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『追放者達』、単眼巨人と戦闘を開始する

 



「やるぞ!各員、散開!!」




 アレスの下した号令により、一斉に動き出す『追放者達(アウトレイジ)』。



 ソレを遥かな上空から、焚き火の光によって照らされてギラギラと光る唯一の瞳にて見下ろしながら、その口許を醜悪な半月へと歪めつつ動き出す単眼巨人(サイクロプス)



 真っ先に駆け出したアレスとガリアンの最前衛の頭の上を、黒樹を掴んでいたのとは逆の手が伸ばされて行く。



 既に駆け出していた二人の目からは良く見えていなかったが、そうして手を伸ばしている単眼巨人(サイクロプス)の目は下卑た性欲と食欲に染まっており、その単眼には後衛の女性陣のみが写っている様子だ。



 人食いの化け物であり、圧倒的にサイズの異なる本来ならば食物としか見るハズの無い相手に対し、性欲を抱いて瞳を輝かせると言うのが正常な反応なのかは不明だが、現に前衛として近付きつつ在る二人を無視し、未だに遠くにいる女性陣へと手を伸ばしている以上、この単眼巨人(サイクロプス)にとっては食欲と性欲は両立する欲求なのだろう。



 そんな状態だっただけに、アレスもガリアンも急停止して後衛を守る為に戻ろうとするが、背後にて急速に気配が膨れ上がり、ひりつく程の『闘気』が放たれた事によって急停止を取り止め、逆に急加速して単眼巨人(サイクロプス)の懐へと飛び込んで行く。



 そして、アレスが速度を乗せた状態での斬撃を、ガリアンが全体重を乗せた突撃攻撃(チャージアタック)を連続で黒樹の影から見えていた右足へと仕掛けて行く。



 それと同時に、彼らの頭上にて単眼巨人(サイクロプス)のモノと思われる絶叫が周囲へと響き渡る。



 ……しかし、攻撃を仕掛けてその苦鳴を挙げさせたハズのアレスとガリアンは、綺麗なまま(・・・・・)の得物を手にした状態にて苦い顔をしながら、単眼巨人(サイクロプス)へと追撃を仕掛ける事もせず、バックステップにて後衛の皆の元まで後退する。




「…………やべぇ、硬いって事は知ってたけど、ありゃ想像以上だな。

 硬すぎるだろうよ。本当に生物か?」



「おまけに、柔軟性も高いと見える。

 当方の全力での打撃を、比較的肉の薄いハズの脛に受けてもびくともしておらぬとは、一体どうなっておるのだ?」




 そう溢す二人の顔にはウンザリした様な表情と共に、幾分かの闘争心と僅かながらも戸惑いの混ざった雰囲気が滲んでいた。



 そんな二人に対し、先程からその場を動かず、振られた役目を果たしていたヒギンズが何気無い様子にて言葉を掛ける。




「まぁ、確かに硬いよねぇ。

 オジサンが以前倒した単眼巨人(サイクロプス)って、もっと柔らかかった様な気がするんだよねぇ。何でだろう?

 ……まぁ、でも、やり方さえ少し工夫すれば、ちゃんと切れるみたいだから、頑張って倒すとしようかねぇ」



「……いや、アレを切れって言う方がどうかしてるだろうよ。

 流石に硬すぎ」



「むしろ、アレをどうやったら切れると言うのだ?

 どんな腕前でどれだけの得物を振るえば良いと言うのか?」



「いやいや、そんな事言われても、こうして実際に切れちゃってる訳だしねぇ?」




 何処か弛んだ雰囲気の中で言葉を交わしながらも、決して逸らそうとはしていない視線の先では、アレスとガリアンが斬り込んだ足を抱えて呻き声を挙げる単眼巨人(サイクロプス)……ではなく、先程女性陣へと向けて伸ばした方の手をもう片方の手で押さえて喚いている単眼巨人(サイクロプス)の姿が在った。



 そう、アレスの早さを持ってしても、ガリアンの筋力を持ってしても、今の処破る事に失敗している単眼巨人(サイクロプス)の皮膚を切り裂き、あまつさえその丸太の様な太さの指を切り飛ばす事にすら成功していたのだ。



 それだけで、ヒギンズの技量と筋力、そして斬撃に特化した造りになっている彼の持つ得物である業物が、どれだけの『高み』に在るのかは一目瞭然だと言えるだろう。


 それも、アレスやガリアンが未だに手を掛ける事が出来ていない、戦闘者としての絶対的な『高み』に、である。



 もっとも、戦況を一目見てソレが事実なのだと理解出来ない二人ではないし、だからと言って嫉妬心に駆られて彼をどうこうしようとする事も、同時に有り得ないだろう。


 何せ、既に仲間となっているのだから、ソコに至りたいのであれば、意地を張ったりせずに素直に教えを請えば良いのだと、二人は自身の体験から嫌と言う程に良く知っているのだから。




「取り敢えず、タチアナは支援術と妨害術頼んだ!

 セレンとナタリアは適当に、ヒギンズは引き続き三人の護衛よろしく!」



「了解!

 速さは足りてるみたいだし、そうそう当たらないだろうから取り敢えず筋力上げておくよ!

『力よ、漲れ!『筋力強化エンハンス・ストレンジ』『三重強化(トリオ)』』!

『力よ、漲れ!『筋力強化エンハンス・ストレンジ』『三重強化(トリオ)』』!

『力よ、抜け落ちよ!『筋力弱化デ・エンハンス・ストレンジ』『二重弱化(デ・デュオ)』』!『堅さよ、脆弱なれ!『頑強弱化デ・エンハンス・バイタリティ』『二重弱化(デ・デュオ)』』!

 これで、どうかしら!?」



「良し!なら、もう一度!」



「応!!」




 タチアナからの支援術を受けた二人が、再度単眼巨人(サイクロプス)の元へと駆け寄って行く。



 どうせダメージを与える事は出来ないのだから、とまたしてもソレを無視しようとする単眼巨人(サイクロプス)だったが、流石に自身の指を切り落とした相手は無視出来なかったらしく、後衛の女性陣の近くにて待機するヒギンズを前に迂闊には手を伸ばす事が出来ずに、彼の様子を窺っていた。



 当然、そんな隙だらけの状態の敵に遠慮なんてするつもりが欠片も無い二人は、先程と同じ様に無防備に晒されている足へと斬撃と突撃攻撃を仕掛けて行く。



 すると、二重強化を超えた三重強化を受けた上で、単眼巨人(サイクロプス)本体も妨害術で筋力・頑強さを引き下げられている事もあり、アレスの刃は表皮を越えて筋肉層にまで達する傷を与え、ガリアンの突撃は目標であった脛の骨に罅を入れる事に成功する。





 ぐがぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?





 ソレには堪らず苦悶の咆哮を挙げる単眼巨人(サイクロプス)



 それにより、とうとうヒギンズだけでなく、アレスとガリアンも『ソコにいる何か』ではなく『明確な敵』として二人を認識したらしく、その一つきりの大きな目玉を怒りに染めて、自らの足元にてうろちょろしている小さな害虫(アレスとガリアン)を叩き潰さんと二人の方へと手を伸ばして来た。



 しかし、高機動高火力を売りにしているアレスならばともかくとして、本来の役割としてはこうして攻撃に回っているのが不相応なガリアンがソレを見逃すハズも無く、その場にどっしりと腰を下ろして単眼巨人(サイクロプス)からの攻撃を待ち受ける。




「では、モノの試しに全力で防御してみるか!

『タウント』『フォートレス』『パリィ』ついでに『フルカウンター』も食らっておけ!!」




 狙いを自身へと引き付ける『タウント』。


 その場からの移動が制限される代わりに頑強さが大幅に上昇する『フォートレス』。


 相手からの攻撃を跳ね返す『パリィ』に、相手の攻撃によって本来受けたであろうダメージを倍返しにする『フルカウンター』。



 どれもこれも盾役としては必須級のスキルであり、同時に相手の攻撃を受けきれないと意味を成さないそのスキル群を発動させたガリアンは、その場から動くこと無く単眼巨人(サイクロプス)が繰り出した拳を構えた大盾で受け止めると、地面に足を埋め込みながらもその拳を跳ね上げると同時に、『フルカウンター』によって発生させたダメージでその拳を破壊する。





 ぎぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!?!?!?!?





 先程とは異なり、完璧に破壊されて指の関節が逆方向を向いた状態になっている単眼巨人(サイクロプス)は、その拳を抱え込んで地面をのたうち回る。



 流石に、至近距離にて五メルトを超える巨体が暴れ回られると、その振動だけで地震に近しい揺れが発生する為に、泣く泣く近接攻撃による追撃を諦めて魔法による遠隔攻撃に切り替えるアレスとセレン。




「『撃ち抜き凍れ!『凍結の槍(アイシクルランス)』』!」



「『光よ、撃ち抜け!『光輝の槍(ライトニングランス)』』!」




 しかし、腐っても『最強種』と呼ばれるジャイアントの一角であるらしく、彼らの魔法の発動を感じ取ると、それまでの欲望に塗れた瞳を怒りで真っ赤に染めながら、何かしらのスキルを発動させてその姿を黒樹の間の闇と同化させて掻き消してしまう。



 ソレを目の当たりにし、慌てて発動させた魔法を放つ二人だったが、既に寸前まで単眼巨人(サイクロプス)の居た場所にはその姿は無く、ただただ周囲の黒樹を削り取ったり、周辺の闇を照らすのみに収まってしまう。



 結果的に見れば、彼らの攻勢に音を上げて単眼巨人(サイクロプス)が撤退した、とも取れるだろう。


 形だけを見ればそれは間違ってはおらず、同じ状況を成立させた場合、殆どの冒険者はそこで安心して気を緩める事になるのは間違いないハズだ。



 ……しかし、そうして一時姿を隠した単眼巨人(サイクロプス)であったが、その気配は未だに周辺へと残っており、その殺気も未だに薄れてはいなかったが為に、『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達は、油断無く周囲へと視線を配って行くのであった。




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