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第97話 毎度

次回でこの章終わりです!

10話にまとめる事ができず、ごめんなさい(ノД`)・゜


「これを持って行きな」

「これ……万年筆ですか?インクは……」

「いいや、もう入ってるさ。書けるものにはちゃんと文字が書けるようになってる、これはそういう道具だからだ」


俺はダリアさんから今回のお使いの目的でもある魔水晶の山を受け取り鞄に詰めていると、ダリアさんは至ってシンプルなデザインの万年筆を軽く放り投げてきた。

持ち上げてみてもやはり重さはあまり感じられず、インクが本当に入っているのかと疑いたくなるほどだ。

俺はぷらんぷらんと万年筆を空中で揺らしながら尋ねる。


「これでいくらするんですか?」

「あんたが持ってた金の4分の1はこれだよ」


さらっと言ってのけるダリアさんに、俺は万年筆を適当に摘まんでいた手がすくむ。

この万年筆だけでそんなに……


俺はそんな万年筆を大切に持ち直してから鞄の中へ仕舞い込むと、隣で聞いていたシャルが尋ねる。


「そんなに高い魔法道具ならば、一体どんな効果が?」

「その万年筆は非売品でね、あまり効果を言いふらす事もできない。あの学長とそういう契約になってるんだ」

「……つまり、学長の強さの秘密に関わる魔法道具、という事ですか?」

「さぁね、学長に聞いてみればいいさ。私から言えるのはそこまでだ」


人差し指を唇に持っていきウインクをするダリアさんに、シャルは悔しがるように拳を握るが仕方ないと諦めて、はぁと息を吐く。

学長とダリアさんの性格を考えるに、確かにこれ以上問い詰めても意味はなさそうだ。


だけど俺には昨日の俺では思いついていなかったであろう、一つの可能性が閃いていた。

チート売りの婆さん、そして既にインクの入った魔法道具の万年筆……



「……もしかしたらこの魔法道具って、”空白のページ”に文字を書く事ができる道具、だったりしますか?」

「………っ!?」

「……”空白のページ”?なにそれ?」



目を見開いて俺を睨むダリアさんと、単純な疑問を投げかけて首を傾げるシャル。

俺はひとまずシャルの事を無視して、ダリアさんにだけ注目する。


チート売りの婆さんが言っていた古の魔法道具”空白のページ”、それがどのような魔法道具なのか俺には全く想像もできないけれど、あの婆さんは学長がその古の魔法道具を持っていると断言していた。

当の学長からの依頼で受け取ったこの万年筆がこの件と全く関係のない物とは思えなかった。


それにダリアさんのこの反応……


「そうだ、その万年筆だけが例のページに文字を書く事ができる、唯一の魔法道具だ」

「………!!よかったんですか?」

「さぁ、だけどここにあんたを遣わせたのは誰だい?そしてピッタリこの万年筆一つ分の金額が残るようにお金を持たせたその人は、きっとここまで読んでると私は考えた」

「………確かに偶然とは思えませんね」


ダリアさんは腕を組んでニヤリと笑みを浮かべると、恐らく今回のお使い分の料金を差し引いた金額の札束と、俺が受け取ったものと全く同じ型の万年筆をポンと机の上に置く。

俺は俯いてはあと息を吐くと、顔を上げて呆れるようにそれらを見比べる。


「さて、私は客に買えと言った事はこれまで一度もない。だから今回もあんたに任せるよ」

「……分かってるでしょ?」

「あぁ、分かって聞いてる。だから今回はおまけもつけてやろう」


そう言って悪い顔を浮かべたダリアさんは懐から何かを取り出して机の上に置くと、ゆっくり手をどけてそれを見せる。

そこには先ほどの決闘の時に使われた者とは明らかに輝きの違う、正規品の魔水晶が一つ。


俺は腰に手を置いてから、呆れるように笑みを浮かべて言った。



「買います」

「毎度あり!」



******



「孫娘、帰り方はあんたがここに来た時と逆だ、そしてゲートはここ。どうやら分かってるようね」

「はい、何となく分かります。お爺様の空間魔法は何度か経験した事があるので」

「じゃあね、シエルお兄ちゃん!シャルお姉ちゃん!」


店を出て後ろを振り向くと、シャルに声をかけるダリアさんと店の前までやって来て俺達を見送るラミィが駆けてくる。

ダリアさんは指をさしてシャルへ帰り方を教えているようであったが、ふと腕を下ろすとシャルを見つめて微笑みを浮かべる。


「?どうかされました?」

「……いいや、前に来たときは腰くらいの小さな女の子だったのが、大きくなったものだと思ってな」

「……そう、ですか?ごめんなさい、私当時の事をあまり覚えてなくて……」

「そりゃあ、そうさ。あの頃は私もここで商売を始めたばかりで、それだけ時は経ってるからな」

「………!」


感慨深く言うとダリアさんはシャルの肩をがしっと引き寄せて真剣な表情を浮かべる。


「……あんたの家族が何者で、あんたが今どれほど苦しみを抱える立場にいるのか、私には分かってる」

「………あなたは何を……」

「あんたは繊細で、優しくて、すぐに壊れてしまいそうなうちの魔水晶によく似ている。でもこれだけは覚えておきな、あんたはローラン先生とは違う。同じようにできなくて当然なんだ。だから、壊れるまでもがく必要はない。先生に救われた私や、あんたの傍に居るシエルの坊主が必ずあんたを見捨てはしない」

「…………」


真っ直ぐシャルの目を見て言うダリアさんに、シャルはごくりと息を呑む。

そんなシャルを見て笑顔になったダリアさんは掴んでいた肩を離してポンと押す。


「どうせまた近いうちに会えるさ、そんな気がする。そして扉もあけてやったから、またな」

「……ありがとうございました!」


シャルが頭を下げていると、俺達の足元が突如輝き出し風が舞う。


「な、なんだこれ!」

「早く手を掴んで!」


シャルは俺の方へ振り返ると、勢いよく伸ばした腕を俺に向ける。


俺は必死にシャルと手をつなぐと、暴風とも言えるほどの風の中、正面で俺達に必死になって手を振るラミィを見つける。


「またねー!!」

「あぁ、また!!ありがとう!!」


それだけを必死に叫んでいたら、とうとう視界が光に奪われ俺は腕で光を遮りながらぎゅっと目を瞑った。



こうして俺はようやく、4時間の中断を経てシャルとのデートを再開するのであった。



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