四人、パーティーを結成する
今作初の評価ポイントが付きました!
何方か存じ上げませんが有難うございますm(_ _)m
お礼にもう一本上げておきますね(^^)
アレス、ガリアン、セレン、タチアナの四人が『眠る三頭犬』にて会合を果たした次の日。
彼らの姿は、昨日と同じくアルカンターラに在る冒険者ギルド、その本部のロビーに存在していた。
まだ早朝と呼んでも間違いでは無い時間帯である事もあってロビーに在る人影は疎らであり、その人影も眠そうに目を瞬かせているギルドの職員か、もしくはロビーに併設されている酒場で酔い潰れている冒険者か、または昨晩から未だに呑み続けている蟒蛇達のみであった。
しかし、それもある意味当然の事。
何せ、彼らがこうして集まった時間が、彼ら冒険者の常識としては『早すぎた』からだ。
そもそもの話として、冒険者の朝は他の職業と比べても割合と早い方である。
その理由としては、場所によって異なりはするが、基本的にギルド職員が依頼を掲示板に貼り出すのは朝だと相場が決まっているからだ。
特に職務規約で決まっている、と言う訳ではないのだが、大概のギルド支部や本支部では、余程の緊急性の高い依頼で無い限りは、依頼の内容を纏めた用紙を前の終業までに用意しておき、次の日の朝に掲示板へと貼り出しておく、と言う形にしている。
その方が、手間が掛からないのだろうが、そうしている理由の一部として下手をすれば荒くれ者や無頼漢と変わらなくなってしまう冒険者達に、少しでも規則正しい生活を送らせる為、と言う噂が一部の界隈に流れているのだが、それが本当の話なのかは定かではない。
そんな訳で、本来の意味での賑わいを見せる時間帯よりも前に集まった彼らの周囲が静かであるのは、当然の事だと言えるだろう。
もっとも、彼らは彼らで、やらなければならない事を先に片付け、その後で依頼を受けよう、と言う腹積もりであるが為にこの様な時間帯に集まっていたのであって、別段朝に強いから、だとか、楽しみに過ぎて寝られなかったから、だとかの理由からでは無かったりする。
その証拠として、やや濃いめの肌色に黒髪黒目で整ってはいるものの、比較的どこにでも居そうな容姿と身長をしながら軽装鎧に長剣を腰に差しているアレスも
銀毛金眼で二足歩行している狼の姿をした、二メルト(約二m)近くになる程の長身かつ逆三角形の体格を鎧に押し込んで盾を背負っているガリアンも
白い肌に金髪碧眼で美麗な容姿に豊満な胸、そして種族特性として細く長く伸びた耳が特徴的でメイスとしての機能も兼ね備えた長杖を携えているセレンも
濃い褐色の肌と側頭部から生えた山羊の様な角が特徴で、勝ち気そうなつり目と活発的な気性を感じさせる容姿をした、少女の様にも見える短杖と短剣を腰に差しているタチアナも
皆一様に欠伸を噛み殺し、目尻に浮かんだ涙を拭ったり、時折船を漕いでは意識を取り戻したりしていた。
中には、ガリアンの様に顔をしかめて額を押さえている者もおり、昨晩行っていた事と照らし合わせれば何故その様な事をしているのかは、わざわざ説明しなくても理解して貰える事だろう。多分。
そんな、中々に緩んだ空気の中、今回の集いの首謀者である、との自覚が在ったアレスが、取り敢えず時間を無駄にするよりは、と言う事で声を出す。
「取り敢えず、昨日の約束を守って集まってくれてありがとう。改めて自己紹介しておくけど、斥候兼遊撃担当になると思うアレスだ。どうぞよろしく」
「……うむ、では、当方も一応やっておくとしようか。当方は盾役のガリアン。どんな攻撃も、当方の後ろには通さぬつもりである故に、安心して守られて欲しい。
……それと、誰か水は持っておらぬか?あと、あまり大きな声は出さないで貰えるとありがたい……」
「はい、どうぞ。後で気分の良くなる魔法を掛けて差し上げますので、どうか暫く我慢をお願い致します。
では、私の番ですね。私は、回復役を担当するセレンと申します。一応、『神の慈悲による蘇生』は使えますが、あまり乱用しますと魂を損ねますし、何より私が大変なので頑張って亡くならない様に心掛けて下さいね?」
「……いやいや、それって、乱用しようと思えば出来る、って事じゃないの?ふぁ~っ…………。
っと、じゃあ、アタシで最後ね?取り敢えず、支援役を勤める事になると思うタチアナよ。一応、短剣も『短剣豪術』までは上げてるけど、あんまり当てにはしないでくれると有難いわね。
……それと、あまり朝には、強く……ないから…………次からは、もう少し、遅い集合に……して………………Zzzzz」
思ったよりも酒が進んでしまったからか案の定二日酔いを発症しているガリアンを、ソレ以上に呑んでいたハズなのにケロリとした顔をしてガリアンを看護するセレン。
既に酒は残っていない様子だが、それでも体質的に朝に極端に弱いのか座ったまま夢の世界へと旅立とうとし、自らの身体の揺れやアレスによって揺り起こされる事で覚醒する、と言う事を繰り返しているタチアナ。
そんな、ある種の喜劇の様な様相を呈している四人だが、ここには必要な事が在ったが為に来ているので取り敢えずその用事を終えるべく再度アレスが声を掛ける。
「……取り敢えず、こうして集まったくれたって事は、昨日提案した『パーティーを組もう』って提案は飲んでくれたって認識で話を進めるし、この後連携だとか各自の能力だとかを見る為に何か依頼を受けるつもりだけど、まずは『パーティー名』とリーダーを決めて『パーティー申請』を提出するぞ!
で、モノは、相談なんだけど、誰かリーダーへの立候補と良い感じのパーティー名の案が在る人いる?」
そんな彼からの提言に、他の三人は
「……ふむ?パーティー名は慎重に決めねばならぬとしても、リーダーはアレスで良いのではないか?」
「えぇ、そうですね。私達の看板ともなるパーティー名ですから、下手なモノは付けられませんからね。ですが、リーダーの方はアレス様でよろしいのではないでしょうか?」
「まぁ、確かにアタシも変な名前のパーティーには所属したくないから、その辺は慎重に決めましょうか。リーダーの方は、言い出しっぺのアレスで良いんじゃないの?パーティー組もうって言い出したのもアレスだし」
と、何故か口を揃えてアレスをリーダーへと推して来た。
その事に、慌てて口を挟もうとするアレスだったが、年上で経験が豊富であり落ち着きの在るガリアンやセレンからのやんわりとした説得と、タチアナによる
「どうせ誰がやっても以前のパーティーみたいにはならないでしょう?」
との一言により、渋々ながらも受け入れる方針にて考えを固める。
とは言え、そうしてこれから結成するパーティーのリーダーとしての地位が確約された事により、パーティーを組もう、と言い出した時から考えてはいた案を口にする事が出来る様になったのだから、まぁこれはコレで別に良いか、と思い直すのであった。
「……じゃあ、リーダーとして提案させて貰うけど、良いよな?
俺達のパーティー名、それは――――」
「…………ふむ、まぁ、良いのではないか?意味合いを鑑みれば、洒落と皮肉が効いている。当方は別段構いはせぬよ」
「えぇ、私もソレで構いません。どのみち、私達の実力で自粛無しに活動すれば、否応なしに古巣の方にも情報が届くでしょう。その時に、どの様な反応を見せてくれるのか楽しみです♪」
「……うわぁお。聖女サマが思ったよりお腹真っ黒なんだけど……?
まぁ、アタシとしても、別段文句は無いよ。そこの真っ黒聖女サマの言う通りに、アタシ達の名前が通って、昔の連中の耳に入った時に、パーティー名からどうなったのかを推測してどんな顔をするのか、って言うのは、アタシも楽しみだからね!」
こうして、アレス達四人組は、後々世に名を轟かす?個々人が卓越した技能を保持する冒険者パーティーを結成する事になるのであった。
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