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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』岩人族の国を救う

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暗殺者、過去の因縁と対峙する

 



「…………それで、どの様な用件で?

 こんな夜中に内密に、しかもこんな場所に呼び出されるだなんて……」



「……不本意ながら、私達にもあのパーティーと合同で事に当たる様に、との指令が下されています。

 私達とて、それなりに準備に時間が掛かります。何か在るのでしたら、手短にお願いしたいのですが……?」




 蒼い短髪が、普段のソレと変わらずにぶっきらぼうで粗野な口調にて、紅い長髪が表情こそ普段のソレだが口調は丁寧なモノへと変えて、共に目の前に立つこの国の王へと問い掛ける『連理の翼』のアリサとカレン。



 二人は明日の作戦決行の際に、どうにかして邪魔者(セレン)を排除しようとしており、その準備の為にアレコレと頭を悩ませていたのだが、ソコにガシャンダラ王からの使いの者が訪れ、こうして真夜中の練兵場へと招き入れられる事となったのだ。



 使いの者も、特に用件を伝えられていた訳では無く、ただ単に場所と時間、それと武装してくる様に、とを伝えられていただけであったので、こうして一応指示に従って戦装束にて訪れはしたものの、未だに呼び出した本人の真意を図りかねている状態であった。



 そんな二人へと、自らも得物を携えて肩に担ぎ上げていたガシャンダラ王が、振り返り様に彼の背後に隠れる形となっていた者を押し出しながら口を開く。




「……おう、来たな。

 じゃあ、早速だが本題に入ろうか。お前らには、コイツと決闘して貰う。コレは、命令だ。拒否する事は、許さんぞ?」



「「…………なっ!?なんで、アレスと!?!?」」




 突然の事態と物言いに一瞬ムッとしかけた二人だったが、前に出てきた人影がアレスであると認識した途端に戸惑いの声を挙げて行く。




「なんだ?よもや、こやつからお前らに対して思う処が最早無い、とでも思っていたのか?」



「…………あ、当たり前じゃないか!?オレ達とそいつは、幼馴染みで仲間なんだぞ!?」



「両方ともに『元』が着くけどな」



「…………あの程度の事を未だに引き摺っているなんて、男らしくない。さっさと頭下げて謝罪して、戻ってくるのが筋。

 そう言う事が素直に出来ない処、私は嫌い」



「残念。俺は、お前らの事は疾うの昔に嫌いだよ」



「「………………!?」」



「……全く。我とて、今回の様な苦難に襲われていなければ、お前らの様に平気で背中を襲いかねない様な輩とコイツを組ませる様な指示なんぞ出しはせんよ。

 だが、コイツはその指示に従う為の条件として、お前らとの決闘を引き合いに出して来たのさ。なら、我は友としてソレを完遂させる義務が在る。

 と言う訳だ。さっさと構えろ。不参加も、グダグダと言い募るのも認めはしないぞ?」



「……ちょ、ちょっと待て!いきなり過ぎて、オレには何がなんだか……!?」



「……言ったハズだぞ?言い募る事は許さん、と。

 既に事は始まっておるし、ソレを油断と見ないヤツでは無いの位は知っておるだろう?そも、既にお前の視界から()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 …………まぁ、既に終わったお前に一つ教えてやれるとすれば、お前ら相手には一度叩き伏せる位の事はしないと背中なんて怖くて向けられない、のだそうだぞ?良かったな、悪い方向とは言え信頼されていて」



「……は、はぁ!?そんな事、いつオレ達が…………え……?」




 ガシャンダラ王によって決闘が宣言された中であっても、未だに事態が呑み込めていなかったらしいアリサが喚き続けていたが、既に自らの視界から一人消えている事に気付いていなかった彼女に対して呆れた様子にて彼から投げ掛けられた言葉に戸惑っている間に、間の抜けた声を漏らして唐突に衝撃が発生した自らの胸元へと視線を落とす。



 するとそこには、何故か朱く染め上げられた細長いモノが自らの右胸の肩に近い位置から生えており、ソコを中心として急速に衣服が朱く染まって行くのが見て取れた。



 唐突に産まれる激痛と、先程視界から消えていると指摘された人物とを総合して考えながら、錆び付いたブリキの兵隊の様にしてぎこちなくユックリと視線を背後へと向けて行くと、ソコには案の定自身の幼馴染みにして想いを寄せている相手が、何の感情の色も浮かべていない虚無の穴の様にも見える瞳にて、自身を見詰めている姿が存在していた。



 想い人が身近に帰って来た!と言う歓喜と、何故こんな事を?と言う疑問が脳裏を駆け巡り、反応出来ずに棒立ちしていると、刃を握っていたアレスがその刃を彼女の体内にてこじり、傷を無理矢理押し広げて肺に迄届かせた事により、急速に迫り上がって来た血反吐をぶち撒いて周囲を朱く染め上げてしまう。


 しかし、その段に至って漸く反射的行動によって身体を前へと倒し、多少傷を広げる事と引き換えに自由を取り戻したアリサは、天職として授かった『剣聖』として身体に染み付いた行動として、その場でふらつきながらも素早く反転して腰に差していた得物を背後にいたアレスへと目掛けて走らせる!



 …………かつて、訓練、と称して、幾度と無く彼へと目掛けて振られた刃。


 当時は、実戦を想定して、との取って付けた様な言い方にて真剣を使用する事を正当化し、幾度と無く彼を切り裂いて傷付けて来た真銀(ミスリル)に少量の神鉄鋼(オリハルコン)をブレンドした合金によって作られた刃。



 まともに『剣聖』たる彼女に振るわれれば、至極簡単に相手の指だけでなく手足すらも落とすであろうその刃を受けてもなおアレスが五体満足でいられたのは、一重に彼女が無意識下とは言え一応は手加減していたから、と言うのも大きいのだろう。


 とは言え、今回は咄嗟の事態であり、そんな無意識下による手加減なんて期待の出来ない状態で放たれた一撃により、彼女は確かにこれまでの経験則から『殺した』と認識してしまう。



 無自覚に今まで散々虐げていたとは言え、相手は自分たちが想いを寄せて心を捧げている相手。そんな相手を反射行動とは言え自らの手で殺してしまった事に対する絶望と、薄暗い背徳感に支配された快楽によって背筋を凍らせ、整った顔を歪ませてしまう。



 …………が、しかし、そんなアリサの手に帰って来たのは、柔らかな肉と臓物を切り裂いた手応えでも、比較的硬い骨を断った音でも無く、ガッチリと何かに力強く受け止められた感覚と、金属同士がぶつかり合った際に発せられる甲高い金属音であった。




「…………なっ!?バカな、そんな事、有り得ない……!?がはっ!!??」




 思わず瞑っていた目を開くと、ソコには彼女の目の前にて、彼女が振るった刃を見事に受け止めただけでなく、鍔迫り合いの拮抗から上手く力を逃がして体勢を崩させる様に誘導し、そこから前蹴りへと繋いで見せるアレスの姿があったのだ。



 突如として下腹部を蹴り飛ばされたアリサは、体勢が崩れていただけでなく多量の出血も在ってその場に踏ん張る事が出来ず、そのまま背後に押し退けられて無様に尻餅を搗く事になってしまう。



 胸と腹部の痛みだけでなく、格下としてしか見ていなかったアレスに攻撃を受け止められただけでなく反撃まで喰らった事によるショックによって、地面に座り込んで呆然とアレスを見上げるアリサ。


 そんなアリサと入れ替わる様にして、慌ててカレンが魔法の準備を終えながら前へと出て来る。




「…………どんな卑怯な手を使ったのかは知らないけど、アリサの攻撃を受け止められたからって、調子に乗らない方が良い!

『凍れて砕けよ!『凍結の巨塊(アイシクルブラスト)』』!」




 授かった天職である『賢者』によってもたらされる詠唱短縮の恩恵により、極短い詠唱によって氷の巨塊を産み出して見せるカレン。


 ソレを相手へと叩き付け、その上で爆裂させて破片を大量にぶつける事で多段階に渡ってダメージを与え続ける強力な魔法であり、かつ『大魔導級』よりも更に上の『魔奥級』をスキルとして得ている者(正確に言えば『一段上のスキルを得ている者』だが)に与えられる恩恵によって通常のソレよりも大幅に強化された状態となり、目標として放たれたアレスへと目掛けて真っ直ぐに飛翔して行く。



 ……こちらも、カレン達が把握していた『かつてのアレス』であれば必死になって逃げれば一応は回避出来るが、魔法によって相殺して防ぐような事は決して出来ないハズの規模の攻撃であり、彼女の脳裏にはソレを受けて傷だらけとなり、先程まで調子に乗っていた事を土下座して詫びてくるアレスの姿が明確に脳裏へと思い描かれていた。



 …………しかし……




「…………『焦がれて砕け!『業火の鉄槌(ブレイズブラスト)』』!」




 …………しかし、カレンの放った『凍結の巨塊(アイシクルブラスト)』は、同じく詠唱を短縮して放たれたアレスの『業火の鉄槌(ブレイズブラスト)』によって空中にて迎撃され、互いに内に秘めていた暴威を解放し、爆音を立てながら相殺されて対消滅してしまう。




「………………かな、そんな、バカな!?有り得ない、有り得ない有り得ない有り得ない!?

『蒼氷よ!連なり凍て付き、我が示す敵を貫け!『蒼氷の連槍グラキエスチェインランス』』!!」




 ソレを、信じられないモノを見た様にして眺めていたカレンであったが、目の前の現象を事実として受け入れる事が出来なかったからか、先程までの彼女基準では『一応は手加減していた』攻撃から、『本気で殺しに掛かる』レベルの大魔法である『魔奥級』の魔法を先の現実を振り払う様にして半ば反射的に放ってしまう。



 賢者と言う最上級の天職を授かり、ソレに伴って手に入れた絶対的な威力が在るのだと自負している魔法の一つであり、彼女にとっては必殺の魔法の一つでもあった。



 故に、ソレを癇癪を起こす様にして、特に考える事もなく発動してしまい、自らの背後に出現した巨大な魔法陣から柱と見間違わんばかりのサイズの氷の槍が無数に出現した事により、目の前の想い人が無惨な残骸となるであろう事が、確定した未来として見えていた。



 …………しかし、またしてもしかし……




「……その程度か?

『紅蓮よ!連なり焼き焦がし、我が前の敵を貫き穿て!『紅蓮の連槍クリムゾンチェインランス』』!」




「………………そん、な……あり、得ない……!?」




 ……しかし、そうして放たれた必殺のハズの魔法は、同じくアレスによって放たれた魔奥級の魔法である『紅蓮の連槍クリムゾンチェインランス』によって作り出された無数の炎の槍によって迎撃され、相殺されて彼の元には一発たりとも到着する事は無く、ただただ空中へとその熱量によって霧散させられて行くのみであった。



 一方的に『格下』として認識しており、自分達が『保護してやらなければならない』と思い込んでいた彼による昔日への訣別とも取れるそれらの攻撃の威力に、足腰からの力が抜けて地面へとへたり込んでしまう二人。



 そんな二人へと、この場を支配する『元』幼馴染みから無情な言葉が投げ掛けられた、彼女らは自らが思い違いをしていた事を、強制的に思い知らされるのであった……。






「………………どうした?まさか、この程度でお終いなんて事は言わないだろうな?まだまだ、俺がお前らから受けた諸々へと『お返し』としては全然足りていないんだが?

 ほら、さっさと立てよ。以前、俺に対してやってた訓練(拷問)みたいに、立てと言われたら立たないとダメだろう?お前らがそうしていたんだ。自分達がやらされても、文句は言わないだろう?」






取り敢えず、次で因縁とはけりを着けて、もう数話程度でこの章は終わらせる予定です



面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 環境、生まれ育ちのせいと言うのも少なからずあるでしょうが、同じ境遇のアレスが真っ当(?)に育ってるのでねぇ…… いや、アレスが割を食ったからこそアレスはまともに育ったのかもしれませんが。
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