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歪み
とある神社。その神殿の屋根から訪れた者を冷めた目で見下ろす者がいた。
――また……。
――あぁ嫌だ。
幾度目の願いだろうか。最早思い出せぬ。
――くだらぬ。
――浅ましい。
幾星霜経とうとも人は争い奪い合う。相変わらず醜いまま。
何故、此のような願いを叶えねばならぬ。
熱い。痛い。他人を蹴落とし、不幸にしてまで叶えようとする身勝手な願い。呪っているのはどちらだ。
情念の縄で縛られて身動き出来ぬほど。
また一つ重ねられていく。
人を呪うならば望みを聞いてやろう。叶えてやろう。
貴様らの命を、幸福を対価に。覚悟無きものからは倍の対価を頂こう。
禍あれ、呪いあれ!!
託された願い――情念――呪いが獣の形を成していく。
獣は産声をあげる。
口元が裂け醜悪で怖ろしい笑みを浮かべる。
親の元へ征け!! そして願いを叶えてやるのだ!!
獣は弾ける様に分散されて飛び去っていく。
それを神殿の屋根に立つ者が凶相を浮かべて嗤っていた。




