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DAYS3ーそうじゅといっしょー

 詩音と双樹が頻繁に訪れるというアニメ専門店に来ています。

 そのお店に初めて入った私は、その圧に足を止めてしまいました。


 何せ、何処を見てもマンガやラノベ、関連書籍です。

 私がよく利用する書店とは違っていました。


「そ、双樹、これが普通なのですか?」


「まぁ、専門店だしね。あと、此処は書籍がメインだけど、まだ二階と三階があるからね」


「え?」


 圧倒されている私に苦笑している双樹に聞いてみれば、此処は氷山の一角に過ぎないと返されてしまいました。


「二階はグッズとCDとかBDとかで溢れてるよ。何せ専門店だからね」


 ――アニメグッズ? 文房具くらいしか思い付きません……。


 しかも私が知っているのは精々児童向けのアニメや特撮ヒーローの文具。たまに自動に受けた少年マンガ作品の人気に乗った文具。


「文具やカプセルトイとか食玩でしょうか」


「それも置いてあるよ。まぁ、行ってみようよ。わたしも買いたい物あるしさ」


 そうして二階へ向けて歩を進め、階段を上り切ると、目の前には大きなキャラクターのポップスタンド。壁一面に商品広告。


「あとは予約商品だね。これを持ってレジに持っていくと予約出来る」


 アイドルアニメやバンドやアイドルゲームのCD。声優さんや声優のグループのCD。アニソン歌手のCDやライブ映像。アニメのBD、etc、etc……。


「まぁ、レンタルショップとか中古店でも新品買えるんだけどね」


「専門店の限定版ですね。詩音もよく買ってますから、知ってはいましたが、これほどとは思いませんでした」


「音楽配信サービスで買えば歌だけ買えばシングルだと600円以内で買えるんだけどね」


「インストゥルメンタル無しですね」


「そうそう。わたしだって別になんでもかんでも限定版とかCDでは買わないよ。最オシだけ。資金は有限だからね。無限に錬成は出来ないし、空間から呼び出せるような財の蔵も保有してないからね。わたしが有するのはこのお財布と鬼斬り(バイト)で得たお給金がわたしの戦闘力……」


 そうしてお財布を確認する双樹。


「戦闘力15000。秘めたる力を限界まで引き出せば2000。余り手を出したくは無いけれどドーピングすればもう少し継戦能力は上がるけどねー」


 お財布、ポイントカード、キャッシュカードで引き出すと言うことですね。


「ドーピングは止めましょうか」


「そだねー」


 目に飛び込んできた情報量の多さに気圧され、目眩がした私の気を解そうとしてくれた事が解りました。


「もし、好い音楽があればシェアしませんか? 私も半分出しますから」


 そう言って私たちは中に入りました。一階でもそうでしたが、二階はCDなどがメインなだけあって、店内に流れる歌は様々で、一階は現在放送されてるアニメの主題歌がメインだったりしていましたが、二階はコーナーごとに様々な歌が小さく流されています。


 そして私は、絶句してしまいました。私が予想していたグッズとは全く違っていました。いえ、文具もあるのですが、それがキャラ別に複数存在していました。アニメのキービジュアルや全体的なイメージを表したものが私の想像したものでした。


 そこでようやく双樹の言っていた軍資金、継戦能力の意味に気付きました。


 ――これではあっという間に軍資金が底をついてしまうじゃないですか……。


 キーホルダーやぬいぐるみ、アクリルスタンドetc、etc……。


 双樹がアレコレと買いたい商品を籠に入れ、追加で別のキャラグッズを買うか吟味しています。


 ただ、その全てが美少女アイドルキャラだったりヒロインだったりしていますが……。


 私は彼女の後にはぐれないように付いていきます。


 私はとあるキャラクターの前で立ち止まります。


 ――これは詩音が今、ハマっているグランシャリオーではないですか?

 

 詩音に薦められて読んでいるところです。一巻を布教用だからと貰ってしまいました。


 私は最初、変身ヒロインで男の子のラッキースケベあり、ちょっとしたサービスシーンありのマンガだと難色を示してしまいました。


 まぁ、ちょっとしたサービスシーンやラッキースケベはあるのですが、女の子同士でした。所謂百合です。


 画力は然ることながら、問題はアクションシーン。まるで作者の実体験を基にしたような神がかった空間や視点の使い方。臨場感たっぷり迫力満点、鬼気迫る業魔との戦闘シーン。そこに先程述べた神がかった空間の使い方がされています。


 この“グラシャ”。双樹のお母様が描いているらしく、キャラクターのデザインが双樹に似ているのも納得です。


 戦闘シーンが大迫力なのも納得です。


 私は書き下ろし下敷きとクリアファイル、アクリルスタンドを買いました。


 三階はコスプレに必要なものやマンガを描いたりする道具などが置かれているみたいです。


 一階で最新巻のラノベを二人で買いました。


 お昼も少し回って、私たちはハンバーガーのチェーン店で食べることにしました。


 双樹はロースカツバーガー二つにポテト、メロンソーダ。私はスタンダードなハンバーガーにナゲットにウーロン茶。


 私たちは他愛もない話をしながら平和な時間を過ごしています。


 この、ありふれた日常の影で鬼と呼ばれる異形が蠢いているとは到底信じられず、目の前の美少女が刀を手に、その鬼と死闘を繰り広げているなんて……。


 ジッと双樹を見詰める。


「なに?」


 私の視線に気付いた双樹が、ロースカツバーガーを大口を開けて齧りまま顔を上げました。そのせいで可憐な唇の端っこに白いドロッとしたものが付いたままです。


「付いてますよ」


 そう言って、身を乗り出して白くドロッとしたものを拭う。


 その時、さり気なく唇から指でなぞります。


「テンキュ」


 そう言って微笑んだ双樹はメロンソーダのストローに口をつけて飲みます。その一瞬の隙を逃さず、彼女の唇から拭い取ったマヨネーズを自然を装い舐めました。


 ――少し恥ずかしく、はしたない気もしますが……。このくらいは許されますよね? 


 なにせ今日はデート、なのですから。


「ゴメンねー。なんかお腹すいててさ……」


 困った様に照れ笑いをする双樹。


「やはり、大変なのですか?」


「追い掛けたり、潜んだり、逃げ隠れしたり、基本的に身体を動かしてばかりだし、常に気を張らないといけないし、やるとなれば体力も精神力(霊力)もバカみたいに削られるからね。一回のバイトで詰めに詰めて仕上げまでするとなると、終わったあとは最低3日は休みたい」


「そんなに……ですか……」


「そんなに、だよ。まぁ判断を見誤れば3日どころか永眠する羽目になるんだけどさ」


「笑えませんよ」


 力無く笑って冗談にしようとする双樹。


 彼女の身体には消えない傷があります。それはあの日に出来た傷痕。


「ところで話は変わるんだけどさ、今度、詩音たちも誘ってラブホいかない?」


 飲みかけていた烏龍茶を噴き出しそうになったではありませんか!!


「ゲホ、ゴボっ!? あ、貴女は突然何を言っているのですか!!」


「いや、ただ単に皆で遊んで騒いで泊まれるじゃん。ちょっと時間かかるバイトの時によく利用するよ?」


「いえ、お泊りで遊ぶなら他に施設もあるじゃないですか」


「チーちゃんたち今からバイトしてたら夏休み終わるよ? わたしが全額出しても良いけど、気にしちゃうでしょ?」


「それはそうなのですが……」


「だからの提案。遊びとか買いたいものに軍資金は回したいじゃん」


「それは、そうなのですが……」


「じゃあ他のプランを考えるかぁ」


「そうしてくださると助かります。すみません」


「良いって、なんとな~く軽いノリで提案しただけなんだから気にしないで良いってば」


「ですが、遊ぶのは賛成です」


 二人にリンクでメッセージを送り、後日、詩音と紗奈を交えて計画を立てましょう。そう決まった。


 そうして、私たちのデートは終わりました。


 

 夕食を頂き、お風呂も頂き、あとは眠るだけ。  


 ――恋だの愛だのと、思っていましたが……。


 一目で惹かれた。魅せられた。出逢って一週間ほど。


 ――しかも同性の方を想うとは……。しかも、あのようなことまで……。彼女に美味しいと言われる料理に嫉妬するなど……。


 普通の治療では間に合わないほどの重症。それを治癒させたのは生存本能。それが彼女の命を此の世に繋ぎ止めた。人成らざる者として。彼女は人から成った鬼。吸血姫。


 ――私の血はどうなのでしょう。創作物では、途轍もない快感と悦楽を得られるとありますが……。


 そんなことを寝る前に妄想してしまったせいなのかはわかりませんが、いえ、彼女のラブホ発言もあるでしょうが、大変、淫らで耽美な夢を見てしまいました。


 思い出していたしてしまった私を誰が責められると言うのでしょうか。

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