『追放者達』、単眼巨人へと決戦を挑む
一旦退いた風を装ってこちらを窺っているのだ、と確信している『追放者達』のメンバー達は、互いに背中を向けあって車座になりながら、焚き火の灯りの届かない漆黒の闇の向こうへと視線を配る。
僅かながらも前へと出て後衛の女性を守ろうとするアレス、ガリアン、ヒギンズの三人と、自分達に前衛的な素質が無い事を理解して後ろに下がりながらも視界を広く持とうと努力する女性陣は、敵は見えないが確実に近くには居る、と言うある種の極限状態にも関わらず、揃いも揃って軽口を叩いて行く。
「しっかし、まさか本当にやるとは思ってなかったぞ?
なんぞさっきのは。
相手はジャイアントぞ?
本当に人間かね?んん??」
「なはは、確かにアレは見物だったねぇ!
オジサンもこの業界はそれなりに長いし、やろうと思えば多分出来なくは無いけど、幾ら龍人族でもガリアン君の年頃じゃあまだそんな事出来る程じゃ無いんだけどなぁ?」
「まぁ、確かに人間業、と言うには些か語弊の在りそうな光景ではありましたね。
でも、ソレを仰られるのでしたら、幾ら支援術による援護在りきとは言え単眼巨人の皮膚を切り裂いて苦鳴を溢させたアレス様や、それらすら必要ともせずに指を丸々一本切り飛ばして見せたヒギンズ様も大概ではないでしょうか?」
「俺はほら、タチアナの支援術が凄かった、って事で。
一応、俺『は』人間の範疇だろう?」
「……いやいや、その言い方だと、オジサンまで人外扱いされる事になるんだけど?」
「別に、実質人間辞めてるみたいなモノなんだから、認めて楽になっちゃえば?」
「それはそれで嫌なんだけどねぇ!?」
「…………誰も、当方がまともな存在だと言ってはくれぬのだな……」
「ガリアンさん、そうやって落ち込んじゃダメなのです!
ボクは、ちゃんとガリアンさんに感謝しているのですよ?ほら、ご褒美としてナデナデして上げるのです!」
「………………これはこれで、扱いとしてはどうなのだろうなぁ……」
アレスがガリアンとヒギンズを茶化し、ソレに反論するヒギンズへとセレンとタチアナが追撃を仕掛け、流れ弾で落ち込む長身のガリアンを低身長のナタリアが精一杯背伸びして頭を撫でようとする。
そんな混沌とした状況になりつつあっても、決して闇から視線を逸らそうとはしない『追放者達』。
彼らは、経験則から知っているのだ。
戦場での緊張は、適度に緩めないと精神が持たないと言う事を。
故に、彼らは命懸けの状態でありながらも、仲間内で下らない冗談を飛ばし、苦笑いを浮かべながら敵に対しての警戒を怠らないのだ。
それが、自身の力に自信を持ちながらも、一度敵だと認識した相手を倒す為ならば何処までも狡猾に立ち回れる存在であれば、尚の事、だ。
「……さて、悪ふざけはこの辺りにしておいて、情報共有と行こうか。
相手はジャイアント特有の頑強さと剛力を持ち合わせながら、恐ろしい程に慎重だ。こんなに暗く、それでいて遮蔽物が大量に存在する場所に連れ込んでおいて、その上で姿を眩ますスキルの類いまで使って姿を隠していやがるんだから、呆れるばかりだよ」
「スキルの傾向として、恐らくは気配を遮断するモノと、姿を隠すモノの二つかそれらの複合型、と言った処か?」
「恐らくは、空間移動の類いでは無いのでしょうね」
「そんなのが在ったら、とっくの昔にアタシ達の真ん中に飛び込んで来てるハズだし、それは無さそうね」
「この子達が追えていないと言う事は、匂いの類いも消しているって事なのです。
でも、匂いの類いまで消せるなんて、余程の練度でなければそこまでは隠せないのです」
「ついでに言えば、そこまで高性能な気配遮断を行えるし、索敵の類いのスキルまで弾くみたいだけど、生物の経験則だとか感覚だとかまでは流石に誤魔化せないみたいだけどな。こんな風に、さ!
『貫き焦がせ!『業火の矢』』!」
半ば不意を打つ形で、アレスが背後にいたセレンの背中越しに魔法を放つ。
誰にも告げず、その上で放たれた先には特に何も無い様に『感じられていた』為に、他のメンバー達は業火の矢が地面か樹に突き立ち、周囲を照らすのみに留まるハズだ、と『頭では』考えていたが、半ば反射的に得物を構えてそちらへと向き直る。
そして、他にも気を配りながらも、全員の視線が何故かその矢の行く末を見守ってしまい、不自然に空中にて『何か』に対して命中した様に停止した瞬間に、特に思考を挟む事無く全員の身体が動いて前へと飛び出して行く。
それと同時に、空気中から滲み出してくるかのように、彼らへと伸ばし掛けていた掌に命中した業火の矢を揉み消そうとしながらも、何故バレた!?と言わんばかりに驚愕から目を見開いている単眼巨人の姿が現れた。
恐らくはスキルの発動条件に、攻撃を受けると強制解除、だとか、ダメージを負うと無効化、とかの解除条件が着いていたのだろうが、そんな事を検証するのは後回しだ!とでも言わんばかりの勢いにて、前衛を担える男性陣が懐へと飛び込んで得物を振るい、後衛のセレンが攻撃魔法を、タチアナが妨害術を、ナタリアが弓による援護射撃をそれぞれ慣行して行く。
「こいつにもう動かせるな!」
そう号令を掛けながら、持ち前の素早さにて当たるを幸いに縦横無尽に刃を振るって継続的にダメージを負わせて行くアレス。
「当然だ!こいつに次隠れられたら、逃げられる可能性の方が高い!」
時に手にした戦斧を振るって斬撃を、時に手にした盾にて殴り付けて打撃を確実に当ててダメージを与えつつ、時折仲間達を目標として伸ばされる手を盾にて殴り返して守り続けるガリアン。
「確かに、あんまり何度も消えたり現れたりを繰り返されるのは厄介で面倒臭いよねぇ。
……じゃあ、オジサンもちょっとだけ本気出しちゃおうかなぁ?」
突如としてガラリと纏う雰囲気を変化させ、時に突き、時に斬り、時に殴打し、時に薙ぐ、と言った千変万化な槍使いにより、確実に単眼巨人の体力を削って傷を増やして行くヒギンズ。
そんな彼らの猛攻に晒されたからか、もしくは頼れる前衛が居る為に後衛としての能力を集中して発揮する事が可能になっている女性陣との連携に苛立ったのかは定かではないが、つい先程ガリアンによって破壊された方の手で自身へとまとわり着いて来たアレス達を振り払うと、全身に力を込める様にして咆哮を挙げる。
がぁぁぁぁぁああああああ!!!!!
すると、それまで彼らが与えてきた大小様々な傷は見る見る間に小さく、浅く、薄くなって行き、次第に無事な肌の面積を広く大きくして行く。
そして終いには、ヒギンズの手によって切断されて欠損したハズの指までもが再生し、ガリアンが破壊した手首も元の状態へとどんどん治って行く様に見える。
そんな、ジャイアント種特有の超再生を目の当たりにしてしまったアレスだったが、舌打ちを一つ溢した切りで特に動揺を見せる事もなく、それまでよりもペースを上げて刃を振るい、時に魔法を織り混ぜて確実に単眼巨人を殺しにかかって行く。
「ジャイアント種特有の超再生能力だ!
見ての通りに欠損だろうが何だろうが治しちまうが、それ相応以上に体力やら魔力やらを消耗する類いのモノだ!
このまま完全回復なんてさせずに、させてやらずに!一気に押し通すぞ!!」
「「「「「応!!!」」」」」
そんな彼の背中に続く様にして、他のメンバー達も気合いを入れ直し、再び得物を強く握り締めて単眼巨人へと攻撃を仕掛けて行くのであった。
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