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デイケアの何人か(続編)

作者: 吉見健作

ーーデイケアの何人かー―


(去年秋に発表した「デイケアの二人」の続編です。)

挿絵(By みてみん)

その後のデイケアはどうなったか、だって?

もちろんいつも通りさ。いつも通りなのが一番幸せって事だ。

例の二人、京子とヒロシも相変わらず通ってる。

京「あれ、2階の玄関開けっ放しよ。」

そうだ、京子よりもヒロシの方が2つ先輩なのに、もうタメ口で話す仲になっちゃってた。

ヒ「あ、これはウィルス菌対策だよ。こうやって風通しをよくしてりゃ、菌が固まらなくて済むのさ。」

京「しかし、しつこいわね、ウィルス!風と共に去りぬすればいいのに!」

ヒ「よっし、僕が神様に祈ろう!」

京「ええ?」

ヒ「アーメン、、南無阿弥陀仏、南妙法蓮華経、菩提僧莎訶般若心経~~チーン。。」

京「何、その宗教?どこの宗派よ?」

ヒ「いやあ、一神教よりも多神教にしたくて、、その、、」

詰所から田村さんが出迎える。

田「まあ、相変わらず仲がいいですね。」

京「ねえ、あの玄関の開けっ放しですけど、いつ解除されるんですか?」

田「それは分りませんね。政府にもわからないんじゃないですか?」

そうそう、岩沢さんは斉藤和義が好きだからね。今日も「君のナニが好きだ」について三吉さんに話してる。

挿絵(By みてみん)

三「こんな意味らしいですよ。(ギター、ジャンジャカジャン、歌う)

形あるものを僕は信じる。

君のBrestが好きだ~


まあ、こういったところですな。」

岩「ああ、なるほど、英語にしたんですね。」

すると、年長の吉川さんが来て

「おい、そんなんアメリカで歌うたら捕まるぞー。」

とても上機嫌そうだ。

岡さん「Youtubeだと、カリフォルニアが本部だから、削除されるでしょうね。」

吉「おらへんやろー、そんな言葉をわざわざ日本からアップするような輩は(笑)」

こっちのテーブルではヒロシと京子。

京「何か人少ないわねー。」

ヒ「仕方ないさ。自宅待機を余儀なくされてる人がいるからだよ。君や僕はまだここに来られるだけマシだ。」

京「そう云えばクリニックの先生もこの頃は白衣を着るようになったわ。前は普段着みたいだったのに。」

ヒ「村西さん、今日は人が少ない方ですか?」

村「火曜日が一番少ないみたいですよ。6-7人だったりしますから。」

ヒ「カラオケも駄目なんでしょ?」

村「しょーがないですよね。一般のカラオケルームも営業休止ですよ。まだうちは、30分一人制限で歌えるからいい方ですよ。」

そこに高木さんが通りかかった。彼女はいつも何か紙の書類を持参している。

京「ねえ、高木さん、こんな風に雁字搦めになって来ると、閉塞感が増しますよ。どうしたらいいですか?」

高「そうですねえ。でもこれから西田公園に散歩するから、春の樹々を見ることができますよ。そういう植物のそばを歩くだけでもアルファ―派が出てリラックスできますよ。」

そして、5~6人で西田公園に行くことになった。国道沿いをぞろぞろと歩いた。

ヒロシ、京子、吉川さん、岡さん、三吉さん、高木さん、田村さんの面々だ。

ヒロシが早速口を開いた。

「僕が飲んでる眠剤、ちょっと効きすぎるんです。」

田「寝過ごすって事ですか?」

ヒ「いえ、それはそれ程でもないんです。12時前に寝て、8時過ぎには起きてます。」

岡「何の薬を飲んでるの?」

ヒ「えとねー、フルト・・・チアムとかいう、別名サイレースですわ。」

岡「あ、フルニトラゼパムだね。情報では、飲み慣れてくるとあまり効かないそうだよ。」

吉川「あ、あれ結構効くで。あんなん飲んでから、外出したりネットやったりしたら、えらいこっちゃで!」

三吉「おー、そうそう。まず、フラフラになるから、特に深夜自転車で出かけると危ない。ネットも翌朝に見たら『あれ、こんな事書いたかな?』て驚くよ。」

岡「なんか他の薬でもそういうのがあるみたい。症状としては、似通ったとこがあるよ。」

京「私なんか、ドクターがセロクエル(クエチアピン)4錠飲んでるから眠剤はいらないよ、と言われました。」

高「そういうお薬の調合がドクターの判断に委ねられるとこありますよね。この薬と一緒か、それとも他のお薬と合わせるのがいいのか?難しいところでしょうね。」

吉「ところでヒロシ君らは、うまくいってるの?」

ヒ「いやあ、、照れるじゃないですか(笑)」

京「でもね、今ガーデンズが閉まってるでしょ。だから、ウインドウショッピングできる場所がないんです。ましてや大阪まで出るのも控えなきゃならないし。」

三「でも、こうやって一緒に近くの公園にデートできるだけでも幸運やで。他5名の護衛付っちゅうわけやー!(笑)」

しばらく歩いてると、すぐに西田公園に到着した。何か鳥の声が聞こえる。長閑だ。

一行はベンチに腰をかけた。

京「私、最近エビリファイっていう薬を処方されたんです。あれ効くんですか?」

田「抗鬱の効果があるそうですよ。あまり気分が沈まないように調節してくれるみたい。」

三「僕は、珍しいケースらしいけど、副作用で歩行困難になりました。自転車を歩いて押せないくらい。電車に乗って立ってたら、向こうから人が来て、席を譲ってもらいました。」

吉「今はそんなふうにはみえないね。治ったの?」

三「そうなんですよ。エビリファイやめたら途端に治りました。でも、そういうケースは稀だそうです。」

ヒ「高木さん、炭酸リチウム(リーマス)は、双極性にのみ効くんですか?」

高「基本的に抗躁剤ですよね。抗うつ剤と飲んで、両方の症状に効くみたいです。いわば両方に効いてニュートラル(中間点)を維持することができるようです。」

岡「僕も、去年調子が出なくて、リーマスを一錠増やしました。それでかなり改善しましたよ。」

京「うちの兄がね、メンタルな病気は薬物治療では治らない、カウンセリングやヨガなどの自然治療の方が治るっていうんですが如何なんですか?」

吉「うーん、でもみんな何らかのお薬を飲んでこうやって生活できてるんやから、それは否定でけへんよ。」

三「そういやあ、僕のロシア人の友達も、ヨガとか東洋医学の方が効果があるってメールに書いてたなあ。」

ヒ「でも東洋医学は、例えばあんまとか灸とか、整体とか、正直効いてるのか効いてないのか分らない時があります。」

田「鳥のさえずりがいいですねー」

高「ですねー。」

岡「僕は家にいる時に音楽に飽きるとユーチューブで自然音を流してるんですよ。」

吉「それは効果あるみたいよ。波の音とか、砂浜、小川の流れ、あ、落雷の音もリラックス効果があるんだって。」

三「僕も動画作る時に自然音をバックに入れてますよー。」

高・田「うぉーっ、、すごい!」

ヒ「さあ、そろそろコーヒー飲みに行きたくなったな。双葉筋のFeliz Gateにでも行くか?」

京「待ってよ。デイケア戻って終りの会に出なきゃダメでしょ?」

田「あ、そういえば、あの辺の店来月6日あたりまで、全部休みですよ。」

ヒ「仕方ない、コンビニ珈琲で済ますか!?」

ハハハハハハハハ(笑)

こうしてみると、確かに世界的な危機が迫っているかもしれないが、それを笑顔でふっ飛ばせば、この困難もたやすく乗り越えられるんじゃないかな?とヒロシと京子は思うのであった。この二人も、デイケアの後、コンビニ珈琲をストローで飲みながら、国道を東へと去った。

挿絵(By みてみん)

おしまい

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