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第95話 ミサンガの綾

「あんたの主要魔法は何?」

「……火魔法です」

「嘘だな。見たところあんたが学長の言っていた浮遊魔法使いか。しかし手の内を隠そうとするその姿勢は褒めてやろう」


分かってるならなんで聞いたんだ、と喉元まで出かけるが、俺の経験則上余計な事は言わない方がよさそうだ。

しかし学長先生から一体どんな話を聞いていたのか気になるけども、一旦は戦いに集中しよう。

浮遊魔法もこの人相手には隠す必要もなさそうだ。


するとダリアさんは右手の掌を俺に見せつけると、その指と指の間には見覚えのあるビー玉が挟まっていた。


「これは魔水晶の失敗作。魔法を保存できる期間はたったの30分程度しかない不良品だ。だけど今回のような場合にはちゃんと役に立つ」

「え?」

「使い方は単純、弾き飛ばす、ただそれだけだ」


ダリアさんは説明しながら、人差し指で弾かれとんでもないスピードに乗った魔水晶が正面から飛んでくる。

直感的にヤバいと判断し真横に浮遊魔法を使いながら避けると、先程俺が立っていた場所で魔水晶は爆発し爆炎をあげる。


「えええ!」

「魔水晶の中に保存された魔法はまだ使用者の支配下にある状態と心得ておく事だ、だから魔法の起爆のタイミングもそいつ次第。あとは魔水晶自体が破壊された時も魔法は発動される。次!」


ダリアさんはずっと魔水晶の説明をしながら俺の逃げる方向へ魔水晶を弾き続ける。

だから俺は一転攻勢に転じて、ダリアさんの方へ飛ぶ。


「んあ!?なんじゃこれ!」

「これはダンジョンの食生植物グリゴリの糸でつくられたネットだ、魔力を通せば粘着力が増し、お前でも解けんだろ」


超スピードで飛んでいったにも関わらずいとも簡単に回避をされた俺は、避けるついでに被せられた魔法道具のネットに絡まれて動けなくなるが、そんな俺をダリアさんは蹴とばして砂浜に叩きつけられる。

しかしその拍子に、ネットは自ずと体から離れていく。


「これ系の糸の対処法は力での対抗じゃなくて、一本一本の糸を意識した上で魔力を糸の限界以上に流す事。限界以上に流し込まれた魔力は、糸を内部から破壊するからな」

「あの、これって…」

「次!」


俺が質問する間もなく、ダリアさんはポーチから次の魔法道具を取り出して俺に向ける。


「これは魔力砲手のひらサイズバージョンだ。威力は大したことないがスピードは…」

「いて!いて!いて!浮遊魔法のスピードについてく……いて!ずっと地味に痛い!」

「私の新作だ、なかなかイライラするだろ?」


微笑みを浮かべた顔で魔力砲と呼ばれた拳銃を連射するダリアさんを見て、俺は今回の決闘におけるダリアさんの意図に気付いた。


俺はふっと息を零して、改めて立ち上がり浮遊魔法を駆使した攻撃の回避を再開したのだった。



****



「あはははは!シエルお兄ちゃんも頑張ってるね」

「…これが決闘?」


頬杖をつきながら呆れるように決闘の様子を見つめるシャルロッテは、常に笑顔で二人の戦いを観戦するラミィに声をかけた。


「……それで、さっきのダリアさんの質問の意図って何だったの?」

「んー?簡単な事だよ、そのミサンガをつくったの、実はラミィなの!」

「え…」


戦況から目を離す事無く、笑顔でさらりと衝撃の事実を伝えられたシャルロッテは思わず姿勢を正してラミィを見つめる。

するとくるりとシャルロッテの方へ視線を向けたラミィは面白そうに語り始める。


「…そのミサンガはね、魔力を伝えやすい特殊な糸を編み込んだものでラミィが初めて作った魔法道具だったんだよ。当然お母ちゃんがつくる魔法道具なんかと比べたら魔力の伝導性も悪いし魔法道具を名乗る事すらできない、所謂粗悪品だね。でもラミィは初めて作った大事な魔法道具だから、買ってくれる人がいたらいいなと思って商品棚に置かせてって頼んだの」

「……それをお爺様が?」

「うん、あの日の事はすごい覚えてるよ!お母ちゃんはラミィの作った初めての魔法道具を売りたくはなかったらしいんだけどね……」


ラミィはそれだけ言うと、胡坐を組みながら肩を大きく揺らして語り始めた。



********



『はて、これは…?』

『……あぁ、それかい。えーっと、そうだ、行商人から材料を仕入れた時混じっててな。性能も悪いし至って平凡なミサンガさ。だけど返品するのも面倒くさくて置いてるだけだ、先生もそんなものより他の…』

『いいや、これを貰おう』


ローランは細い腕を伸ばしミサンガを2つ手に取ると、ダリアが適当に設定していたミサンガの料金を支払おうと財布を漁っていた……そんな場面を偶然ラミィは店の奥から見つめていた。

ダリアは苦虫を噛み潰した表情で、それでも商品棚に置かれたものを実際に買おうと言う客を止める事はできない。


ダリアは腕を組んで、ローランに問いかける。


『先生。何が気に入ったんだ、このミサンガ。正直私の目から見ても平凡なデザインにに平凡な性能だ。あんたがわざわざ買おうとするほどのものかい?一体このミサンガをどう思ったんだい?』


問いかけられたローランはしばらく俯いて料金分のお金を数えていたが、しばらくして顔を上げるとミサンガをつまみ上げて答える。



『……デザインや性能なんかじゃない。少しいびつな所がありながらも一本一本丁寧に糸が編み込まれておる。このミサンガには作り手の優しさが込められておるんじゃよ。一生懸命にまっすぐでひたむきな、そんな思いが込められた商品こそが人を魅了するんじゃ。この店の他の商品達もそうであるようにの』


『……!』『………』


『それに、ちょうど良い土産を探しておったところじゃったんじゃ。はっはっは……』



********



「……あの時のローランさんがお母ちゃんの嘘に気付いていたのかは分からないけど、すごく優しい人だって事は見ていてすごく分かった。だからきっとあれも本心で言ってくれてたんだなって思えて、すごい嬉しかった!」

「……そうね。お爺様らしいわ」


シャルロッテは腕に巻かれたミサンガを優しく撫でながら、ローランを懐かしむようにふっと笑みを浮かべる。

ラミィは続ける。


「だからラミィはね、シエルお兄ちゃんがあの時のローランとほとんど同じ事を言ってたのを聞いて、びっくりしたの。それはお母ちゃんも同じだと思う。きっとお母ちゃんはローランさんと繋がりのあるシャルお姉ちゃんたちがどんな人なのかを知りたかっただけだったんだと思うの!」


ラミィはくるりと体をシャルロッテの方へ向けてにっこりと笑顔を向ける。


「シャルお姉ちゃんは、お爺さんのローランさんをひたむきに思ういい子で、シエルお兄ちゃんは素直で作り手の事を思いやってくれるようないい子!シャルお姉ちゃんの答えが間違ってたわけじゃ全然違くて、ローランさんとちょっとだけ似てる答えを出したシエルお兄ちゃんにびっくりしたってだけで…」

「ふふ、もういいわ大丈夫。ありがとね」


シャルロッテは微笑みを浮かべてラミィの頭を撫でてあげる。

シャルロッテは子供に励まされた自分に少し情けなく思う気持ちがありながらも、どこか救われたような、穏やかな気持ちになれた。


ラミィは嫌な顔をせずにシャルロッテと同じように笑みを浮かべると、くるりと顔を戻して決闘の観戦に戻る。


「見て見てシャルお姉ちゃん、あの魔法道具はラミィもつくるの手伝ったんだよ!」

「へぇ、凄いのね。どんな事を手伝ったの?」

「あの魔法道具はね、結構手作業が大変でね……」


ラミィとシャルロッテは決闘の様子を眺めながら、楽し気に会話を続ける。


そしてその頃にはいよいよ決闘はクライマックスを迎えていた。

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