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パーティーから追放された万能型暗殺者がエルフの聖女、獣人の盾役、魔人の特化支援術士、小人の従魔士、オッサン槍使いと出会ったのでパーティー組んでみた結果面白い事になりました  作者: 久遠
『追放者達』過去の因縁と遭遇する

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聖女、拐われる

 



「…………あれ?アレス様?アレス様は、何処に?」



「……む?そう言えば、姿が見えぬな……手洗いか?」




 はたと気が付いた様子にて、恋人の姿を求めて周囲へと視線を巡らせるセレン。


 それに追随する形で、ガリアンも周囲を見回し、耳を側立てて求め人であるアレスの気配を探って行く。



 しかし、もうすぐ日が替わろうか、と言った時間帯であるにも関わらず、未だに雑然とした人混みに満ち溢れている店内は、それ相応の人影と雑音に満ちている為に、容易にはその姿を捉える事が出来ずにいた。


 半ば冗談でガリアンの述べた手洗い等に立っていると言う事であるのならば、見回したとしても目に映る様な場所にはいないと言う事になるのだろうが、だからと言ってそう言う理由にて席を離れる場合には、必ず一言断りを入れてから向かうのを習性としている為に、その可能性はあまり高くは無いだろう。




 それ故に、一体何処に行ったのか?何か在ったのでは無いだろうか?と言った不安が、彼女の脳裏を過って行く。




 唐突に、半ばトラウマとなりつつある元仲間と現聖女が彼女の目の前に現れ、彼女の心は不安定になっていた。



 また、奪われるのでは無いだろうか……?


 また、棄てられるのでは無いだろうか……?



 そんな思いが彼女の心に根を張り、ジワリジワリと締め付けて蝕み始めたその時に、彼女の心の支えとなり、不安を払ってくれたのが、何を隠そう彼女の恋人であるアレスその人だ。



 以前から、想いを寄せている対象ではあった。


 ……だが、こうまでも寄りかかり、己の支えとする程に心の中に引き込んでいた訳ではない。



 しかし、あの時彼は言ったのだ。




 必ず戻る。だから、待っていて欲しい。




 そんな、真摯な言葉を受けた時から、彼女の心の奥底まで彼の存在は刻み込まれ、彼無くしてはただ立って歩くだけすらも覚束無い様な感覚に襲われる様になっていた。



 ソレ以前からも、彼の言葉を聞けば心が弾み、彼から微笑み掛けられれば気分が高揚した。


 しかし、今は彼の姿が見えないと心は悲しみに染まり、彼の存在が感じられないと血の気が引いて行く思いになる。他の女性と話している様を目撃してしまった時には、まるで世界が崩壊した様な心持ちにすらなってしまう様になっていた。



 そんな、最早『依存』とも呼べる様な状態であったが為に、必死に視線を巡らせてアレスの姿を探し求めるセレン。


 しかし、彼女の求める心と反比例するかの様に、彼の姿は一向に見付ける事が出来ず、端から見ていても分かる位に表情を暗く沈めてしまう。



 明るいハズだった打ち上げの席が、目に見えて暗くなって行く彼女の姿によって釣られる形で暗くなって行く。



 そんな空気に耐えられなかったのか、若干気まずげにしながらヒギンズが咳払いをしてから口を開く。




「…………あ~、その、何と言うか……リーダーなら少し前に席を外したよぉ?何でも、外せない大事な用事が出来たから行ってくる、って言ってた位だから、余程の用事なんじゃないのかなぁ?」



「……え?ソレ、私は何も聞いていないのですが……?」



「……まぁ、君には隠しておきたい様子だったから、今の今までオジサン黙ってたんだよねぇ」



「何でですか!?そんな重要な事を、なんで黙っていたのですか!?

 ……まさか、慌てふためく私の姿を、内心で嗤っていた、とでも仰るつもりでは無いでしょうね……?

 もし、そう仰るのであれば、私の全霊を賭けてでも貴方に一矢報いるのも吝かでは無い気分なのですが……?」



「………………いや、その、ねぇ……?

 付き合ってる彼女に『内緒にしておいてくれ』って言って男が出ていく、なんて状況って事はつまりは二つに一つでしょう?

 浮気相手に会いに行くか「浮気!?」はいはい、少し静まってね?オジサンも、それは無さそうだと思ってるから。

 もしくは、もしくはだよ?彼女に対してプレゼントでも用意して、ビックリさせて喜ばせる為にサプライズでも仕掛けたかったんじゃないの?って話だよぉ」



「……………………あっ……」



「……ほら、ねぇ?こうなりそうだ、って分かってたから、オジサン言いたくなかったんだよぉ……サプライズの先バレなんて、一番興が覚めるやつじゃないさぁ……」




 やっちまった、と言わんばかりの仕草にて、天井を仰いで目元を覆って見せるヒギンズ。



 彼としては、そうである、と言う確証が何か在る訳ではないが、恐らくはそうなのであろうとアレスの心情を慮り、上手い具合に成功させてやろうと気遣っていたためにどうにかはぐらかそうとしたのだが、彼女の猛攻によって結局口を割る羽目になってしまったので、双方向への罪悪感にて唸り声を挙げてからグラスを煽って黙り込んでしまう。



 しかし、当のセレンはそんな彼の様子を気にする素振りを見せる事もせず、恐らくはこの後仕掛けられるであろう彼からの愛情の証であるサプライズへと想いを馳せ、どんな事をしてくれるのか?どんなモノを贈ってくれるのだろうか?どんな言葉を掛けてくれるのだろうか?と期待で胸を高鳴らせ、その整った相貌をだらしなく崩していた。




「…………アタシが言えた事じゃないかも知れないけど、セレンも結構変わったわよねぇ……。

 最初に会った時の聖女然とした様子からじゃ、こんな事になるなんて予想も出来なかったんだけど……?」



「ボクが知ってるのは半分くらい『こうなって』からなのでよく分からないのですが、そんなに違うモノなのです?」



「いや、結構違うからね?

 今でこそ、恋する乙女オーラ全開、幸せオーラ全開だけど、最初に会った時は、そうね…………血の涙を流しながら優しく振る舞っている鉄の女、みたいな感じ、かな?

 少なくとも、あそこまで柔らかく笑う様な事も、あそこまでだらしなく弛んだ顔をする事も見た覚えは無いから、やっぱり変わったんじゃないの?」



「…………ふ~ん?そんなモノなのです?」




「……すみませ~ん、セレンさん、って方が居られるのってこのテーブルで大丈夫でしたか~?」



「「「「「んん??」」」」」




 興味が在るんだか無いんだか良く分からない様な返事をナタリアがしていると、別段注文を付けた訳ではないのに店員が彼らのテーブルへと近付いて来て、何故かセレンが居るのかどうかを問うて来る。



 ソレにより、入っているアルコールの影響を感じさせない動作にて各自が得物に手を掛け、疑問に満ちながらも眼光を僅かに鋭くしてその店員へと視線を集中させる。



 しかし、そんな彼らの様子に気が付いていないらしい店員は、軽い感じで用件を口にした。




「えぇっと、もしセレンって方がいらっしゃるのでしたら、これを聞いたらこの店の裏まで来て欲しい、と言付かっています。今なら案内しますけど、どうします?」



「…………仮にいたとして、そんな何処の誰からの言付けなのかすら分からないのに、行くハズが無いんじゃないのかなぁ?」



「……一応、言付けをした方は『アレス』と名乗っていましたけど、お知り合いでは無かったですか?そう名乗れば分かるハズだ、と仰っていたのですが……」



「そう言う事は早く言って下さい!

 ……どうやら、アレス様の準備が終わったらしいので、私少し行ってきますね♪」



「……あぁ、了解したよぉ……」




 店員の言葉を疑う事もせず、寧ろノリノリで着いて行くセレン。



 その後ろ姿を、若干の呆れの混じった視線にてヒギンズ達が見送って行く。



 そして、店員の案内によって店の裏手まで出ていったセレンは、不潔では無いにしても、特に何がある、と言う訳でもない只の路地でしか無いその場所に、思わず眉を潜めて店員へと問い掛ける。




「…………あの、本当にここで合っていますか?

 誰もいないですし、何も無い様に見えるのですが……?」



「と言われましても、私はここに案内する様に言われただけですので……あ、でも、確実に空き地の真ん中に誘導してくれ、とは言われていた様な……?」



「…………空き地……?と言う事は、アレでしょうか……?」




 怪訝そうにしながらも、名前の出されているアレスに対しての信頼感により、目の前に広がる空き地の真ん中へと進んで行くセレン。



 そして、指定された空き地の真ん中に立ち、周囲へと視線を巡らせた正にその時、彼女の視界に見慣れた魔力による発光現象が発生する。



 暗闇に慣れていた彼女の瞳は、その強烈な光によって明暗に対する順応を喪ってしまい、彼女の視界は真っ白な光に染め上げられる。



 頭では『直ぐに動かなければ!』と言う事は理解していながらも、摂取したアルコールと視界を奪われた事により足が固まってしまい、成す術無くその光の中に呑み込まれてしまう。




 そして、その光が晴れた時には既に、セレンの姿は空き地の中には存在しておらず、ただただ何も無くなってしまった空き地を腰を抜かした店員が呆然としながら眺めているだけであった。





アレスもセレンも不穏な雰囲気

果たして、犯人は一体!?



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