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美少女鬼斬り爆誕っ!!

プロローグⅢー藤咲 双樹ー

 元々筋肉の付きにくい体質だった。玉鋼と鉄を鍛えた刀は重い。それでも持って振れるまでになって、その重さに振り回されずに扱える身体の使い方にも慣れてきた――


 ――ところだったんだけどなー。


 それが女の子の身体になったことでマイナスになった。だからといって不貞腐れても落ち込んでも男には戻れないし、戻れないならこの身体で刀を振るい、鬼の首くらい斬れるようにならなければならない。


 何せ、女性の身でありながら当代最強と謳われた人が身近にいるわけだしね。師匠だからね。だったらこの身体でもやってやれないことはない――


 ――と、思いたい。


 リーチ、体力、筋力が下がったぶんしなやかに、柔軟さが動きに加わった。何より霊力がバカみたいに跳ね上がった。


 術医には男性として疑似の死を経験し、女性へと再誕したことで陰陽が成り、更に陰中の陽、陽中の陰も生じた事が原因だとか。


 その術医でさえ、ハハッ!この呪いを解くなんてむりだね! と、笑って匙を投げやがった。その陽気な顔をぶん殴ってやろうかと思ったよ。


 記憶は有れど、リセットされたこの身体。故に修行のやり直しを命じられた。


 12年間、女の子をしてきた記憶と男子だった記憶があって変な感じだ。あったものが無い違和感と無かったものがある違和感に戸惑ってしまう。


 ――12歳にしては発育が良いらしい。


 らしい、と言うのは担当の術医が言っていたからだ。

 

 ただ、鬼は力で以って斬るものではない。

 現身うつしみを持つどのような人型であれ、獣型であろうとも四肢を斬り落とせば止まるし、首を刎ねれば死ぬ。心臓を潰せば死ぬ。内臓を引き摺り出せば血を呑もうが肉を喰らおうとも肉体に還元されない。


 そこに到るまでが大変というだけだ。


 霊体ならそもそも力を必要としない。斬るための技術と身体能力だけ。霊力が有って祓えれば良いのだから。


 『鬼』とは『キ』。『キ』とは『気』のことを指す。『気』は『魂』。鬼斬りの技はその『気』を絶ち切るわざ。『気』とは生命エネルギー。『樹』が大地を裂き根を張り、また巌をも断つように『鬼』の強靭な肉体を断ち斬る業を私は修めている――


 ――とはいえ、一からやり直しですよー。また、此処に戻って来るなんてねー。


 とりあえず長い白金の髪を一つに束ねてポニーテールにする。


 鬼斬りの組織が保有する何処かに存在するかもしれない霊峰。遮那王が鞍馬山で天狗に修行を受けた、という伝説は理に適っている。


 いわゆる高地トレーニングだったり、足場の悪い山中を駆けることで状況判断能力を上げる。霧も出れば方向を見失う。霊視、感覚を研ぎ澄ます必要があり、下り坂を全力で駆ければ少しの判断ミス、遅れで崖からダイナミックにダイブすることになるし、傾斜を転げ落ちるだけでボロ雑巾のような死体となる。


 当然、わたしたち見習いの鬼斬り試練を与える教官には山登りも下りも、まともに走破させるつもりは無く、罠も仕掛けてあるし、攻撃までしてくる。死ねばそれまで、だ。


 しかも、この鉢巻。地面に引きずるほど馬鹿みたいに長い帯。それを地面に着けないで走らなければならない。


 酸素の薄い山での運動で、酸素の運搬能力、筋肉の酸素消費能力が高まって最大酸素摂取量が上がって持久力も上がる。霊力を練り、酸素のように、血液のように自然に身体に巡らせれば霊力も量も上がる。


 ――お風呂入りたい! 身体洗いたい! 髪洗いたい〜!!

 わたしたち母娘が憎いからって集中攻撃に罠設置なんて陰険陰湿にもほどがある!!


 まぁ、返り討ちにしたけれどね。


 次の修行が洞窟の出口を目指す、という修行だ。霊力を霊感をソナーのようにして出口まで歩く。水も食料も装備は得物だけ。私なら刀だ。


 感能力と霊力の向上。あと、断食修行。命を見詰め直す。それは生命線を視るということ。


 それを視るレベルになれば合格だ。


 わたしは7日で生還。以前は10日。3日短縮出来たぞ☆


 ――甘い物食べたーい。モンブラン食べたいなぁ〜。桃が食べた〜い!!


 暗いし狭かったり、湿ってたり、水没して泳がなければならなかったり、喉乾くし、お腹すくし、けど、食べたかったのは甘い物だったから、それだけを心の支えにして生還しだぞ♪


 は? 無い? 巫山戯んな。死ぬの? ねぇ、死ぬの? そう、そんなに死にたいんだぁ。


 え? 買ってくれんの? 昔ながらの黄色いのがわたし好きなの!! てんきゅ!! 


 残りは全て鬼を斬るための術技、生き残るための体術(逃げ方)とか、その他色々修めなければならず、それらのかたわら学校にも通い、勉強も頑張ったわたしをわたしは褒めてあげたい。


 鬼に対して討伐するという気概が足りてない? ん〜。そりゃあそうでしょ。わたし別に復讐一筋じゃないからね。


 それはさ、敵として前にたって対峙したら問答無用に斬るけどさ。


 大切な人を失ったことが無いから? や、わたし誤魔化してないだけだし。


 だってあんたらってさぁ、復讐が果たせたらその後なんてどーでもいいって思ってんでしょ。今、鬼を斬る修行だって、復讐対象の鬼を斬るため、鬼だって試し斬りでしょ? 


 それを、自分たちのような者が現れないように、なんて誤魔化してないだけだって。


 あ、図星かぁ。うん。そんなの誰にとっても迷惑だから、復讐なんて止めて、忘れてフツーに暮らしなよー。そっちのが良いって絶対に。


 わたしがなんで鬼斬りになるのか? 守りたい者を守れる力が欲しかったからだけど? 他はどうでもいいのかって? うん、だから何? 他なんて守りたい人の向こう側にいる延長線上に存在してる。だからついでに救ける、その程度ね。


 そうでも思わないと、自分の実力と退治しなければならない鬼と、救わなければならない人の数、鬼に襲われても仕方が無い人も救わなければならない虚しさとかに絶望するからねー。


 修行の間に伸びた髪をレイヤーを入れてカットして整えて貰い、狩衣風の黒いパーカー(ジャケットやコートも選べる)を選び、和装に似せたノースリーブのブラウス。袴風プリーツスカートにニーハイソックス。編み上げブーツ。


 コーディネートが自由に選べて支給されるなんていい職場。霊刀は〈千破矢〉。唐鍔に鋒諸刃造りの日本刀。


 美少女デモンスレイヤー グランシャリオー!! 北極星に代わって悪い鬼は調伏よ!!

 変身少女のようにキメポーズをしてみる。 


「可愛いいマスコットはどこかしら? それとも願いを持つものを騙す系のマスコットかしら? まぁ良いわ。それよりこれが、鬼斬り見習いを卒業した証。無くさないように、それ、刀所持の免許にもなっているからね。それでもあくまで此方側での物だから、本当に無くさないように。これで貴女は超自然現象・災害研究対策機構に配属された訳だけれど……」


「ハイハーイ。ダコール。解ってますよー。藤咲 双樹、自由にやらせて貰いまーす!!」


「此処では千羽、外では上総かずさの良いわね! あと、貴女をどこも引き受けなかっただけ。一番隊に置いても良いのだけれど……」


「りょーかい。やっかみに煩わされんのはヤだなー」


「でしょうね。それで何人もの中堅や若手、新人を潰されたら人員回せなくなるもの」


かしら代理も大変なんだね」


「解っているなら、公私を分けなさい。良いわね、千羽君」


「ダコール。了解しました!!」


 ではでは、しつれーしまーす!! 元気良く挨拶をして退室。


 ――呼び出し以外は来なくて良いし気楽で良いよね。これでおきゅーりょー貰えるんだから。ラッキー。


 おきゅーりょー分はお仕事、ちゃーんとしますよー。こー見えて、わたし、真面目なんですよー。


 

そして現在へ――

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