作業は、毎度見回りにやって来るリゼ先生に見つかるまで続けられた。
そしてリアラさんのノートを取り上げられるだけでなく、既に描いていたパロディ作品の百鬼夜行とも呼べるイラストの数々を見られた後の話は読者諸兄の想像通りだと述べておこう。
こうしていつもの夏休みは過ぎていく。




