第105話 くまのぬいぐるみ
ごめんなさい、タイトルつけずに2日も放置してました( ;∀;)
本文の手直ししまくってたら忘れてました、切腹します(꒪ཀ꒪*)グフッ
…という訳で次回からは転生先の異世界から更新します((;_;)/~~
「議会にも派閥というものがあり、今回開催される全国元老評議会についても同じような勢力図が存在する。僕が仕事として働いている通常議会のその上、最高意思決定機関と謳われ2か月に1度開催されているが、内情は主に四つの勢力によって支配されている」
少し急ぎ足で中央議会へ向かって街のストリートを歩くニュートさんの後ろで、俺達はその話に耳を傾ける。
ちらりと空を見上げてみると日は沈み始めているのが分かる、もうすぐで評議会の開催予定時間だ。
ニュートさんは四本の指を立てて続ける。
「一つは議長派。つまり僕らの学長先生の支配下にある派閥だ。議長派が長らく最大会派としての権勢を保ってきたし、それは今も揺るぎがない」
「が、学長先生凄いです…」
「しかし今は議長派が過半数を占めているという訳でもない、4割ほどだ。そこで出てくるのが二番目に多い副議長派の存在だ。この二つの派閥で合わせてやっと6割以上を占め、議長派はしばしば副議長派と協調する事もあったし、意見が派手に対立した事も少なくない。いわば敵でもなければ味方でもないという状態だ」
「へぇ、僕がいつも読んでる新聞じゃそこまでの詳細は語られる事が少ないので、興味深いです!」
「そして一番大事なのが残りの4割。少し前まで主に無派閥、つまり誰の支配下にもない自由な層がそこを占めていたのだが、この10年急速にこの層を取り込む勢力が現れた。それこそがグリム派と呼ばれる新勢力だ」
「「「え!」」」
俺達は同時に声をあげ、立ち止まる。
その反応を見越していたのか、ニヤリと笑みを浮かべたニュートさんはくるりと振り返って腰に手を当てる。
「そ、そんな事ってあるんですか?グリムさんってあんなに若い…というかたかだか一魔法学園の副学長ですよね?」
「かつて勇者ローランを超えた世界最強の人類と謳われ、今以上にありとあらゆる権力の全てを握り独裁政権をしいていた、無敵と呼ばれていたあの学長先生を、たった16の青年が殺しかけた。その衝撃が政界に与えた影響の大きさはそれほどまでに大きかったという事だよ。何が起こったのかの詳細は明らかにされていないが、以降学長先生は学園に閉じ籠る事となり、彼女の持つ権力は急速に衰退した。それでもおよそ10年もの間、失脚することなくまだ頂点に君臨し続けるあの人は異常だけれども、周りの反学長先生の大人達が学長先生を失脚させるためグリムを持ち上げようとするのはごく自然な流れなんじゃないかな」
ニュートさんは呆れるように説明するが、相変わらず俺の中の学長先生にとんでもない肩書が増えていく。
そして比例するようにまだ俺自身会った事もないグリムさんの株価も一緒に爆上がりするのだが、だったらなんでそんなおっかない二人共が学園の学長だったり副学長を務めているのか、という疑問も当然に溢れてくる。
まぁ今や普通のなろう小説を展開している本作において、そこだけが従来のこの物語のクソラノベっぽさを体現してくれているから強くは言えないのだけど。
そんなメッタメタな感想を抱く俺であったが、ニュートさんは人差し指を唇に持って行ってから俺達の方に顔を寄せる。
「そして僕が今調査しているという噂こそグリム派にまつわる噂だ。学長先生派と副議長派の双方を裏から支える巨大スポンサーとして活動している世界最大の財閥、ヴィンダーハイム財閥の長がグリムと接触し、一気に勢力図をひっくり返そうとしている」
「え…」
「つまりだローラン先生の義理の息子であるアルベルト・ヴィンダーハイムがグリムと手を組み、学長先生を失脚させようとしているという噂が今流れているという訳だ」
ニュートさんは不敵に笑みを浮かべると、俺の肩をがっちりと掴む。
(ローランさんの義理の息子……つまりそれはシャルの……)
「あくまで噂話だ。だけどなぜ突然これまで協力関係を続けてきたヴィンダーハイム財閥と学長先生が袂を分かとうとしているのか、そこには様々な要素が絡んでくるんじゃないかな。例えば、学長先生の学園に通う実の娘の身に何かが起きた、とかね」
「……やめてください、別に俺はあなたに対して何も隠すつもりはないですよ」
「そうか、ならばちょうど良かった」
ニュートさんはニッコリと笑みを浮かべる傍ら、俺はぎゅっと唇を噛む。
分岐点を見誤った。
ニュートさんは確かに信頼できる、だけどたった1、2時間触れ合っただけに過ぎない部分もある。
こんな事になるのだったら、ニュートさんに接触した時点でもっと警戒を強めておかなければいけなかった。
今からでは遅すぎる。
ニュートさんは腰に手を当てて言う。
「僕と手を組まないか?必ず君達の探し人は僕が見つけてあげよう、だからその代わりに、少し協力してもらいたい事があるんだ」
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8月7日 16時
「……さて、皆さんお集まりのようですな」
「残るは議長殿のみです」
荘厳な会議室の中、真っ白い髭を顔いっぱいに蓄えた男はちらりと、右隣で机全体を見渡すことのできる豪華な装飾の椅子に目を向ける。
「……毎度、この椅子はあのお方には不要であろう?どうせ使わぬのならば、腰痛持ちのワシに譲って欲しいものじゃ」
「はっはっは、副議長。それは二重の意味で議長の椅子を狙っていると取られても仕方ないですぞ?」
「ほぉ、ならばワシも粛清されてしまうのかのお。はっはっは」
全く笑えない冗談であったが、周りは乾いた笑みをそれぞれ浮かべてその場をやり過ごす。
するとしばらく経ってから会議室の重厚な扉はギィ、と音を立てて開かれる。
次の瞬間、その場にいた全員は頭を下げて、その者を出迎える。
カツカツカツと会議室に靴音が鳴るたびに、決して顔を上げることなく俯く彼らの足元の景色が変化していく。
草原の中、砂漠の中、はたまた溶岩の上……足元だけではないこの部屋全体の景色が変わっていくその不思議な体験に、今更驚きの声をあげる者はいない。
そして靴音が止まると、景色は天空の景色で止まり、副議長は顔を上げた。
「相変わらずの魔法で……いや、これはこれは今日は懐かしい顔ですな」
「…………」
その場に現れたリゼは、副議長と目を合わせるが答える事はなく、議長の椅子の傍に立ちながら辺りを見渡していた。
まるで本当に会議室の机が空中に浮かんでいるような景色に、慣れているとはいえ流石に少しの驚きの表情を隠すことのできない面々。
そしてリゼは胸に抱きかかえていたそれをそっと机の上において一歩後ろに下がる。
その様子に満足した副議長は辺りを見渡すように声をあげる。
「会議の準備は整っておりますので」
「あら、そう。それではここに、全国元老評議会の開催を宣言します」
厳格な会議室の中、30人以上の大物政治家が対面で並ぶその机の最も上座の位置に現れたのは、”くまのぬいぐるみ”だった。
全身をふわふわな毛が覆い、目の玉を黒色のガラス球、そしてとって付けたような耳と手足を持ったそれは、どこからか声をあげると腕を組んで会議の始まりを宣言したのであった。
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