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寿ぎ

 授業が終わって詩音が振り返っていった。


「『月下氷人』で検索して調べたけれど、双樹、貴女あの二人に何をやっているのよ」


「調べたならそのままだけど?」


 次の言葉は大きな音に掻き消された。


「詩音!!」


「千尋!!」


 ドアを勢いよく開け放ち、何かを決意したような必死の形相で入ってきたのは氷鏡と妻夫木だった。


「な、何よ」


「は、はい!?」


 氷鏡たちの大声に気圧されて、立ち上がり何があっても直ぐに退ける体勢になっている。


「ゴメン!!」


「すまん!!」


 勢いよく頭を二人揃って下げて謝罪の言葉を告げた。


「俺たちは気付いてしまったんだ!!」


「真実の愛ってやつを!! だから詩音、翔真のことは諦めてくれっ!!」


「千尋、許してほしい。一誠は誰にも渡したくないんだ!!」


 氷鏡と妻夫木の愛の告白に教室が驚きの声で爆発した。


「「は?」」


 そんな中、チベットスナギツネのようなスン、とした表情で白けた声を詩音と千尋が溢した。


「私たちが何故か振られたみたいになってるけど、私別に氷鏡に興味ないし、もちろん異性としても興味も無いって前から言ってるじゃない」


「私も同じで以前から言っているではないですか。妻夫木さんに魅力を一つも感じません、と。一度たりとも意識したことなんてありません。お二方のお好きな様になさったら良いではないですか? 御祝い申し上げます。末永くお幸せに」


「そうだったなサンキュ!! 詩音!!」


「ありがとう!! 千尋、俺たちを祝福してくれて」


 手を恋人繋ぎをして見詰め合い、照れ笑いをする氷鏡と妻夫木。


「やったじゃんふたりとも!! なかなかいないよ〜。運命の赤い糸で結ばれている人が近くにいるってさ! マジ最高じゃん!!」


 わたしは盛大に祝福する。


「で、ふたりともいつ気付いたん? お互いがパーフェクトディスティニーマキシマムハーモニーソウルメイトだって!!」


「ああ、オレたちがPDMHSMだって気付いたのはさっき、倒れそうになった時、翔真が支えてくれた時、やっぱイケメンだなってな。頼りになるって改めて思ったら胸が熱くなってトキメイちまったら、止まらなかったんだ。オレ、翔真のことをダチとか心友って誤魔化して気付かないふりしてたけど、恋愛対象として好きだったんだって、さ」


 へへっ、と照れ笑いする妻夫木。


「俺も同じだった。一誠の腕に支えられた時、逞しく男らしく頼りがいがあるなって。その、詩音や千尋みたいな女の子にはない、強さとか頼もしさって言うのかな。それに気付いたんだ。そしたら視野が開けて開放感で、俺の視線の先には何時も一誠がいて、挫けそうな俺を励ましたり、常に味方でいてくれた。親友や仲間じゃ、もう誤魔化せなかった。もう我慢なんてできなかった。誰にも渡したく無いって思った」


 真顔で惚気ける氷鏡。


「へー。カッコいいじゃん。それでそれで、どっちから告白したん?」


 また顔を見合わせて微笑み合う。


「「同時に告白したんだ」」


「やったじゃん!! あ! そうだ! わたし良いもの持ってるよ!!」


 カバンから取り出したるは、手作りパウンドケーキ!! お昼のオヤツ用!!


「ウェディングケーキとか誓いの盃じゃないけどさ! これ半分に割って、互いに食べさせ合えばPDMHS(パワー)溜まってもっと絆が深くなりそうじゃん!!」


「うお!! マジか!! 翔真やろうぜ!!」


「そうだな一誠!! ありがとう藤咲さん。俺たちを祝福して、お昼のオヤツまで!!」


「泣くなよ翔真……。サンキュ藤咲」


「スマフォ貸して写真に残してあげるからさ!!」


 パウンドケーキを割り、腕を絡ませ食べさせ合う二人。


「はい!! みんなも二人が長年の想いに気付いて結ばれた幸せに拍手!!」


 わたしは写真を取りながらクラスメイトを煽る。


 怒涛の展開に置き去りにされたクラスメイトたち。わたしの陽キャ的煽りにやけくそ気味に祝福の言葉と拍手を贈る。


 ――はぁ~~ダル……。


 収まるところに事を収め終えた瞬間、急激にテンションが下がって萎えた。


 ――わたしのオヤツ……。

【パーフェクトディスティニーマキシマムハーモニーソウル】―― 真実の想いに気付き、二人の想いが重なり響き合い奏で合う鼓動が生み出した新たな絆の力。



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