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従魔士、再会を果たす

 


 仮の目的地として定めていた川原に到着した『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達は、予定の通りに火を興して調理を開始し、汁気滴る熱々で美味な昼食に舌鼓を打つ事となった。



 その後、食休みを兼ねて汚れ物を片付けた彼らは、またしても森の奥を目指すようにして進んで行く。




「いや~、しかし、今回の魚は美味しかったねぇ~。

 リーダー達の腕前は知ってたつもりだったけど、まさかあそこまで美味しい料理に仕上がるとは思って無かったよ。感謝感謝、だねぇ!」



「えぇ、えぇ!正しくその通りかと!

 素材が新鮮で、とても良いモノであった事も在るのでしょうが、やはりアレス様ガリアン様お二方の腕前が優れていたからこそ、あの様な天上の美味が出来上がったと言っても過言では無いでしょう!

 …………そして、モノは相談なのですが、戻るときにまた例の湖に立ち寄って、もう少し数を確保しておくと言うのは如何でしょうか?」



「…………いや、普段からして菜食のアンタが、そこまで気に入るって割りと脅威よね、アレ……まぁ、美味しかったのは確かにそうだけど、アタシとしてはアレが予想外に美味しかったわね。

 焼く前のヤツを食べちゃった身としては、未だにアレが同じモノだとは俄に信じられないんだけど……?」



「まぁ、アレはそう言うモノなのです。

 名前も、極端に酸っぱいから、って理由で『スッパル』って付けられた位なのですからね?」



「……うん、まぁ、確かに?火に掛ける前に手に付いた果汁を舐めてみたけど、アレかなり酸っぱかったからな。

 でも、ほんの少しだけ搾り入れたりすれば、普通にドレッシングの類いとして使えそうな気も……?」



「うむ。そう言う事であるのなら、当方はあの鱒の骨やら頭やらから取れたであろう出汁が気になっているのであるな。

 今回は彼等が食べてしまったが故に回収する事が出来なんだが、次の機会には確りと確保して色々と試してみたいモノである」




 他にも、火を通したスッパルの身の蕩け具合がほぼクリームであった事や、大食らいなガリアンが居てもなお従魔達に分けるだけの量になった鱒のバター焼きの感想等を言い合っていると、不意にナタリアが操作していたハズの橇が停止する。



 ソレまでは、採取出来るポイントが近くなったのならばそう声を掛けて来たし、停まるのならば停まるで予め声を掛けてから停まっていたが為に、会話を打ち切ってナタリアへと訝しむ様な視線が集中する。



 しかし、当のナタリアはそんな彼らの様子には気付いていないらしく、何処か呆然としている様で感極まっているかの様な表情を浮かべながら、前方のとある一点を凝視していた。




「…………そんな、ウソ……なのです…………皆、ボクの事を……待っていてくれた、のですか……!?」




 その、涙混じりの言葉に釣られて彼等が彼女と同じ方向へと視線を向けると、ソコには様々な種類の森の生き物達が、皆一様にナタリアへと視線を集中させていた。




 ソコには、鹿の様な角を生やしたモノがいた。


 ソコには、普段の彼らと同じ様な狼達がいた。


 ソコには、色とりどりな羽毛を生やした、数多くの種類の鳥がいた。


 ソコには、人も一呑みに出来てしまいそうな大蛇が、その身体の上に狐や狸に酷似したモノを乗せていた。


 ソコには、見覚えの在るソレと同じ様な模様を持った複数頭の熊がいた。




 そんな多種多様な彼らに共通している点として、その全てが『魔物』では無く『動物』であり、かつ捕食者と被捕食者が隣同士となっていても、天敵同士が隣接していたとしても喧嘩もせず、争う事もせずに、穏やかな様子にて彼女に向けて親愛の情が込められた視線を向けているのであった。



 端から見ていても敵意の類いは感じられず、それ故に彼らも気が付く事に遅れてしまっていたのだが、それでも目の前でナタリアがフラフラとした足取りにて橇を降り、目の前にいる獣の群れへと向かって無造作な足取りにて近付いて行くのを見過ごす事は出来ず、流石に止めようと手を伸ばそうとする。



 が、そんな彼らと彼女との間に、彼女の従魔である森林狼と月紋熊達が、まるで壁を作る様にして割って入り、その円らな瞳にて『そっとして置いて上げて欲しい』『邪魔はしないで上げて欲しい』と彼らへと訴え掛けて来た。



 そうして彼等が足止めをされている間に、彼女と獣達との間に在った距離は狭まって行く。


 最初こそ、動きを見せていなかった獣達だったが、彼女が近寄って行ったお陰か少しずつ動きを見せており、最終的には獣達の群れが彼女を呑み込んでしまったかの様にも見て取れた。




「い、いかん!?助けなくては!?」



「…………いや、待て。

 襲われている、にしては様子が変だぞ?」




 周囲に響く、グルグルと言う唸り声や様々な鳥の囀ずり。


 そして、ゴツゴツと言う何かをぶつけている様な鈍い音に、我慢しきれずに助けに割って入ろうとするガリアンを、様々なスキルを総動員させて見守っていたアレスがその場に押し留める。



 それに対し、何故止める?何故助けない!?との言葉が聞こえて来そうな程の視線をアレスへと向けるガリアンだったが、その次の瞬間には獣達の群れに呑み込まれてしまっていたハズのナタリアの笑い声が群れの中心部分から周囲へと響き渡り、突如としてナタリアの顔が群れの中からニョキリと生えて来た。



 流石に、そんな事態は予想していなかったらしく、咄嗟に得物を構えて警戒を強める『追放者達(アウトレイジ)』のメンバー達。



 しかし、そんな事はお構い無し、とばかりに笑い声を挙げながら、普段の彼女の身長では到底届かないであろう高さから頭を生やしながら、ゆっくりと群れの中から彼らの方へと移動し始めると、直ぐに彼女が月紋熊と思われる獣に乗っている状態なのだと言う事が判明した。




「あははっ!何だか心配させちゃったみたいなのですが、大丈夫なのです!この子達は、皆かつてボクがテイムしていた子達なのです!

 ズル達は、どうしても一緒に居たいから、と着いてきたのですが、この子達は、ボクの負担になる位なら、と従魔契約を解除する事を承諾してくれた、優しい子達なのです!

 ……でも、まさか、こうしてボクなんかにまた会いにきてくれるなんて、思っても見なかったのですよ……!」




 笑みを浮かべながら涙を流す彼女は、月紋熊の背中に乗っている為に高い位置に身体が在ったが、ソレは関係無い、と言わんばかりに周囲から獣達が彼女の元を目指して集まり、時に熊の身体をよじ登り、時に後ろ足で立ち上がり、時に遠巻きに首を伸ばして彼女へと身体を擦り寄せるその様は、嘗ての親愛と変わらぬモノを抱いている事を表すかの様でもあった。



 そんな彼女の様子に、最初こそ警戒を続けていたアレス達であったが、次第にそうやっている事が馬鹿らしくなったらしく、最後には何処と無く呆れを含んだ様な視線を彼女と獣達へと向けるのであった。





 …………なお、この少し後に、彼女から『今の仲間で大変良くして貰っている』との報告が彼らへと成されたお陰で、アレス達もナタリアの元従魔の獣達にもみくちゃにされる事になるのだが、ソレはまた別のお話である。






 ******






「…………くそっ!?何でだ!?

 あいつら、どうして俺達ですら追い付けない様な速度でこの森を移動出来ているんだ!?おかしいだろう!?」



「……確かに、普通の事態では無いな。

 だが、それでも俺達はやらなければならない。そうするしか、未来は無いのだから。

 ……だが、今日はもう遅い。仕方無いから、今日はこの辺で夜営するとしようか」



「……えぇ~?てっきりすぐ追い付けるとばかり思ってたから、テントの類いなんて持ってきて無いんだけど、どうするのよ?

 ソレに、森の中で火を焚くなんて、昼ならともかく夜にそんな事出来ないわよ!?」



「…………なら、今夜はソレで我慢するしか無いだろう?

 幸い、マントは羽織っているのだし、携帯食料とは言え食べ物は在るのだから、ソレで我慢するんだ。

 それと、見張りは全員で交代制にするしか無いから、その覚悟もしておいてくれ。

 ……大丈夫。コレが終われば、辛いことは全てが終わるんだから……!」






感動の再会?


ちなみに、動物系の従魔は基本的に人の言葉は何となくしか理解していません

と言うよりも、一部の高位魔物以外は人の言葉を理解出来ている、とは言い難い状態です


が、従魔士がテイムして従魔契約を結んだ相手とならば、簡単な言葉による指示を出したり、相手からも何となくイメージ的なモノを返してくれたりするようになれるので意志疎通が取れる様になる、と考えて頂ければ幸いですm(_ _)m



面白い、かも?と思って頂けたのでしたら、ブックマークや評価等にて応援して頂けると励みになりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今のところ魔物との戦闘がないから何とも言えないが、この森では偵察・運搬・他雑務をしない・できない戦闘職の方がいらない子じゃあねぇ?「森林」は皮肉にも継戦能力が落ちたから深林の奥まであま…
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