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『追放者達』、相談する

ここから新章に入ります


感謝の予定外更新です


ブックマーク等にて応援して下さった方々に感謝です(^^)

 


追放者達(アウトレイジ)』を結成し、初依頼を達成してから数日の後。



 アレス達四人は、またしても冒険者ギルドのロビーにて額を突き合わせていた。




「…………皆も承知していただろうから、あんまりとやかくは言いたく無かったが、リーダーとして敢えて言わせて貰おう。

 今、俺達には重大な問題が起きつつある、って事を」



「…………うむ、当方も承知しておるよ。流石に、看過するのは些か以上に問題が在ると言わざるを得ないであろうな」



「そうですね。私としましても、ここ数日で達成した依頼にて、その問題の重要性は理解出来ていると思っております。

 確実かつ、性急に解決せざるを得ない問題かと」



「……まぁ、確かに、ねぇ……。

 アタシは今まで特に不便を感じた事は無かったけど、それはあくまでも遠出して来なかったからみたいだし、あの時みたいになったりすると色々と面倒だから、早めに解決する必要は在りそうね。

 でも、どうするの?アタシ達だけじゃ、多分解決は無理でしょう?」



「まぁ、それは否定出来ぬな。

 その問題に関しては、残念ながら当方では役に立てぬであろう。これでも、この問題を大きくしている要因の一つであるとの自覚は在る故に、どうにかして協力出来れば、とは思っておるのだが……」



「このメンバーの中で、一番嵩張るのはガリアン様のモノですからね。

 私がどうにかする、と言う事も出来なくは無いですが、流石に回復役が圧迫されたから魔力が足りません、と言う事になりかねないのは些か無理が在るかと……」



「とは言え、他に対応出来そうなのは現状では俺とタチアナって事に成るけれど、俺は最前線で戦うのが前提だからあまりそちらには力を割きたくは無いし、タチアナも多重支援を発動させるとそれなり以上に魔力を使うみたいだから、万一の場合を考えると出来れば振りたくは無いしなぁ……。

 まぁ、万が一の場合について言うのであれば、セレンに大きな負担を強いる形になるのは不味いし、何より奥の手が魔力が足りなくて使えずに蘇生出来ませんでした、とかになるとマジで笑えなくなるから、早めに解決策を用意しないとな」



「でも、ソレを解決しようと思ったら、新しく人を入れないとならないんじゃないの?

 ソレって、アタシ達的に大丈夫な訳?」



「……うむ。問題は、そこなのよなぁ……」




 唸り声を挙げながら、腕を組んで考え込んでしまうガリアン。



 そんな彼の姿を見ながら、他の三人も同じ様な状態へと移行し、揃って唸り声を挙げて考え込んで行く。



 ……何故、ここまで彼等は頭を悩ませているのか。


 その答えは、言葉にしてしまえば至極簡単な事でしかない。




 そう、それこそ、『人手が足りない』と言うだけの話であるのだから。




 戦力が足りない、と言う訳ではない。


 有るに越した事は無いにしても、基本的に必要なポジションは埋まっているし、ここ数日の依頼を通して連携の類いもこなれて来た感覚は在るし、彼等も確かな手応えを感じ始めている。


 まぁ、贅沢を言うのであれば、後衛たるセレンとタチアナの二人を護衛する中衛か、もしくは最前衛にて得物を振るうアタッカーの類いがもう一人位居れば、アレスが他のメンバーの現状を気にする事無く役割に集中出来る様になるのだが、今求めているのはそちらでは無い。




 今回、彼等が求めている『人手』とは、純粋に準備した物資や倒した魔物の素材を運搬する為の労働力の事を指している。




 元来、冒険者とは戦闘を行い魔物を討伐する者のみを指す言葉では無い。



 まだ人の手の入っていない遺跡を探索する者も『冒険者』だし、未踏破の森や山を踏破して人類の生活域を拡張する者も『冒険者』だ。



 そして、他の冒険者達の行動を助け、サポートする事に徹底する、と決めた者達も、同じく『冒険者』と呼ばれる肩書きを持ち合わせている。



 そんなサポートに徹する事を決めた者達の中に、物資の運搬に特化した者達がいる。


 彼等は『運び屋(ポーター)』と呼ばれ、様々な方法にて出先に持ち込みたい物資や、出先で得られた素材を回収・運搬してくれる戦闘系だけでなく探索系の冒険者達にとっても心強い存在だ。




 何せ、冒険者達にとって、魔物や時間だけでなく、物資の容量や重量も等しく敵と見なしても良い程度には、戦わなくてはならない相手なのだから。




 幾らアイテムボックスのスキルの類いが在るとは言え、それはあくまでも魔力の最大容量を犠牲にしての利便性であり、戦闘を考えるのであれば必然的に、常用する場合は極一部の貴重品の類いを仕舞い込む程度に抑える必要が出てくる。


 そうなれば、必然的に『その他の物資』は現地調達する分を除けば、自分達で背負って行く事になる。



 それだけでなく、持ち込んだ物資がそのまま残っている行きの道中や、幾分かは消費していてもまだ残されているであろう帰り際等に魔物や敵を倒した場合、素材として解体したとしてもその分の重量も加算される為に、どうしても肉体的な疲労が大きく疲れが溜まり易い。



 特に、彼等『追放者達(アウトレイジ)』の様に、実力が在りながらも少人数、と言ったパーティーには、その手の重量に関しては死活問題だと言っても良いだろう。



 それ故に、冒険者達はその手の物資の運搬に特化したサポーターであるポーターを雇い入れるのだ。



 そうすれば、多少支出や消費する物資の量が増えたり、ポーターを守りながら行動しなくてはならなくなりはするものの、持ち運べる物資の量が桁外れに多くなるので、ポーターの居ない状況では中々に難しかったであろう遠方への遠征等も行える様になる。


 そして、必然的に持ち帰れる素材の量も同じく桁外れに多くなるので、ポーターを雇った際に発生する給金やら消耗品やらの数倍を軽く稼ぐ事が可能になる、と言う訳だ。



 そんな訳で、依頼で赴いた先で毎度毎度目につく魔物は皆殺しにしつつも、それらの素材は勿体無くて捨て置けない貧乏性な彼等『追放者達(アウトレイジ)』の面々は、その度にアイテムボックスがパンパンになるまで素材を詰め込み、その上でガリアンやアレスが残りを背負って帰ってくる、と言うのが定番になってしまいつつ在る為に、それらの苦労を解消するべくポーターを雇おうか、と言う話し合いをしていたのだ。




「でも、結局どうするよ?

 俺としても、ポーターを雇うのには大賛成よ?その分稼げるだろうし、俺達の負担も減るだろうし。

 でも、基準とかはどうするよ?俺達と同じ様なポーターなんて、そもそもいるのか?」



「うむ、そこが難点よな。

 当方らは、かつて自らのパーティーから追放された過去の元に、こうして寄り集まった集団だ。故に、かどうかは各自の判断に任せるが、それが一助となって当方らの親近感や連帯感を強め、各自の責任の元に判断して行動する事により、結果的にこうして中々に収まりの良いパーティーとなっていると思っておるのだよ。

 利便性が上がるのは歓迎するが、それで出来たばかりのパーティーの和を乱されるのは、当方としても些か面白くは無いのでな……」



「そうですね。私も、ガリアン様の意見に賛成です。

 私は、出来たばかりですがこの『追放者達(アウトレイジ)』の事が気に入っています。それこそ、以前の『新緑の光』に所属していた時よりも、私が私として生きていられる、との実感が在りますからね。

 ですので、今出来上がりつつ在るこの空気を壊されないかは心配です。新しく人を雇って得られるであろう利便性と比較しても、そちらの方が比率としては大きい程には、ね……?」



「……うーん、アタシは大丈夫だと思うけどなぁ……。

 確かに、アタシとしてもこのパーティーには愛着が出てきたから、変に引っ掻き回されるのは嫌だよ?でも、何だかんだでアタシらも上手いこと行ってるんだから、新しく入れたとしても大概どうにかなるんじゃないの?」



「……しかし、そう楽天的に考えるのも、な……」



「えぇ、過去の事が事ですので、どうにも難しく……」



「……あぁ、もう!なら、最初に募集なりなんなりする時に、条件でも着けておけば良いんじゃないの?

『過去にパーティーから追放された経験の在る方大募集!』とかでもやってみれば?来るかどうか知んないけど」



「……いや、流石にそれでは来ぬであろうよ……」



「私も、それでは来る方も来られないかと……」




「……いや、その案意外と悪くないかも知れない」




「「「…………え?」」」




 半ば自棄っぱちなタチアナの台詞に、呆れた様子で言葉を返していたガリアンとセレンだったが、意外な事にアレスから飛び出た肯定的な言葉により、思わず発言者のハズのタチアナと共に三人揃って間の抜けた声を出してしまう。



 しかし、そんな三人に対して、いつの間にか用意されていた手元の紙に何かをサラサラと書き連ねながらアレスが口を開く。




「どのみち、俺としてもあんまり変な奴は入れたく無いし、こっちからの声掛けだけだと限度が在る。

 なら、ギルドの制度を利用しつつ、募集要項に条件を書き加えておけば良いんじゃないのか?

 多分だけど、俺達と同じ様な経験をしていた奴なら、そこまで変な空気にはならないんじゃないか?

 只の勘でしかないけど、あんまり馬鹿には出来ないだろう?

 あと、ついでに欲しいって言ってた戦闘要員も募集しておこうか。ダメ元でさ」




 そう言い残し、書き込んでいた手元の紙を再度覗き込み、不備や欠落の類いが無いかを確認してから、ここ数日にてすっかりと顔馴染みになりつつ在る受付嬢のシーラの元へと歩み寄り、記入していた書類を提出するのであった。

次回、新キャラ登場?


面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m

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