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自分語り~重戦士の場合~

連続投稿三本目


注※キャラの名前ミスってました

訂正してあります

 



 …………ふむ、中々に、壮絶な体験をしていた様子だな。


 アレス、と言ったか?よくぞ、そこまで耐えたモノだ。


 当方にも、そなた程の耐久力が在れば、話も違ったのかも知れぬが……。



 ……っと、これは失礼。


 此度は、当方の番であったな。


 さて、何から語ったモノだろうか……。



 まぁ、取り敢えず自己紹介からしておこうか。



 当方の名はガリアン。ガリアン=ウル・ハウルと申す。



 種族は見ての通りに獣人族(ベスタ)。年は今年で二十八になるが、まだ二十代故に『おっさん』呼びは勘弁願いたい。


 呼ぶときは、ガリアンでもなんでも基本的には構わない。当方が分かるのであれば、嫌がらせの類いでなければなんでも、な。


 神から与えられた職業は、当方の外見を目にすれば自ずと予測出来たかも知れぬが、見ての通りに盾職系の『重戦士』である。



 ……さて、家名と中間姓を聞けば自ずと理解できたであろうが、それが示す通りに当方は貴族家の出自だ。


 この辺りではあまり馴染みが無いであろうが、当方の『ハウル家』は武家……この辺りで言う処の『辺境伯』や上位の『騎士爵』家の様な扱いをされる家系であってな。


 一定期間他の国等に出向き、そこで見識を広めながら武功を積む事を家訓としているのだよ。



 ……っと、失礼。料理が来た。


 只では無いのだし、ここの料理も評判が良い。冷める前に手を付けるとしようか。



 …………ふむ、成る程成る程。これは中々。


 この辺りの味にあまり馴染みは無いが、これは中々に美味であるな。


 幾つか不明な点が在りはするが、工夫次第では再現も出来なくは無さそうだ。



 ……ん?当方が料理をするのがそんなに意外かな?


 まぁ、この日見た目と出自のお陰で誤解されやすい事は否定せぬが、かつて籍を置いていた一行での調理担当は当方であったし、何より当方の国では男女関係無く台所に立つのが風習だ。


 であれば、当方が包丁を振るう事に何の不思議も在るまい?



 ……ふう。さて、では、皆の腹もある程度膨れた処で、話を続けるとしようか。



 当方の出自と家訓を伝えたとは思うが、今回の旅路には当方のみがここまで流れて来た、と言う訳ではない。


 ……国を出る時には、もう二人が旅路を共にする者として隣に居たのだよ。



 その二人とは、当方の弟であり、当方の出身の国では特別視される職業である『侍』に就いていた『グズレグ=ウル・ハウル』と、同じく特別視されている職業である『巫女』を賜っていた、当方の婚約者でもあった(・・・)『サラサ=ナル・ウルゼン』。当方と共に『引き裂く鋭呀』を立ち上げ、共に魔物との死闘を潜り抜けた間柄でもあったよ。



 ……が、まぁ、この様に、一人で行動していると言う事で、どうなったのかは察して貰えると有難い。



 ……人には言わせたのだから自分も言え?


 ……まったく、君は随分と当方に対して手厳しいな……。


 まぁ、その方が、今の当方に取ってはむしろ有難いのかも知れぬ、か……。



 あまり、気分の良い話では無いのだが、聞いて貰えるだろうか?



 ……当方の所属していた『引き裂く鋭呀』は、それなりにバランスの取れたパーティーであったと自負していた。


 当方が相手からのあらゆる攻撃を、時にこの盾にて防ぎ、時に身体を張って耐え忍ぶ。そうしている間に、鋭い物理攻撃が得意な『侍』であるグズレグが攻め、ソレを多彩な魔法を扱う事が出来た『巫女』であるサラサが援護し、同時に当方の回復も済ませて次の攻撃に備える、と言った形で手堅く様々な依頼をこなして来た。



 当方としては、それが最善の形で在ると思っていたのだよ。


 当方が守り、グズレグが攻め込み、サラサが魔法でグズレグを援護しながら当方を回復させる。その形が、最善だと、信じたかったのだろう。



 …………故に、あやつから急に切り出された時には、正直言葉を失ったよ。




『兄者。貴方は、只の役立たずだ。戦場でぼさっと突っ立つだけで攻め込みもせず、ただただ攻撃を食らってサラサの魔力を削るだけ。正直、兄者がいない方が、自分もサラサも余程上手く立ち回れると言うモノよ。

 故に、兄者にはここで足抜けしてもらう。当然、コレは家からのお達しであるし、サラサの方も了承している。彼女も言っていたよ『お荷物が無くなって、より身軽に二人で動きやすくなる』と。

 序でに言えば、兄者は後継としての権利を剥奪され、我らがハウル家からも追放処分となるそうだ。当然、サラサは次の後継たる自分の婚約者となる。もっとも、今までからの『関係』を鑑みれば、その方が自然かも知れぬがな!!』




 ……確か、言い回しは多少異なるかも知れぬが、凡そこのような事を言われたハズだ。


 まぁ、その時の衝撃と、直後に出会した婚約者……いや、『元』婚約者の態度が、あやつの言葉を証明していたが為に、所々記憶が曖昧になっている様に感じられる故に、全部その通りか?と言われると保証しかねる、としか言えぬがね。



 ……何?その二人に対しての不満や憤りは無かったのか、と?



 ……まぁ、正直な事を言えば、皆無である、とは言えぬよ。やはりな。


 もっとも、そなたの様に、自身の扱いに対する正当な憤り、と言う訳ではないだろうから、かなり見苦しくなるが、別段構わぬだろうか?


 ……構わないから吐き出せ?……なら、お言葉に甘えて、少々吐き出させて頂こう。酒の勢いも借りるとしようか。



 …………ふぅ。


 ……本音を言えば、当方とて言ってやりたい事なぞ幾らでも在ったさ。


 あやつは、当方の事を足手まといだと、お荷物だと罵ってくれたが、それは本来であれば当方こそが言ってやりたかった事よ。



 あやつは、自らが『侍』であった事を鼻に掛け、常に無茶な依頼へと後先考える事無く突撃して行く様な間抜けであった。


 故に、勝てもしないのに、ジャイアントやドラゴンと言った最強格の依頼を勝手に受けて来ては、特に準備を整える事もせずに突っ込んで行き、当方が命からがら助け出す羽目になることばかりであったよ。



 サラサはサラサで、普段からして自ら意見を述べる訳でもなく、意見を聞いてもその場では特には言及する事もしなかったのに、いざ事が起こってから『自分は最初から反対だった』だの『それは明らかに無理があった』だのと言い出す気性でな。


 その癖に、そう考えていたのなら何かしらの対策は在るのだろうな?と問えば、そんなモノが在るハズがない!とその場で対策もせずに喚き散らすだけしかしない。


 そんな二人と今まで旅路を共にして来れたのは、二人が家族に等しい関係であったからだ。


 だから、時折二人きりで何処ぞに消えて行くのも、訝しいとは思いながらも追求する事はしなかったのだよ……。


 まぁ、全ては無駄だったと言う事なのだろうがな。



 ……よくそれで今まで生きてこれたな?


 ……言われずとも分かっておるよ。普通はもっと早くに全滅していたであろう、と言う事はな。



 だが、当方はこうして今も生きている。そして、今の今まで当方が生きてこれたのは、一重に当方が異常に頑健で、その上で相対した相手の攻撃を全て当方が受け止めて来たからだ。



 そう、文字の通りに『全て』な。


 無謀にもあやつが挑み、踏み潰されそうになって小便を漏らしたジャイアントの一撃も。


 いざと言う段階でパニックを起こし、金切り声を挙げながら髪を振り乱すだけであったドラゴンのブレスも。


 その他の如何なる攻撃も、その全てを当方はこの身と盾一つにて、全て防ぎきって見せた。


 故に、今もこうして生きて酒を呑んでいられるのだよ。



 ……もっとも、如何に当方が敵の攻撃を全て防げたとしても、あくまでも防げるだけ。


 ある程度は反撃も出来たし、スキルにてカウンターの類いも出来はしたが、それだけだ。


 今だかつて当方がドラゴンスレイブも、ジャイアントキリングも公式には成し遂げられていない、と言えばどうなったのかは察して頂けると思っているよ。


 そして、それすらも、あやつらは自分等に非があるとは欠片も考えず、あくまでも当方にのみ非があると、大真面目に言ってくれるのだから始末に負えぬと言う奴よ。




 …………ふむ、流石に、久方ぶりの酒故に、ちと回りが早い様だ。


 これ以上の語りは完全に恨み節になりそうな予感がする故に、当方の番はこの辺りにしておくとしよう。



 さて、では残りのお二方。


 当方の彼への無茶振りから始まった自分語りとは言え、こうして席を立たずに残られたと言う事は、何かしらの吐き出したい事柄がお在りと見受けられる。


 であるならば、この場で吐き出してしまわれるのがよろしかろう。



 何、自ら言い出しにくい、と言うのであれば、最初手の彼に習って、当方が次なる語り手を指名させて頂こう。



 ……では、神官服を纏いし森人族(エルフ)のご令嬢。貴女の抱えし澱、吐き出してしまいなされ。

後二本今日中に投稿します


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