春を待つキミヘ
四角い空の下、一輪、花が咲きました。
✳︎
轟音が響き渡る。
ここは、工事現場。力強く回るタイヤが地面を削り砂煙を出しながら移動する。高い塀に囲まれたこの場所では砂煙と轟音が溢れかえっていた。
そこで動く機械は、何かを作っているのか、破壊しているのか、理由も聞かず無表情。無表情の割に、動けばいちいち騒がしい。そこでまた人間も叫ぶように怒声をあげるから、この場所では音が顔をギュウギュウに寄せながら満員状態だ。
大きなショベルカー。こいつもまた無表情。ショベルカーがその大きな手で壊れかけの建物を引っ掻くと建物から灰色の瓦礫が崩れる。灰色の砂煙がその一帯を包み込む。無表情のショベルカーはきっと知らない。今、その瓦礫が、今朝咲いたばかりの小さな花に降り注いだ事を。
機械は無表情でいちいちうるさい。そして、無表情に悲鳴を飲み込む。もうここにはこれ以上の音は入りきらない。「入れるものか」と他の音がひしめき合うのだ。半分瓦礫に埋もれた花の声はここではどこにも届かない。
灰色になる空。太陽だけは、砂煙の間から淡いピンク色の花びらを照らしていた。
✳︎
そして、夜になる。