ないものねだり
「あぁ……羨ましい……」
――此れは私のもの……。
「あぁ……妬ましい……」
――在れも私のもの……。
「あぁ……満たされない……」
――其れも欲しい……。
周りを見ればあれも此れも其れもどれも私が持っていないものばかり。誰も彼もがそれをらを自慢気に身に纏い着飾り、想い人と、友と笑みを交わす。
――貴女なんかよりも私の方が似合うわ。
――貴女みたいな女より私の方が彼に相応しい。
「そうよ……私の方が……」
――だから私が貰ってあげる。
――だから私が使ってあげる。
最初は少し借りて直ぐに元の場所に返すつもりだった。
最初は悩み事を聞いてもらうだけのつもりだった。
ほんの少し魔が差した。
――ほら、私の方が綺麗。
それを着けて歩いてみる。皆が素敵、似合うと言ってくれる。
相手の方が私を求めて来た。心変わりは私の所為では無いのだから文句を言わないで欲しい。
強いて言うのなら私の方が可愛気があったということだ。
「欲しいものは全て手に入ったのに……手に入れたのに……それなのに……何故……満たされないの?」
羨ましい、妬ましい、欲しい。足り無い足りないたりないタリないタリナイ――
――何が?
――何もかもが。
若さ、時間、金、ブランドもの、素敵なパートナーetc.etc……。
――身体が何だかダルいし、重いし、熱っポイ……。風邪かな……鬱……じゃないと思うんだけど……。薬を飲んで……熱冷ましのシートと氷枕で……冷やして――




