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『追放者達』、唆した愚か者と決闘する

 


 アレスがギルドにて提案した件を、ネイザンが了承してから数日が経過した頃。



 両者の姿は、ギルドに併設されていた訓練所に存在していた。




「はっ!逃げずに出て来た事だけは、誉めてやるよ。

 だが、本気で俺様に勝てると思ってやがるのか?

 俺様は、あのドラゴンすら退けた、もうすぐAランクに昇格が決まってる『追放者達(アウトレイジ)』のリーダーだぞ?

 今なら、降参を受け入れてやらんでもないが?もっとも、最低でもこの観衆の中で全裸土下座して、お前の後ろに居る森人族(エルフ)女を俺様に差し出すなら、って条件が着くけどなぁ!!」



「頭の弱い猿程良く吠えるって本当なんだな。

 いい加減、バカの一つ覚えみたいに『俺様は『追放者達(アウトレイジ)』のリーダーなんだじょ~!』以外の言葉を喋ったらどうなんだ?

 それに、噂に聞く『追放者達(アウトレイジ)』のメンバーっぽいのはいないけど、ソレってどう言う事だ?

 まさか、お前一人で十分だから、って連れて来なかった、とか言ってくれるなよ?

 負けた後で『あの時は全力じゃなかったから~』とか抜かされても、面倒が過ぎるだけなんだけど?」



「はっ!テメェらみたいな駆け出し相手に、恥ずかしくて全力なんて出せるかよ!

 ……と言いたい処だが、安心しな。アイツらは今依頼に出てるから、こっちには来ねぇよ。

 まぁ、その代わりに、俺様が今の今まで冒険を共にしてきた部下達がテメェらの相手をしてくれるとよ。

 俺様の新しい部下共には及ばねぇだろうが、テメェ如きに手こずる様なこいつらじゃねぇから、安心して無様に負けておけや」




 片や、内心では詰まらなさそうにしていながらも、ソレを表に出す事はなく、簡素な革鎧と長剣を腰に差し、それと似た様な装備を身に纏った仲間達『四人』と、九頭の動物系の従魔を背後に控えさせているアレス。



 片や、内心でも自身の勝利を疑わず、既に勝った後で目の前の極上の(メス)をどう味わってやるかを考えるばかりで相手の実力を計ろうともせず、背後に控えさせているこの近辺では見た覚えの無い只人族(ヒューマン)魔人族(イヴル)の混合パーティー六名(全員男)と共に、店売りの中では高級品なのであろう真新しい装備を、開け放たれた天井から差し込む陽光にてギラギラと光らせなが厭らしくニヤニヤと笑っている。



 そんな彼らの他に、審判として、かつ決闘の際に取り交わす両者の間での約束事を確実に、かつ速やかに達成させる為の立会人として、あの時の当事者でもあるシーラが。


 双方の関係者であり、かつ今回の決闘に於いての中心人物でもあるが故に双方に対して『不参加』と言う形を取っているタチアナが。


 そして、当時ギルドの建物に居たが為に、またソレを人伝に聞き及んだが故に、彼らの決闘を見学しに来た不真面目かつ不勤勉な冒険者達が、観客として彼らを取り囲む様にして待機している。



 そんな、闘技場の奴隷戦士にでもなったかの様な心境にさせられる環境の中で、十メルト程離れたアレス、ネイザン両陣営の中心地へと歩み出たシーラが、確認の為に声を張り上げる。




「……コレより、申請の在った通りに、アレス、ネイザン両者による決闘を開始します!

 勝った方が、両者共に面識が在り、現在『追放者達(アウトレイジ)』に所属しているタチアナ・グレンデールの今後に対して強くアドバイス出来る権利と、常識の範疇で相手方に一つ要求を呑ませる事が出来る。

 双方ともに、この条件で間違いないか!?」



「……えぇ、大丈夫です」



「あぁ、構わねぇよ。もっとも、俺様達が勝つ以上は、そんなクソ下らねぇ確認なんざ必要ねぇけどよぉ」



「……続けて、参加者の確認です。

 アレス側は、自らの参加している冒険者パーティーのパーティーメンバー達四人とその従魔達。ネイザン側は、自身の所属している冒険者パーティーである『闇を裂く刃』のメンバー六名。

 現在挙げられているメンバー以外は、ここに連れてきていたとしても後から参戦する、と言った行為は反則と見なして重い罰則を課す事になります。

 双方ともに、間違いは無いですね?」



「えぇ、こちらは無いですね。

 在るとすれば、向こうの方では無いでしょうか?」



「……あぁ?んなもん、俺様達に在る訳ねぇだろうがよ?

 ……あぁ、もしかして、テメェあれか?俺様が『追放者達(アウトレイジ)』のメンバーでも乱入させて勝負をご破算にしようとしてる、とか思っちゃってる口な訳か?

 心配しねぇでも、アイツらは今回参戦しねぇから安心しろって。まぁ、俺様達にベコベコのグチャグチャにされるのは決まっちまってるけどよぉ!!」



「……では最後に、この決闘に於けるルールを説明します。

 両者、魔法・持ち込んだ武器の使用は全面的にアリ。

 但し、相手を殺してしまう事だけは不可。

 審判の判定が下された時点で戦闘を止めなければ退場処分。

 万が一相手を殺して決まった場合も退場処分です。

 基本的に攻撃を当てても良いですが、殺さない様に手加減するか、もしくは峰打ちの様な形を取るか、それか急所へと突き付けて誰の目から見ても『負けている』と言う状態にして下さい。

 良いですね?」



「えぇ、俺達は良いですよ。

 まぁ、相手方は守るつもりは無さそうですけど、ね……?」



「ハッ!当然だろ?

 なんで、強者たる俺様達が、テメェみてぇな駆け出し如きの意見を、これ以上聞き届けてやらなきゃならねぇんだ?あぁ?

 俺様は、俺様のやりたい様にやる権利が在る。何故なら、俺様にはドラゴンを退けたって言う確かな実績が在るからだ。

 だから、テメェの意見なんぞ聞くつもりはねぇし、クソ下らねぇルールになんぞ縛られるつもりもねぇ。

 そこの審判も、カスみてぇな判定出しやがったら穴がボロボロになるまで犯してから最下層のスラムに棄てて来てやるから覚悟しておけよ?」



「…………さて、この物言いだけで、最早反則負け判定を出しても良いとすら思うのですが、それでは癒着を疑われたり、観客の皆さんが暴動を起こしかねないので、取り敢えずは止めておくことに致しましょう。

 では、死者を出さずに互いの思うままに闘って下さい。

 決闘開始!!」



「おぉぉぉぉぉぉらぁ!!!」




 シーラの開始の掛け声と同時、むしろ若干フライング気味に雄叫びを挙げながら背中に背負っていた大剣を引き抜いて駆け出すネイザン。


 それに続く形で、斥候を兼ねているのであろう只人族(ヒューマン)の軽戦士が投げナイフや戦輪(チャクラム)と言った投擲物を投擲し、魔人族(イヴル)の弓術士が連続して矢を放って来る。


 更に、突出しているネイザンを追い掛ける形で、軽装の槍術士と双剣士の只人族(ヒューマン)が駆け出し、更にその後ろに続いて重装備で盾役と思われる重戦士が続き、最後に魔術師と思われる杖を持った魔人族(イヴル)が口許を動かしながらアレス達へと接近して行く。



 未だにCランクに過ぎないとは言え、ソレなりに地元では名前が売れている冒険者パーティーであり、粗暴ながらも報酬の支払いは(自分基準で、ではあるが)働いた者にはキッチリ支払っている事も相まって、中々様になった突撃陣営となっている。



 そんな、見ているだけで物理的な圧力を受けそうな勢いで突撃してくる『闇を裂く刃』に対し、アレス達も反撃の態勢を整える…………事は敢えてせず、更には得物を構える処か柄に手を掛ける事すらせずに、仲間内で話し合いを開始する。




「……それで、どうするよ?

 誰か一人が本気でやって、微塵も通用しそうな手応えも残してやらずに圧勝、とかでも良いと思うんだけど?」



「いやいや、ここは、敢えて向こうのしたいことを全てさせてから、当方らが鼻歌混じりにそれらを踏み潰してやる様を見せ付けてやるのが良いのではないか?」



「いえいえ、ここは一人一人確りかっちりキッチリと個別撃破していって、最後にあの無法者を残して精神に多大なダメージを負わせながらいたぶるのが良いかと……」



「うーんと、えーっと……あ!

 じゃあ、ルールに抵触しない為に殺さない様にしながら、それでいて確実に冒険者を続けられなくなる程度の欠損を与えるのはどうなのです?」



「オジサンとしては、あのタチアナちゃんをバカにしてくれちゃった連中の鼻っ柱を、無惨にへし折って粉々に粉砕してあげたいんだよねぇ。

 だから、それぞれが得意だと思ってる分野で相手にしてあげて、その上で圧倒してあげるのが一番だと思うんだ。

 だから、今回はちょ~っとばっかりオジサンに協力してくれると有難いんだけど、良いかな?」



「…………まぁ、良いんじゃないか?

 時間的猶予もあんまり無さそうだし、俺はソレで良いと思うけど?」



「当方も良いぞ?」「では、それで行きましょう」「なのです!」



「じゃあ、取り敢えずヒギンズの意見を採用するとして、俺達は何をすれば良いんだ?」



「そう?なら――――」




 そうして手早く考えを説明したヒギンズは、普段の『草臥れた中年』と言う雰囲気を払拭し、何処か精悍さすら感じさせる横顔に、見ているだけで悪寒がしてくる様な凄絶な笑みを口許に浮かべるのであった。




次回、彼らの企みが明らかに!?


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