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初恋の痛み  作者: 海星
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キースとの出会い(過去)

今日はこれで二話目です。

ぼちぼち投稿するので、よろしくお願いします。

 アリアがキースに出会ったのは、アリアが七歳の時だった。王都の屋敷でアリアの誕生日会を開いた時に、年齢の近い子供を集めたのだが、その中の一人がキースだった。彼はどこかつまらなさそうに、口を尖らせて足で床を蹴っていた。


 その様子からわかってはいたが、彼は年下の女の子と遊ぶよりは同い年であるアリアの兄と遊ぶ方が楽しいようで、誕生日会に来ても挨拶だけして、そのまま兄と屋敷の外に行ってしまった。


「お兄さま、まって!」


 本来なら来てくれた他の子を放って行くことはありえないが、その時のアリアには、兄が一番だった。だから、置いていかれまいとオーガンジーを重ねて膨らんだドレスの裾を掴んで必死に走った。


 それでも兄とキースはアリアを見なかった。そして──。


「あっ……!」


 足元の石につまずいて、アリアは思い切り転んでしまった。顔から転んで痛いのと、ドレスが土まみれになり折角のおしゃれも台無しになった悲しさで、アリアは泣きそうになった。


 それを見た兄はやれやれという表情で近づいてきたが、それより先に来てくれたキースがぶっきらぼうに手を差し出してくれた。


「……大丈夫か?」

「うん……じゃなくて、はい」

「ちびっ子が無理して敬語なんか使うな」

「……自分だってちびっ子のくせに」

「ああ? 何か言ったか?」


 彼に立たせてもらいながら、可愛くないことを呟く。そもそも自分たちが置いていかなければ自分は転ばなくても済んだのだという言葉は飲み込んだ。


「これだから女は……」


 その言葉にカチンときて、アリアは言い返した。


「女だからなに。あなたは男のくせにって言われて嫌じゃないの? 自分が嫌なことを人にしてはいけませんって教えてもらわなかったの?」


 その言葉にキースは虚をつかれたみたいだった。だが、みるみるうちにバツが悪そうな表情になり、ボソッと呟いた。


「……ごめん」


 そんなに素直に謝ると思わなかったアリアは少したじろいだが、相手が謝ってくれたのだからと自分も謝った。


「こちらこそごめんなさい。あなたはお兄さまのお友だち?」

「ああ、俺はキースだ。今日はロイと遊ぶつもりで来てたんだけど……悪かったな」

「? さっきのことなら……」

「いや、ずっと態度が悪かったから……こういうのは苦手なんだよ。今のうちから結婚相手を探してるみたいで。だって俺たちまだ子どもだろ? そんなこと言われてもわかんねえよ」


 確かにそうだ。この国では社交界にデビューしたらもう大人とみなされるため、十五歳で成人とみなされる。

 だが、デビューする前から政略のために婚約する子もいた。そう考えると今から結婚相手を探すのも早くはないのかもしれない。

 でも、アリアにはまだそういうことは早いと思っていて、言われるまで今日の会がどういう意味を持つのかわかっていなかった。


「……そうだね。いずれは誰かと結婚するのかもしれないけど私もわかんない。好きな人と結婚できるかもわかんないし」

「そうだろ? 俺は今が楽しければいいんだよ」

「あなたって幸せなひとね」

「まあな。考え過ぎても仕方ないだろ?」


 あっけらかんと言う彼にアリアは興味を持った。


「ねえ、お兄さまだけじゃなくて、私とも友だちになってくれない?」

「は? 突然なんだ?」

「あなた面白そうだから」

「って、ほめてないだろ」


 彼は眉をひそめたが、アリアは気にしない。それでどうなのとさらに畳みかけて、最終的にアリアの粘り勝ちで、キースは渋々頷いた。そうしてアリアとキースの交流は始まった。

ありがとうございました。

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