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不協和音Ⅱ+金髪美少女襲来!!






「お、俺たちは誓いあったじゃないか!! セイヴァーズは永遠だって!! なぁっ! そうだろう!!」


「諦めなよ。昔とは違うんだよみんな」


 私に詰め寄る氷鏡との間に身体を滑り込ませた紗奈は、強く握り込んだ拳を解いて優しく包んで、私が氷鏡を殴らないように、悪くならないように守ってくれる。


「ま、ちょ待てよ! 詩音! 約束を破るのが失礼で非常識なら、先に約束していたオレたちとの約束をちゃんと守れよな!! オレたちに失礼だろ!!」


 せっかく紗奈が用意してくれた引き際を彼らは不意にした。


「あーっ!! もうっ!! ウッザイわねっ!! 貴方たちと付き合いたく無いって言ってるのが解らないのかしら!! これでも解らないのなら一回死んで人生一から出直して来なさい!! それでも解かろうとしないなら、解らないならそのまま思い出の中で死んでろっ!!」


「へぶらっ!?」


 私が溜め込んでいた怒りを妻夫木に叩き込んだその瞬間、クラスの空気が凍りついた。


 いくつかの机と椅子を薙ぎ倒しながら倒れた妻夫木は目を回している。


 陰キャでおとなしい性格とか、ダウナーと言われている私が手打ちの打拳ではなく、腰の入った鋭い左フックを決めたことに、氷鏡やクラスメイトだけではなく千尋や紗奈までが硬直している。


「貴方方は私が見た中でも一、ニを争うほど最悪最低な殿方ですね!! 二度と話しかけないで下さい!!」


「本当、信じらんない!! サイアク!! 二度と近付かないで、むしろ顔みせんなっ!! クズ野郎!!」


 私の肩を抱いて千尋と紗奈が教室から出て、保健室で休むことを提案してくれた。教室から一分一秒でも早く立ち去りたかった私は二人の気遣いに感謝する。


「「「あっ!!」」」


 そこに立っていた人物を見て漸く気付いた。

 朝のホームルームが既に始まっていたことに。


「言いたいことを全部言えたか?」


「は、はい……」


 ドアの前に立って私たちの成り行きを見ていたのは、担任の菊地 静子女史。愛称はシズ先生、しーちゃん先生、しずっち。お菊先生、お菊さん。


「そうか。基本的に私はお前たち生徒に委ねていた。二人のご両親を呼び出したが、氷鏡に関しては当人同士の問題だと無関心だった。しかし、妻夫木のご両親は小中でも同じ理由で呼ぼれ、本人を交えて話し合ったがその場では反省し、理解もするが、それが済めば元の通りだと仰っていた」


 シズ先生に促されて階段の踊り場――人目につかない場所に移動しての最初の言葉だった。


「私はな。虐めがない、などと自分の評価可愛さに隠蔽しようとは思っていないし、虐めがないとは言わんし、クラスカーストも否定はしない。程度差の問題はあるからな。私はお前たちのことに詳しく無い。観ているつもりでも、一人ひとりはどうしても浅くなる。だから、夏休みまでに何も変わらなければ雪城と雪城のご両親にも来てもらって話し合いの場を設けるつもりだった」


「そう……だったんですね」


「先生。詩音は……」


「妻夫木を殴ったことか?」


「はい」


「殴ったことはいけなかった。手を出したら負けだ。だが、咎めるつもりもないし、誰にも咎めさせない。問題になるなら、それを潰す。必ずだ」


 その強い言葉に驚きを隠せない。

 雇われて学校組織、体制に隷属している教師が上に逆らうと言ったのだから。


「お願いします」


 先生は深く強く頷く。


「さて、出てこい。先に紹介する」


「ハロハロ〜。今日から同じクラスになった藤咲 双樹。藤の花が咲き誇るの藤と咲で藤咲。沙羅双樹の花の色盛者必衰の理を表すで有名な沙羅双樹の双樹。まぁ、逆に粋がってる奴を滅ぼす、とか下剋上とかね。そんな感じ」


 トゥクン――


 ――え? なに。今のトゥンクって……。


「バカ、それは夏椿だ。日本に本物の沙羅双樹の木はなく、代わりに夏椿を沙羅双樹に見立てたと知っていて私の生徒に嘘を教えるな」


「はーい。さっきのは、たいていそれを言われるから言っただけ。本気にしないで。沙羅双樹に花言葉は設定されてはいないんだ。だから花言葉が由来でも無いなぁ。本物の沙羅双樹の花は星形の小さな花が密集して咲いてるんだ」


「花言葉ではなく、花を見て心が動いたから、ご両親は藤咲にその花の様になって欲しかったからじゃないのか?」


「……自然の美しさに魅せられ心が惹かれたからでしょう。それが夏椿であっても……、本物であっても、その心は嘘ではないのだから。私は雪城 詩音よ。よろしく」


「きっとそうですよ。私は南條 千尋よろしくお願いします」


「そうそう。愛娘に物騒な由来で名付けるって言うのよ。まったく。あたしは有馬 紗奈。よろしくね」


 先生との話も自己紹介も終わって、私たちは当初の目的である保健室へ。先生と藤咲さんは教室へ。


「メッチャ綺麗だった」


「ええ。そうですねですが、一つ一つのパーツは可憐でしたよ」


「バニラのいい匂いがし無かった?」


「したした。甘めで重いはずだけど、柔らかでさり気ない感じだった」


 賛否が別れる、むしろ甘ったるい匂いが嫌いという意見が多いであろうバニラの匂いを上品に付けていた。


 手首や顔周りはあまりオススメはしない場所だ。食事の匂いを邪魔をするし、周りにも不快感を与えてしまう。


 空中にワンプッシュ。ミストの中を潜るとか、軽く浴びるとか。後は内腿、膝裏とか顔から遠い位置。


 そんなことより――


 ――ナチュラルプラチナブロンドの美少女来たーーっ!! 氷鏡と妻夫木の所為でドン底だったテンションがあかってきたぁーーっ!! 足なっが!! 顔ちっちゃ!! 目も透き通るような蒼だし!! 胸部装甲は超弩級戦艦並だし!! 羨ましい!! ハーフ? クオーター? マジでファンタジーゲームから飛び出して来たみたい!! フィギュアなら絶対飾る用に保管用、保管用のための保管用まで買うね!!


 内心は私のテンションは限界突破していた。


            : 

            :

             

 一方、詩音たちが出て行った教室では――


「マジであいつらヤバいだろ。あんだけ拒否られてんのによ」


「最初チョーイケメンと同じクラス、ラッキーとか思ってたけど中身が残念なガキじゃん。ないわー」


「熱苦しいのマジムリ。一人どっか行ってやってろっつーの」


「俺さぁ、あいつらと同中なんだけどさ、雪城虐めてた黒幕って氷鏡なんだぜ?」


「え? マジか!?」


「そうそう。自分より弱い奴とか弱み握った奴に虐めさせて、自分が救い出して惚れさせる計画だったんだってよ」


「それマ? それがマジなら激ヤバじゃん」


「マッチポンプかよ。自演乙ってやつ?」


「男としてゲスで、人間としてクズって終わってんじゃん」


「しかもよぉ」


「まだあんのかよ!!」


「あいつら、ストーカーまでしてたんだぜ」


「あ、それ知ってる。氷鏡なんて幼馴染みだとか言って家まで行って、それがしつこいから雪城の両親から絶縁されて拒否られたんだ。妻夫木も妻夫木で南條の家の近くを休日とか彷徨いてたし」


「完全に犯罪者じゃん!! 盗撮とかしてそー」


「いや、それがさぁ、アイツの親父、弁護士だから何かあってももみ消せるし、和解にだって持ち込めるからさ何をしても平気だったみたいだぜ」


 ヒソヒソ話が波紋が広がるように広がっていく。


「な、何なんだ……。みんな何を言ってるんだ!! 俺は何も間違ってなんかない!! 間違ってない!! だってそうたろ!! 俺は間違わない男。パーフェクトハーモニーマスターなんだぞ!!」


「ストーカーみたいな卑劣なことをオレはしねぇ!! オレは何時でも何処でも、正々堂々と千尋に告って来たんだ!! マッソウルに誓って嘘は言ってねぇ!!」


 自己弁護を騒ぎ立てる二人に、侮蔑と憐憫の目を向けるクラスメイトたち。


 ――違う! 違う違う違う違う違う違う違うッ!! こんなのは俺の世界じゃない!! こんな世界知らない!! 何で元に戻らないんだ!! 何で何で何で何でナンデナンダッ!!


 氷鏡の特殊能力、与えられた加護である【御都合理解】と【絶対消去】。そのどちらも消去されている。その為、逃れられない現実が否応なしに氷鏡に迫り、妄想と現実の板挟みにされ、彼を挟み押し潰そうとしていた。


 ――好きだって気持ちを伝えて、一度駄目でも何度もアタックすればオッケーを貰えるんじゃねえのかよ!?


 この人私が居ないと駄目みたい――何ていう武士の情け結婚を狙っている妻夫木は、それがストーカー行為だという事に気が付いていなかった。

【御都合理解】――自分の聞きたいように聞き、自分にとって好ましいように解釈して理解してしまう能力。


【絶対消去】――都合の悪いことは記憶から抹消されていた。


さらに祖父が守護し、強化していた。それは周囲にも影響を及ぼしていた。それは洗脳と言って過言では無かったが、双樹(総司)が守護霊である氷鏡翔真の祖父を斬った事で周囲への影響は解かれた。



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[一言] >さらに祖父が守護し、強化していた。それは周囲にも影響を及ぼしていた。それは洗脳と言って過言では無かったが、双樹(総司)が守護霊である氷鏡翔真の祖父を斬った事で周囲への影響は解かれた。  翔…
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