自分語り~支援術士の場合~
取り敢えず、連続投稿はここまで
次からは毎日投稿が出来る限りはしてみる予定です
……はぁ、まったく、誰も彼も、酒の席の話にしても重すぎない……?
確かに、参加するとは返事したけど、皆一様に揃いも揃ってここまで激重な話ばかりだとは思ってなかったんだけど……?
……え?じゃあ、あんたの話は重くないのか、ですって?
…………うーん、そこは、どうなんだろう……?
アタシ的には、そこまででも無いと思うけど?
取り敢えず、信じてた幼なじみ達から棄てられてキレたアンタのよりかは、重くないとは思うけどね?
……比較対象が微妙?
……いや、そこの毛むくじゃらの『家族に裏切られた』って話や、そっちの耳長みたいな『組織に切り捨てられた』って話と比べる方がどうかしてるんじゃないの……?
少なくとも、アンタ的には比べるのも恥ずかしい程度のお話しでしか無いんだけど?おまけに、面白くも無いだろうし。
…………それでも、聞きたい……?
……そう、じゃあ、アタシもやっちゃおうかな?皆みたいに、自分語りってヤツを、さ……。
さて、じゃあ、先にやったアンタ達に倣って、アタシも自己紹介から始めようか?
アタシの名前はタチアナ。タチアナ・グレンデール。
そっちの耳長や毛むくじゃらみたいに分かりやすい特徴が在るから分かってるとは思うけど、一応言っておくとアタシも只人族じゃなくて魔人族だよ。
年は、去年教授の儀を受けたから、この中でも一番年下の十六になるのかな?
教授の儀で授かったのは『支援術士』。知ってるとは思うけど、各種支援系の魔法に特化した職業になってるよ。
所属してたパーティーは『闇を裂く刃』。
活動拠点はこの辺りじゃなかったから知らないと思うけど、地元じゃちょっと名の通ったパーティーだったんだからね?
まぁ、アンタのいた処みたいに、二つ名まで付けられる様な活躍をしていた訳じゃないけど、さ?
……もっとも、こうして地元から出て一人でこんな処にいるって時点で察してるとは思うけど、アタシもアンタ達と同じ様にパーティーから追放されて、ここまで流れ出て来たって事なんだけどさ。
……なに?支援術士なんて割りと重宝される様な職業なのに、なんで追放されたのか、って?
そんなの、決まってるじゃないの。
アタシが、冒険者の中で一般的に言われている『支援術士のお仕事』ってヤツを、まともにこなせなかったからさ。
……あん?具体的には、どんな感じにこなせなかったのか、って?
…………まぁ、アタシもアンタ達のあれこれを聞いた後だし、アンタ達なら多分馬鹿にしたり広めたりもしないだろうから、別に教えても良いか……。
あぁ、それで、アタシの支援術に関してだったよね?
アンタ達は、普通の支援術士が出来る事、やらなきゃならない事の範囲って言うモノは把握してるんだよね?
……そうそう、味方である組んでるパーティー全員に身体強化を始めとした支援術を掛けて支援し、敵には行動阻害や能力下降と言った妨害術を掛けて行動の邪魔をする、文字の通りに支援に特化した職業さ。
そこまでは、共通の認識として把握していると思っても良いよね?
……さて、アタシの場合になるんだけど、まずアタシは一回でパーティー全員に支援術を掛ける事が出来なかった。
それに、世間的に言われている、全体的に身体能力を強化するみたいな支援術も、アタシは使えなかったのさ。
妨害術の方も、他の連中みたいに複数種類のモノを集中的に、みたいな事は同じ様に出来なかったね。
そんな、当たり前の事を当たり前にこなせなかったアタシが、パーティーから追放される事になるのは、ある意味当然だったのかも知れないね。
もちろん、アタシだって頑張ったんだよ?
他の支援術士に話を聞いてみたり、ひたすらにスキルを回数使ってみたり。
でも、一向に支援術の方は上達しなかった。
だから、身の軽さを生かした近距離アタッカーとして短剣を振るいもしたし、パーティーで必要になった雑事の類いも率先して片付けたりもしたよ。
まぁ、結局、新しくパーティーに入っても良いって言う支援術士が出てきた途端にこうして追放される事になったから、全部無駄な事だったけどさ。
……効果自体は在るのか?って、そりゃ決まってるじゃない。当然、在りはするよ?在りは。
ただ、アタシの支援術をそうやって掛けた場合、一度に一人だけにしか掛けられないし、おまけに一つの能力しか強化出来ないからあんまり効果の在る実感は無いかもよ?
妨害術の方も似たような感じにしか出来ないから、やっぱりアタシは欠陥支援術士、って事になるんだろうさ……。
…………あ゛?オイコラ、そこの無駄乳年増耳長。テメェ、今なんつった?
『その方がむしろ使い勝手が良い可能性が在る』
だぁ?
……おぃおぃ、年食い過ぎてボケたか?それとも、強すぎる酒かっくらって酔っ払いでもした?
最初から御大層な職業貰ってたテメェが、碌に自分の役割も果たせずに泥の中を這いずって血の滲む努力を重ねて来たアタシの欠陥スキルを『その方が良かった』とか、何様目線で評価してくれちゃってる訳?
最初から恵まれてたお偉い『聖女サマ』には、必死に足掻いた凡人以下の輩が大層面白く映るみたいだなぁ、おい?
……あんまりふざけた事抜かしてると、そのおキレイな顔二度と見れない様な状態にズタズタに切り刻んで、魔物共の巣穴にぶち込んで来てやろうか?さぞや使い勝手の良い繁殖メス穴として、気が狂って壊れ死ぬまで使い潰して貰えると思うけど?
それが嫌なら今すぐそのクソッタレな口閉じな。でないと、アタシが物理的に閉じてやる事になるんだけど……?
……あ?アタシは今このクソッタレな『聖女サマ』とお話ししてるんだ。アンタはお呼びじゃないんだから引っ込んでな!!
…………チッ!こうして、仲裁に入られちゃあ、仕方無い。
アンタの顔に免じて、取り敢えずこっちは引いてやるよ。
まぁ、これでアタシからあの耳長に対する心証は最悪に近くなったけど、それで?結局無駄乳は何が言いたかった訳?
…………は?支援術が無駄になる場合が在る……?
……いや、確かに、アンタの言う様な事態は結構在ったから理解は出来なくは無いよ?
ここで言う処の、アンタに筋力強化掛けたりだとか、そこの毛むくじゃらに魔力強化掛けたりするみたいな、そう言う事を言いたいんじゃないの?
意味の無い部分を強化する様な事はしない方が、普段と感覚のズレが少ないから寧ろやり易くなるハズ、ねぇ……?
それに、妨害術だって、ピンポイントで的確な妨害をされた方が、相手にとってもやり難い事になる様に思える、か……。
…………まぁ、アタシとしても、心当たりと言うか、思い当たる節が無い、事も無い、と思う。……多分だけど。
アンタ達が知ってるかは分からないけど、取り敢えずアタシが他の支援術士とかに聞いたり、実際に受けたり掛けたりして比べて分かった事として、平均的な支援術の効果って大体元々の能力を二割位から三割位まで引き上げるみたいなのね?
……それで、アタシが掛けた場合なんだけど、どうやら五割近く上昇するみたいなんだ。
ついでに言えば、妨害術を敵に掛けた感じとしても、大体五割近く弱らせる事が出来るみたい。あくまでも、アタシの主観で観察した結果だから、正確かは分からないけど。
なんでそうなるのかは、良く分からないけど、多分掛けれる範囲が狭いから、その代償みたいなモノなんじゃない?
それに、あくまでも『そうなってるみたい』だから、本当の処はアタシが考えてるみたいに割合で下げたり上げたり出来るのか、もしくは身体能力を数値とかに変換した時に、そこから数字を固定して上げたり下げたりしているのかは分からないけどさ。
……取り敢えず、いきなり怒鳴ったりして悪かったわよ。
流石に、まだそんなに経ってない内に傷口抉られる様な事を言われた上に、酒まで呑んで自制心が緩んでたみたい。
全面的に許せ、とは言わないけど、それでも一応謝っておくわ。
…………さて、取り敢えず、これでアタシの溜め込んでいた、クソッタレな体験談と自分語りはオシマイ。どう?面白くは無かったでしょう?
まぁ、アンタ達のよりは、比較的マシだったとは思うけど、それでもアタシはアタシでそれなりの経験はしている、って訳よ。
…………で、どうする?アタシは最後にもう一杯頼むつもりだけど?
……そう。じゃあ、注文が来たら一つアンタ達に話が在るんだけど、良いかしら?
多分、アンタ達にも在るんじゃないの?アタシと同じ様な『お話』が、さ……。
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