『追放者達』、依頼を受ける
今後の展開的に章タイトルが使いにくくなりそうだったので変更致しました
「……さて、取り敢えずこうして掲示板の前まで来た訳だけど、何を受けようか……」
アレスの呟きの通りに、四人並んで掲示板を眺める。
普段であれば、つい先程貼り出されたばかりの依頼書を求め、冒険者達が押し寄せて来る時間帯であるのだが、何故か今日だけはそこまでの混雑にはならず、こうして四人で固まって眺めるだけでなく、依頼の選り好みも出来ていた。
「……うぅむ、流石に、貼り出されたばかりで数が多いな……。
多少選択肢を絞らねば、決められるモノも決められぬ。それでは、割りの良い依頼を先取りされてしまう事になるぞ?」
「……そう、ですねぇ……。
幸いにして、私とガリアン様はCランク。故に、この『追放者達』としても、私達が受けてくればBランクの依頼までは受けられますが、初回からソレは止めておきましょう」
「……まぁ、そうね。手っ取り早く稼ぐのなら、Bランクの依頼から選ぶべきなんだろうけど、そうするとギルド側からの心証が悪くなる、って良く聞くからねぇ……」
「あぁ、アレな。新人の低ランクパーティーが、ベテランに頼んで一時的に加入して貰って、高ランクの依頼を受けてランクを上げようとするってヤツ。
確かに手早くはあるんだろうけど、ソレだと実力が付かないからなぁ……」
ギルドの依頼は、自身の持つ個人ランクの一つ上か、もしくは所属するパーティーのランクと同じモノまで、と決まっている。
最低ランク相当の実力しかなくとも、徒党を組めばソレなりの戦力になるから、と言うのが身も蓋も無い理由なのだが、実際に複数人で組んで行動する方が効率的かつ確実的に依頼を達成出来る傾向が強い為に、敢えて文句を口にする者は誰もいない。
しかし、裏技的にその制度を利用し、既に高ランクに在る冒険者を一時的にパーティーへと加入させ、高ランクの依頼を受けると言う手段も存在はしている。
実際、ギルドとしても、教導的にベテランが一時的にパーティーへと加入する事も在る為に、その裏技を見逃している節は確かに在る。
が、あまり露骨にやり過ぎれば、流石にギルドとしてもランクを上げなくしたり、内部評価を著しく下げざるを得なくなる。
そうなってしまうと、一部のギルドからの信頼が厚いパーティーにのみ回される依頼を受けられなくなってしまうので、あまり好んでやるベテランは多くない。
実際、アレス達『追放者達』も、ガリアンとセレンが居る以上、Eランクでしかないにも関わらず、受けようと思えばBランクの依頼までは受けられるのだ。
だが、そう言う側面が在る為に、受けるのは止めておこうか、と言う結論に至った、と言う訳だったりする。
「取り敢えず、皆の実際の動きだとかも見ておきたいし、Cランクの実力者二人も居るのにEランクの依頼は怠すぎるから、妥当な処としてDランクかCランクのヤツでも受けてみる?
丁度、日帰り出来そうな場所でDランクの依頼『豚鬼の群れの討伐』が在るけど、これにしておこうか?」
「……ふむ、どれどれ?
成る程、まぁ、妥当であろうな。適度に強く、それでいて近く、更に言えばソレなりに儲かる依頼である。なれば、断る理由は当方には無いな」
「私としましても、それで構いませんよ。豚鬼であれば、まだ私が扱える程度の攻撃系魔法でも倒せますから、丸っきり足手まといにはならずに済みますしね?」
「ふぅん?良いんじゃない?
アイツらなら、アタシでも一頭ずつならどうにでも出来るから、依頼状には書いてないけど上位種でも飛び出して来なければ大丈夫じゃない?ソレにこれ、報酬の方も固定じゃなくて倒した数で増えるみたいだから、アタシ達みたいなのにはうってつけのヤツじゃないの?良く見付けたわね?」
「まぁ、ほぼ偶然だけどね。でも、一頭につき銀貨二枚なら、割りと破格に近いんじゃないの?」
「普通なら、相場下限ギリギリで銀貨一枚か、もしくは高めで銀貨一枚と大銅貨五枚、と言った処であろうな。何か在った、と見るべきであろうか……?」
「大銅貨五枚も高くなるのでしたら、ノルマとして一人二頭ずつでも狩っておけば、今日明日の食事には困らないですね♪
……しかし、緊急性の高い依頼はソレだけで相場よりも報酬が高くなる傾向が在りますが、これもそう言う事なのでしょうか……?」
「さあ?案外と、増えすぎたから手っ取り早く討伐したかった、とかじゃないの?
あと、一応言っておくと、普通は大銅貨一枚も在れば一食賄えるけど、昨日の会計で幾ら飛んだか覚えて無い訳?どっかの誰かさんが、バカみたいにバカ高い酒をカパカパ空けてたからだったハズなんですけどぉ???」
「はて?覚えておりませんねぇ……♪」
「こいつ……!?」
「ハイハイ、喧嘩はそこまで。取り敢えず、受けるだけ受けに行くぞー」
掲示板から目当ての依頼書を剥ぎ取り、ついでに皆のギルドカードとつい先程渡されたプレートを預かって受付へと向かって行く。
幸いな事に、掲示板の付近と同じく受付の周囲もこの時間帯にしては空いており、比較的長く並ぶ事もなく順番が回ってくる。
「……では、次の方……おや?貴方は、先程の……?
パーティーを結成したばかりで、もう依頼に行くのですか?」
「えぇ、その予定です。もっとも、『勤勉な冒険者』としては、極一般的な行動でしょう?」
「……仰る通りかと。もっとも、その『勤勉な冒険者』がどれだけ居るのか、と言われますと、ギルドの職員と致しましては耳が痛い限りですが……。
……失礼。話が逸れました。では、ご用件を承ります。依頼の受理でよろしいでしょうか?」
「はい、そうなります。これを、パーティー単位での受理でお願いします。人数分のカードと、パーティータグはこちらに」
「了解致しました。では、拝見させて頂きます。
…………はい、確認出来ました。必要なモノは全て揃っておりますし、依頼のランクも規定上問題は在りません。ギルドとしましては、もう少し低いランクの依頼を消化して頂きたいとは思いますが、モラル的にも大丈夫な範囲内ですので問題無くお受けして頂けます」
「じゃあ、受理の方をお願いします。
あ、あと、この依頼、なんだか妙に報酬額が高い気がするんですけど、何か在ったんですか?」
「少々お待ち下さい。
…………どうやら、昨日の夕方に、依頼先にもなっている南の街道にて馬車が豚鬼に襲われる、と言う出来事が在ったみたいですね。
幸いにも、怪我人程度で済んだ様子ですが、目撃者の証言によりますと中々の規模の群れであったと言うだけでなく、場所が場所なだけに速やかな排除を期待されての報酬設定かと思われます。
事が事だけに、ギルドへの貢献度も高く設定されていますので、かなり狙い目な依頼だったみたいです。
運が良かった、と言うのは少々不謹慎ですが、中々『当り』の依頼を選ばれたと思われてもよろしいかと」
「分かりました。じゃあ、急いだ方が良さそうですね。早速、仲間達と行ってきます!」
「……豚鬼の依頼は基本的にDランクとは言え未帰還・失敗率の高い依頼となります。上位の方がいらっしゃるので大丈夫とは思いますが、どうかお気をつけて……」
「えぇ、それはもちろん。無茶はしませんし、無理なら逃げて来ますよ。何せ、もう英雄は目指していませんからね」
そう言い残し、受領の印が押された依頼書を手に持ったアレスは受付から離れ、ロビーで待っていた他の面々の処へと戻って行く。
そして、手早く得てきた情報を全員へと伝達し、各自で必要なモノを調達してから最短でギルドを出立し、依頼先である南の街道に繋がる門へと向かって行くのであった。
次回、戦闘描写在り
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