『追放者達』、謎の建築物の探索を開始する
以前よりも遥かに短時間にて未開領域の入り口へと到達した『追放者達』と追加の三名は、少しばかりの休憩を挟んでから目的地を目指して奥へと突入して行く。
未開領域へと至る行き道と同じく、有効打撃を与えられる面子が増えた事により、前回よりもサクサクと進行する事に成功し、大分余力を残した状態にてまだ日も中天に差し掛かる前の段階にて例の建築物の近くまで辿り着く事に成功する。
「…………ふむ?成る程成る程、コレが例のアレか。
確かに、こんな場所にこんなモノがこんな状態で残されているのは不自然極まりないし、何よりこの周囲は『粘性体』が多過ぎる。我らならば鎧袖一触に振り払えるが、そうでなければ厳しかったであろうな。
……これは、やはり『当たり』と見るべきか……?」
「だから、そう報告しただろうがよ。
もしかして、信じていなかったか?」
「まさか。己が言う事を疑う程に愚かしくなんぞ在りはしない。
……が、よもや『王』として、幾ら信を置いているとは言え、一個人の意見を鵜呑みにする訳にも行かんだろう?
今回の事は、そう言う事だ」
「……まぁ、そう言う事にしておいてやるよ。
それで?どうするよ?行けそうなら、もう行くか?」
「まぁ、その方が良かろうよ。
恐らく原因はここだろうが、ソレ自体が何かしらを壊せばソレで綺麗サッパリ収まるのか、むしろ破壊しては不味いのか。壊したら壊したで、事が収まるまで暫し掛かるのかそうでもないのか。そこら辺の情報は丸っと手元に無いのだ。
なら、急ぐに越した事は無いだろう?」
「あいあい、了解しましたよっと。
依頼主様の仰るままに、ってね」
やる気無さげにそう返事をしたアレスは、各自で思い思いに建築物の周囲を見張ったり休息したりしていたメンバーとその他二人に対し、手振りで集合する様に促して行く。
そして、集合した事を確認する事もせず、一通り周囲を確認した限りでは唯一発見出来た入り口らしきモノへと赴くと、周囲に罠が仕掛けられていないかどうか、そもそもコレが入り口で合っているのか、等を確認して行く。
「…………取り敢えず、俺が解る範囲では罠は無し。それと、多分コレが入り口で間違い無いだろうな。
……ただ、コレを開けられるかどうか、と言われると、些か自信は無いな。何せ、見たこと無い仕様だ。開けられるとは限らないが、試すだけ試してみるか?」
「うむ、やってくれ。
なに、もし失敗したとしても、いざとなれば力ずくで抉じ開ければ良かろうよ。ソレが出来ない道理は無いし、ソレが出来ない面子でも在るまい?」
「………………まぁ、それもそうか?」
集まって来た面子を見回したアレスは、ガシャンダラ王の言う通りに、いざとなれば力ずくで破壊する事も可能か、と判断すると、特に後を気にする事もせずに入り口と思わしき部分の周辺を、今度は開閉させる機構が無いかどうかを主眼に置いて調べて行く。
すると、鍵穴と思わしきモノを見付けた為に、ソコに腰のポーチから取り出した細長い道具を差し込むと、内部を指先とスキルの反応を頼りに探って行く。
神経を集中させて内部を探って行くアレス。
その額には珠の様な汗が浮かび、ソレを拭う事すらも煩わしそうにしながら作業を続ける。
時折、脇に控えるセレンがハンカチでその額を拭い、口許に水筒を差し出して水分を補給させる事暫し。
太陽が中天に差し掛かり、若干下り坂へとその向きを変えようとしたタイミングにて、唐突に『カチッ!』と無機質で金属質な音が周囲へと響き渡る。
それまで、暇を持て余していた事もあり、周囲から変わらずに寄ってくる魔物の数を少しでも減らしておく為に戦っていたメンバー達にもソレは聞こえていたらしく、それぞれが相手にしていた相手を片付けてから振り返り、アレスの元へと退いて行く。
そして、アレスがトリガーとなる仕掛けを解除した事により、連鎖的に解除されて行き、最終的には入り口と見られる部分が勝手に横に滑る様にして動いてポッカリと口を開いて見せる。
ソレを喜び、我先にと滴る汗を袖で拭うアレスへと群がって共に祝う面々であったが、背後から数に任せて『粘性体』達が迫って来てしまっていた。
……普段の彼ら『追放者達』であれば、未だに安全が確認されていない場所に無防備に足を踏み入れるなんて言語道断!と言う方針と共に、絶対安全を試みて先に斥候としてアレスが踏み込んでから、と言う事になるのだが、今回はそうとも言っていられない状況……と言う訳でも無い、実は対処しようと思えば出来なくも無かったのだが、その手間と時間を惜しんだガシャンダラ王の手によって最後尾から入り口を開いた建築物の中へと押し込まれ、内側から入り口の扉を閉められてしまう。
「…………うぉい!?
ちょっ!?ばっ!!お前!?!?
何してくれちゃってんですかねぇ、こんな未知の領域で!?!?!?」
「……?何を言っている?
開けたのだから、入るだけであっただろうが」
「だからって、何もせずに突入するバカが在るかよ常識的に考えて!?
せめてもう少し躊躇するって事をいい加減覚えてくれませんかね頼むから!?!?」
「だが、こうして無事で居られると言う事は、やはり罠の類いは無かったと言う事であろう?ならば、別に良いだろう。結果良ければそれで良し、だ」
「………………」
「……ま、まぁ、ほら。
無駄に時間使う羽目にならなかったと考えれば、まだマシだと思えるんじゃないのかなぁ?とオジサン思うんだぁ。だから、ね?そんなに落ち込まないでくれないかい?リーダー」
「そうですよ!アレス様が頑張って扉を開けて下さった事で、私達は進む事が出来たのですから」
「うむ!セレン嬢の言う通りであるな。
それに、どうせ見掛けの通りにあんなちゃちな鍵穴一つ解除すれば良かったのでは無いのであろう?実際には、どの様になっていたのであるか?」
「…………物理的に仕掛けられていたのはあの鍵穴一つだけだったけど、ソレと連動させる形で十二種類の魔力錠が仕掛けられてた。
それぞれ、特定の波長の魔力を流して解除する型のヤツだったけど、全部が別の型を要求して来る上に、複数の型を組み合わせないと作れない様な型を要求して来るモノも在ってかなり面倒だった……」
「…………まぁ、アタシが聞いても良く分かんなかったけど、そんな面倒臭そうなヤツをやっつけてくれたんでしょ?
なら、そうやって落ち込んで無いで、さっさと探索しちゃわない?」
「そうなのです!
ここに罠が仕掛けられていなかったのは、ただ単に運が良かっただけなのです。なら、この先はリーダーが頼りなのですから、シャキッとするのです!
それに、どうせこの先はさっきみたいな事はもう出来ないと思うのですから、王様も大人しくしてくれるハズなのです!ねぇ?」
「…………え?我か?
いや、必要とあらば幾らでも「大人しくするのですよね?」…………う、うむ、そうだな……」
まるで、『言質は取ったのです!』と言わんばかりの笑みを浮かべてアレスへと指を立てて見せるナタリアにより、多少気力を取り戻したらしいアレスが前を向いて探索に向けたスキルを複数発動させ、目の前に広がる広々とした通路を進み始める。
流石に、入り口だけでもこの場にいるメンバー全員が一度に潜れるだけの大きさがあり、かつ周囲を見て回るだけでもソレなりに時間が掛かるだけでなく、周囲の梢に隠されているとは言え見上げる必要のあるだけの高さも誇る建築物の内部はかなりの広さが確保されている様子であり、探索も一筋縄では行かないであろう事が予想された。
…………しかし、いざ実際に中に入ってみれば、罠の類いは仕掛けられていはするものの、基本的には広い通路が延々と延びているだけであり、特に分岐したりと言った構造にはなっておらず、時折外でも見掛けた『粘性体』が出現して襲い掛かって来る程度であった。
それらの事実に首を傾げつつ、警戒しながらも訝しんで道を進んで行くと、突き当たりにて一枚の扉へと行き当たり、当然の様にアレスが解除に取り掛かる。
入り口と同じ形式であった為か、然程時間を掛ける事も無いままに仕掛けを解除し扉を開いた一行。
……だが彼らはその先にて、思いもしなかったモノを目にする事になるのであった……!
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