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重戦士、実力を示す

 



「……やれやれ、そう言う単独行動を取るな、と言うつもりは当方には無いが、それでも一言掛ける程度はするべきであろう?」




 若干咎める様にアレスへと声を掛けるガリアンだったが、その表情は獣と同じ造りの顔面であったが為に読み取り難くは在るものの、言葉とは裏腹にニヤニヤとした笑みを口元へと浮かべていた。



 大方、アレスの実力の一端を、図らずとも目にする事が出来たが故のにやけ面なのだろうが、狼の顔でそんな事をされていたとしても表情を読み解ける方が少ないので、この場にいた『追放者達(アウトレイジ)』の面々でさえ何を思ってそうしているのか理解しかねる雰囲気を醸し出していた。




「しかし、本当に『大魔導術』級の魔法を扱えるとはな。

 見た処、暗殺者としての動作に最適化させているとは言え、剣術の方も申告の通りに『剣王術』級である様子であったし、これで何故追放なぞされたのだ?

 むしろ、そなたの古巣の『連理の翼』は何を考えてそなたを追放したのやら……。甚だ不可解と言うモノよ」



「おいおい、もしかして、信じてなかったのか?残念ながら、見ての通りに申告通りの実力だよ。追放された理由も、言った通りに俺個人が嫌で仕方なかったんだろうさ。大方ね」



「だとしても、例え豚鬼(オーク)相手であろうと、ここまで一方的に戦運びを出来る者を、恨みの残るであろう形で一方的に追放するなど、何を考えていたのかとんと理解出来ぬよ」



「そうそう。てかアンタ、こんなに強かったの?

 あからさまにDランクが出来る動きして無かったし、出来て良い動きでもなかったわよ?」



「そうですね。私の目から見ても、最低限Cランクでも上位の実力が無いと出来なさそうな動きでした。

 少なくとも、私では目で追うので精一杯でしたからね?」



「そりゃそうさ。言っただろう?『あいつら『連理の翼』はAランクのパーティーだった』ってさ。つまり、あいつらに連れ回される依頼は、必然的にAランク以上、って事になるのさ。

 そんな依頼が出される様な場所に連れ出されて、その上で碌に助けられもせずにほぼ放置されるんだぞ?

 そうなりゃ、生き残るには自分で自分を助けるしかないんだから、嫌でも強く迅くなるさ。そら、早い処討伐証明の耳を削いでしまうとしようや」



「まぁ、言われてみれば道理よな。

 しかし、ここまでの能力を見せられれば、年上でランクも一応は上の身としては少しは良いところを見せねばならぬと言うモノよ。

 と言う訳で、次に遭遇する群れに関しては、巣にいるであろう本体で無ければ当方が貰ってもよろしいかな?」



「まぁ、俺としては別に構わないけど?」



「私も、構いませんよ?」



「楽出来そうだし、アタシの出番はまだみたいだから別に良いけど?」



「かっはっは!なんとも正直な言葉よ!

 なれば、そこの群れは当方が貰うが文句は無かろうな!!」



「…………ふぇ?ひゃあ……!?」




 他の面々からの了承が得られると同時に、一歩大きく踏み込みながら腰に差していた手斧を投擲するガリアン。



 その突然の行動に、間の抜けた声を出してしまったタチアナは、その投擲された手斧の行き先に視線を向けると驚きの声を出してしまう。



 何故ならそこには、今にも彼らには対して構えた槍を擲とうとしていた豚鬼(オーク)が、その豚にも似た顔面を投擲された手斧にて打ち割られ、噴水の様に周囲に血液を撒き散らしているスプラッタな光景が広がっていたからだ。



 普段の勝ち気な言動からは考えられない程に可愛らしい声を挙げていたタチアナはともかくとして、当然の様にスキルを発動させっぱなしにしていたアレスと、これでもソレなりに修羅場を踏んでいるセレンは、先程の約束の事も在った為に、頭を打ち割られた豚鬼(オーク)の仲間がその背後からこちらへと近付きつつ在る事を知りながら、それぞれ得物の柄に添えていた手の力を抜き、観戦する姿勢へと移行する。



 それを目の当たりにしたからか、それとも種族的な特徴が表に強く出たのかは定かでは無いが、好戦的で獰猛な笑みを口元に浮かべて鋭い犬歯を露にすると、それまで背負っていた大楯と戦斧を抜き放って構え、そのままの状態で後続の豚鬼(オーク)の元へと突撃を仕掛けて行く。



 比較的地面の柔らかい森の中であるにも関わらず、平素と変わらぬ速度にて距離を詰めて行く。


 その足元は、全身鎧に加えて巨体と呼んでも相違無いガリアンの体重によって一歩踏み出す毎に陥没しており、その総重量が凄まじい事になっているのを物語っている。



 そんな重量物が、かなりの速度が乗った状態で突っ込んで来た為に、豚鬼(オーク)の方もそれなり以上の重量を持っていたにも関わらず、後続の四頭の内の二頭は蹴り飛ばされたボールの如き勢いにて吹き飛ばされ、叩き付けられた木をへし折ってようやく止まり、倒れてきた部分にて下敷きにされてしまう。



 吹き飛ばされていた空中にて、既に首が変な方向を向いていたり、手足が逆側を向いていたりしていた為に、もう脅威になり得ないと判断したのか、二頭を吹き飛ばした体勢から強く足元を踏ん張ると、大きく振り回す様にして手にした戦斧を振り回す。



 最初の突撃こそは動揺した不意を突かれた為に無防備に受ける事になった豚鬼(オーク)達だが、流石にそこまでの大振りであれば、幾ら愚鈍な豚鬼(オーク)であれども反応する事が可能であり、かなりギリギリではあったものの、無事に回避して見せた。



 しかし、それにより、立ち位置として、他の面々が完全にガリアンの背後に入る事になり、万が一にも無いとは思われるが、戦闘体勢を解いている他の面々へと回り込んで攻撃しようと試みる事が不可能になってしまう。



 もっとも、そんな作戦も採れはした、と言うだけで、それを考え付いた可能性は低く、その上で目の前で分かり易く『敵』をやっているガリアンへと視線と意識は集中されているので、最早採り様の無かった選択肢かも知れないが。



 とは言え、彼の方にそんな事情を汲んでやらねばならない理由は無いし、むしろその選択肢を潰さんが為に動いていた事も在り、今も手にした戦斧の背にて盾を叩いて豚鬼(オーク)達を挑発し、自身へと意識を集中させ続けていた。



 当然、仲間を殺された上にこうまでして挑発されてしまっては、ボスから与えられていた指令も、元々出来の悪かった頭からは完全に消え去っており、ただただ目の前の仇を叩き殺す事だけに集中し、その為だけに手にした棍棒を振りかざして構えられた盾へと目掛けて振り下ろす。



 通常であれば、受け止めただけで腕と言わず身体がひしゃげるであろうその一撃に、挑発を仕掛けていた本人のガリアンは僅かに笑みを深めただけで特に気負った様子を見せる事もせず、意図も簡単にその攻撃を捌き、衝撃の方向を地面へと向けて整えてやる。


 すると、全力で振られた棍棒の勢いに吊られ、必然的に前のめりに倒れ込む。当然、そんな絶好の隙を見逃してやる必要の無い彼が、わざわざその隙を見逃すハズもなく、首筋に戦斧の刃を叩き込んで物言わぬ骸をもう一つ生産する事に成功した。



 そうして新しく作り上げた死体を蹴り転がし、わざとらしくニヤニヤとした笑みを口元に浮かべ、再度盾を叩いて最後の一頭に対して挑発を行って行くガリアン。



 そんな彼に対し、仲間の遺骸の扱いに憤慨したのか、それともただ単に彼からもたらされた威圧感から来る恐怖に負けたのかは不明だが、叫び声を挙げながら突っ込んで行く最後の一頭。




「ぶぎぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!」



「……その意気や良し。しかし、当方を討ち取るには、些か覚悟と実力が足りなかった様だな。『パリィ』!」




 しかし、そんな決死かつ必死の攻撃も、ガリアンの構えた盾を起点に発動されたスキルによって受け止められ、文字の通りに打ち込まれた勢い・威力のそのままに弾き返されてしまう。



 勢いよく得物を打ち上げられた事により、必然的に両腕が上へと跳ね上げられ、がら空きになった胴体へと片手で振るわれたのとは思えない程の威力が込められた戦斧の一撃が豚鬼(オーク)の胴体を薙ぎ払い、今回遭遇した群れの最後の一頭を絶命させるに至ったのであった。

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