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結花媛命2

『諦めよ!! 武器を捨てよ!! さすれば、その無限廊から出してやろうではないか』


『みんな耳を傾けるな!! 鬼の言ノ葉に惑わされるな!!


 真絢さんが刀を振るい声を張り上げる。


『我は詣りに来る人の願いを叶えてやっておるだけ。それでお前たちに迷惑が掛かっておるか? おらぬであろう? 目を閉じ、耳を塞げば、ただ通り過ぎて行く現象に過ぎぬ。人の惚れた腫れた別れたなぞ、この世に腐るほどあるではないか。それに関係の無いお前たちの干渉は無粋というものであろう。そんなものに己の命を賭す価値があるのか?』


 騙し討ちが出来なかった時点で作戦は贄の―― わたしの奪還に切り替わっている。贄の血を呑み干されて鬼に力を与えてはならない。故に奪還が叶わない時は、鬼諸共、贄の始末。もしくは贄自身にその身を命を封じの柱に変えさせて鬼を封じさせる。そうして何事もなかったかのように世は保たれる。


 わたしが存在を、わたしを知るものから消して、無かったことにして廻る世界。


「聞け鬼斬りに陰陽師ども!! お前たちの役目は日女様の血縁者と貴人を守ることで、市井の者はついでであろう? 市井の者を守るのは治世が乱れては権威が揺らいではならぬからであろう? この神社に願掛けをした者程度の数で揺らぐものか?」


 その言葉が決定打となった。それを肯定するということ今上の御力を否定し、その威を疑うということ。


「神秘は血と闘争、武に取って代わり、武士――武家が好き勝手にしだしてからは、その威も失墜したこともあったか。いや、権力者が自身の権力を更に強めるため――権勢を誇るために、娘を送り込んで利用してもいたな。あまり変わらぬか……まぁそのような事はどうでも良いな!狗は大人しく飼い主の許へと帰るが良い」


『あい、解った。だが、武器は捨てられぬが刃は収めよう』


 そう言って真っ先に行動で示したのが陰陽庁の鬼斬りの隊長である壮年の男性だ。


 隊長が撤退を判断したなら術師の隊長も撤退の意を示した。


『あの贄はそちらの問題。我らには関わりのない事故。だが、くれぐれも大事おおごとにせぬように始末をつけよ。フ、鬼に嬲られて気をやるとは、流石は裏切り者の娘といったところか。穢らわしいものよな』


 嘲笑の笑みと侮蔑の籠もった目を向けてくる。


 その瞬間、鬼斬りの隊長の頭が弾けた。


 脳漿と血が飛び散り、近くに居た隊士の顔や身体に掛かる。髪に張り付いた肉片がべちゃりと地面に落ちた。


「我の前で、その台詞をよく言うた。褒美だ駄犬。貴様には死をくれてやった。今も昔も貴様ら鬼斬りは口だけはよく回る。躾けがなっておらぬようだ。だから教えてやろう。覚えておけ。口は厄災のもとだということを。雉も鳴かずば撃たれまい」


 そこから躾けが始まった。


 隊長の余計な一言で退路を失った彼らは拝殿の開けた場所に転移させられてた。本来なら参道を駆け抜けて辿り着かなければならぬ場所。


 その開けた場所に鎮座する獣と相対する羽目になった。

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