異妖“縁切り”
「わたしはちゃんとバイトをまっとうしたのに怒るなんて、補佐も長もひどいと思わない? 確かに修繕工事にはなったけどさー」
ズズッ……とストローでメロンソーダを吸い上げる。
「沙羅、二人が怒ったのは、そこじゃないと思うわよ」
「え?」
「え? って、こっちが、え? だわ。二人が咎めたのは異妖に好き勝手させて要保護対象者を放置したことでしょ」
「依頼は相談だったし、延長も討伐依頼も正式にされなかったんだから」
「そこは後に処理すれば良かったんじゃない?」
「民間企業とはいえ、一応御役所みたいなものだし?」
「いや、何時も独断先行してるじゃない。異妖を野放しにしたってことでしょう?」
「そのへんは大丈夫。今は阻んだわたしに矛先が向いたし、それにもう終わったことよ」
「自分に!! って、何危険なことしてるのっ……。真絢様と頭補佐が怒るわけがわかったわ」
「仕方がないじゃない。許せなかったんだから」
確かに従順的な可愛さは無かったかもしれない。その結果敬いが無い様に感じさせたのかもしれない。
だけれど異妖の基となった女性は夫の母親を尊重はしていたのだ。
そもそも、赤の他人だ。よく、家と家の繋がりだというけれど、それが勘違いだ。結婚は元の籍から外れ、新たに籍を作ることだ。入籍なんて名字を同じにするからおこる間違い。
成人し、自立した一個の人格に従順さを求めるほうが悪い。
「そんな下らないことで呪われて死を願われちゃたまったものじゃない」
「だから鬱憤をぶち撒けさせた、と」
「そう。それから直ぐに異妖を追って、その部分を斬ってきたのよ。そうそう、チハルん。これ、相談にのってたなら彼女に渡して。わたし、余計な荷物は斬り離したけれど、彼女の大切な感情は斬ってないから」
「ええ、了解したわ」
わたしは手を振ってチハルんとわかれた。
先日。相談室で異妖を暴れさせるだけ暴れさせた後、直ぐに御頭様である真絢さんと補佐をしている母さんに報告した。
そして異妖の気配を追った。




