『追放者達』、問答を繰り広げる
取り敢えず、今回で長かったダンジョン編終わりになります
お楽しみ下さいませm(_ _)m
「…………え?ダンジョンマスター?ダンジョンマスターってあの、超高難易度のダンジョンで希に目撃される、最奥でボスを必死こいて倒した後に出てくる鬼畜存在として一部の界隈で有名な、一般的に『迷宮を産み出すモノ』と言われる、あのダンジョンマスター……?」
聞き齧った情報を元に、震える声と指先にて最初の発言者として問い掛けるアレス。
そんな彼へと、若干嫌そうな表情をしている様に見えるソイツが、律儀に返答をしてきた。
「…………なんか、凄い言われ様だけど、そのダンジョンマスターで合ってるんじゃないの?まぁ、それらの話を俺が直接聞いた訳じゃないから確約はしてやれないけど、ダンジョン産み出している、って点は間違ってないし。現にここだって、俺がダンジョンにしてジョシュア君をボスに据えたんだから、正解っちゃ正解だしね」
「……では、ダンジョンの機能で転移して来た、と言うのはどう言う事なのだ?このダンジョンのコアは、既に破壊している。
ダンジョン自体はコアが在って初めて成立する存在のハズであろう?
であれば、そもその機能を使って移動して来る、と言う事は出来ないのではないのか?」
「あぁ、それ?そっちは、君達の認識が根本から間違ってる、って話だよ。ダンジョンの機能を司る本体たる俺がその気になれば、俺本人が作り出したダンジョンであれば、例えそれがコアを破壊された残骸とは言え俺だけが転移してくる位は出来るからね。
まぁ、他の連中が作ったダンジョンに転移する、なんて離れ業は例えコアが残っていても出来るとは思えないけどね?」
「……なに……?」
「そもそもの話、君達はコアが魔力の様なエネルギー的なモノを発生させてソレをダンジョンへと巡らせて、ソレによって各種機能を維持している、とか思ってるんじゃないの?」
「……違うのです?」
アレスに続き、先の発言の中で気になった部分についての質問をしたガリアンと、その返答に対して合いの手を入れるナタリアだったが、どうやら彼女の発言は『問い掛け』としては認識されなかったらしく、特に言及される事無く会話は続いて行く。
「違う違う、全然違う。だって、ここみたいに後から発生したダンジョンって、そもそもの話としてコアからエネルギーを発生させている訳じゃないからね?俺達ダンジョンマスターが直接管理する大迷宮が作り出すエネルギーを受信し、ソレを作り出されたダンジョンに巡らせる為のモノ、ってだけだから、言うほど重要な存在ですら無いぞ?
作るだけなら、こうやって何時でも幾らでも作れるし。俺達ダンジョンマスターにとっちゃ、そこまで重要なモノって訳でもないからな」
「……ほ、本当に、何もない処から、あの時のアレとそっくりなモノが出てきたのです!?」
セリフと共に手のひらの上に、先程破壊したばかりのコアと同じ様な球体を作り出して見せるダンジョンマスター。
その際には、特に魔力の動き等は彼らに感知出来はしなかったので、アイテムボックスの類いで取り出した、と言う訳ではないと思われたので恐らくは本人の言うとおりに新しく作り出したのだろう。
そうしている内に、一人それまでの会話の内容を精査していたらしいヒギンズが、残された腕を掲げて問い掛ける意思を表現してから発言する。
「……じゃあ、さっきから『俺達』って言ってるけど、君みたいなダンジョンマスターってどの位居て、普段は何処に居るのか教えて貰えないかな?」
「…………アレ?もしかして、俺そんな風に言ってた?マジで!?」
「マジマジ。でも、その口振りだと、言うつもりの無かった情報だった、って感じなのかな?」
「…………あ~っ、クソッ!その通りだ!そこは、言うつもりも無かったし、突っ込ませるつもりも無かった部分だよ!
……はぁ、でも、聞かれちまった上に、質問されたんなら答えなきゃならない、か……まぁ、聞かせるつもりは無かったけど、聞かれて困る様な内容でもないし、別に良いか?
うん、良いって事にしておこう。それで、何が知りたいって?俺達ダンジョンマスターの数と、普段何処に居るのか、って話だったっけ?」
「……いや、確かに突っ込んだのはオジサンだけど、本当に教えてくれるつもりなのかい?適当にはぐらかされるか、もしくは惚けて煙に巻くつもりだと思ってたんだけど?」
「良いよ、別にそのくらいは。まぁ、突っ込ませるつもりは無かった程度には重要情報だけど、別に構わないよ。それはそれで、ね?
それで、俺達が何人いるか、だったよな?それは、君達が『最高難易度のダンジョン』って呼んでるダンジョンの数だけいるし、普段はそこに居る、って言えば分かるよな?」
「…………あぁ、それってもしかしなくても、最奥でダンジョンマスターが希に出てくる、って専らの噂の、鬼畜難易度を誇る十二のダンジョン、通称『ゾディアック』の事で良いのかな?」
「通称の方は俺達で流したヤツっぽいから、多分それで間違って無いんじゃないの?
ちなみに、俺のは入り口に髑髏と蟹が意匠として取り入れられたデザインになってるから、適当に探し出して挑戦してよ?そうでないと、面白くならないからね!」
「…………なはは、『死の坩堝』とも呼称されるアンデッドのみが出現する鬼畜難易度の大迷宮『アンクベス』に潜む、生と死を操るダンジョンマスター、ね……。
道理で、矢鱈とアンデッドばかり出てくる訳だよ……」
冷や汗を滝の様に流しながらそう呟くヒギンズ。
かつて若気の至りで突撃を仕掛けるも、そのあまりの難易度や相性の悪さも相まって、ボロボロにされて半泣きになりながら必死になって脱出して来た、と言う経験が在る以上、その様な反応を示したとしても仕方がないと言うべきだろう。
そんな彼の様子を気にかけながら、今度はタチアナが口を開く。
「……じゃあ、今度はアタシの番ね。アンタ達にとってダンジョンは大したモノじゃない。少なくとも、アタシ達にこうして潰されるのを必死こいて守りに来るより、アタシ達を生かして観察する方が良い、と考える程度には重要じゃないって事は分かったけど、じゃあなんでダンジョンなんて作ってる訳?
アンタが余計な事してくれたお陰で、アタシ達はこんな面倒な事する羽目になったんだけど?」
「ん?ああ、その事?
そう、だねぇ……俺達にとっては当たり前の事だから説明が難しいんだけど……あ!アレだ!君達で言う処の三大欲求に基づく行動に近いかな?」
「……え?ナニソレ?侵略とかじゃなくて??」
「いや?全く?
こうして作ったのだって、面白い人間が入って来ないかな?と思ってのヤツだから『暇潰し』の側面が強いし、ダンジョンの中に人間を誘い込むのは入ってきた連中が内部で使った魔力だとか生命力だとかを回収する為だから『食事』に該当するんじゃないの?
こうして作った場所になら俺と言う存在を移す事も出来るから、これは一種の『繁殖行動』とかにもなるんじゃないか?あとは……ダンジョンの中を覗いているのは娯楽としての『睡眠』とかに近しい感覚だと思うから、概要としては侵略と言うよりも生存の為の行動、かね?」
「……え、えぇ……?」
聞かれてから考えた、と言わんばかりの態度で返答するダンジョンマスターに対し、戸惑いの声を抑えられないタチアナ。
てっきり、人類の生存圏を切り取る為の橋頭堡か何かなのでは?と考えていただけに、返ってきた『趣味と暇潰しを兼ねた生存の為の装置』と言う答えに動揺を隠せずにいた。
しかし、そんな事は関係無い、と言わんばかりにタチアナから視線をずらし、未だに質問をしていないセレンとナタリアの方へと視線を向けて問い掛ける。
「……さて……取り敢えず、あとは君達二人だけだけど、何が知りたいのかな?今のところNGは出てないけど、聞くだけならなんでも聞いてよ。答えられるかは、質問次第だけどね?」
「……いえ、私からは特には。知りたかった事は、既に他の方が聞いてくださったので、気になる事はもう無いです。
欲しいものも特に無いですし、今は仲間の皆さんが居てくださる事で満たされておりますので、私は辞退させて頂きます」
「……えぇっと……ボ、ボクも質問は無いのです。
でも、何かくれると言うのなら、ボクの従魔達がもうこんなにひどい怪我をしないように、何か防具の類いでも貰えないのです?」
「……ふむ?じゃあ、そっちのエルフちゃんが辞退した分も君に上げようか。
具体的に言えば、君の従魔だって言うその子らを魔物にして強化して上げよう!と言っても、思考や心の類いまでは変化させないし、今の姿に戻れる様にもしてあげるから、それで良いかな?良いよね?」
「……え?良いのです?」
「良いの良いの。そんなに手間でも無いし、もうしちゃったし」
「………………えぇ!?!?」
慌てて振り返った彼女の視線の先では、キョトンとした表情をして首を傾げながらも、その体躯は確実に一回りも二回りも大きくなり、その上で寸前まで負っていたハズの負傷すら完治している様子の従魔達の姿が在った。
しかし、その事実に呆然としている彼女や、身体が痛くなくなったから、と言う事で他のメンバーの処へと近付いて行ったりするその様は、以前の彼らと相違は無く、同じ存在なのだと言う事を明確に表していた。
自らの顔を舐め、大きくなった身体を擦り付けて来る彼らの行動によって正気に返った彼らが慌てて振り返ると、そこには既にダンジョンマスターの姿は無く、立っていた場所に『バイバイ!また会おうね!』と書かれた紙片が残されているのみであったのだった。
「…………?これは……?
『いつか役に立つからおまけで上げる』?
……一体、いつの間に……?」
はたして最後のアレは一体……?
次回に閑話を挟んでから次章に移る予定です
お楽しみに(^^)
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