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歪みー一夜明けてー

「沙羅!」


 廊下を歩いていると背後から御役目のときに使う名前を呼ばれて振り返る。


「会えて良かった」


「チハルん?」


 彼女の名前は佐藤さとう 千陽ちはる――あだ名はチハルん。


「沙羅。貴女が彼女の担当したって聞いたけど! 彼女をどうしたの!!」


 チハルんがわたしの肩に手を置いて激しく揺さぶり問うてくる。


「ちょ。ま、待ってよ! 落ち着いてチハルん!!」


「ご、ゴメン……つい……」


「良いけどさ。で? 彼女って百々目鬼に成った彼女のことでOK?」


「そう! 彼女――東雲 香澄美!! 鬼への転化の兆しが視えてたからなんとか人に留めようと相談に乗ってたのよ……」


 しかしチハルんにめいが下ったことで東雲さんの相談に乗れなくなった。その間に転化が進行し、異妖と成り果て、私に御役目が回ってきた。


 任務が下された時、チハルんが対処していたと聞かされた時は因果なものだと思った。


 チハルんのルーツは俵藤太たわらとうたこと藤原ふじわらの 秀郷ひでさとにある。藤原 秀郷と云えば百目鬼を退治した鬼斬りとして有名だ。


「執着の元となったモノは滅却したから人には戻せたけれど、執着を纏って成った異妖だから……」


「執着心の部分が欠けた……?」


「わたしには斬ることしか出来ないから……。欠けた心――魂を埋める様に魔が巣くうのを防ぐ様にするくらいはしたけど……」


 斬る事しか出来ないわたしに出来るアフターケアはそれくらいしかない。たとえるなら切断面を焼いて傷を塞ぐ様なものだ。


 塞いで魔が健全な魂と結び付かない様にするだけだ。


「責めてるわけじゃないんだ。誤解しないで。ただ、また周囲の自慢マウントに振り回されないかって心配になっただけ。欠けたなら、興味が持てなくなったなら苦しんで、妬んで、鬼になるような事態が防げるなら、それが良いから……」


「自己満足の偽善だけどね」


「それでも異妖として討たれて終わるよりは、ね」


 わたしたちが身柄を確保した。表では裁け無い事案だからだ。

 東雲さんは保護され、罪を償うための施設へと送られた。


「あっちの仕事を横から掻っ攫ったから、凄い怒ってるわね。今ごろ」


「そんなの早い者勝ちっしょ!!」


 わたしは知っていた。チハルんが親身になって相談に乗っていたのを。だから任務で離れている間に異妖として討たれてしまえばチハルんの心だって浮かばれ無いじゃない。

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