プロローグ
新章開始!
アスタテスラ国サイド。
バルデハイム王国とアスタテスラ国との戦争は当初はアスタテスラ国が有利に進めていたが、次第に劣勢に陥っていた。
ドックライム公爵の戦略と王弟クックスライドの兵達の戦意向上の働きによって現在はバルデハイム王国が優勢だ。
対してアスタテスラ国側は疲労と兵糧減少によって士気が下がり、軍備増強の為に徴兵されて不満が積っている。
アスタテスラ国の上層部は現状を打開する為に、更に徴兵を行い兵糧を徴収した。
その結果、平民の不満が積り、一部の領地では平民が暴動を起こして、貴族が率いる騎士達に鎮圧された。
鎮圧された平民達は罪人として戦争の最前線に送られる事になる。
「……また暴動が起きたようだな」
「平民は忠誠心というモノが無いのか?」
「今は国民が団結する時だ! 団結できない愚か者は国民では無い!」
「戦争なのだから平民は進んで食料を差し出すべきだろう」
「自分の事しか考えない平民には、貴族の考えなど分からないのだろう」
「まったくだ。だから平民は命令しないと動かない愚か者共だ」
「騎士が命を懸けて守ってやっているのに、平民は自分の事しか考えない」
「暴動を起こした領民には忠誠心を受け付けるべきだ!」
「その通り。見せしめに数人殺せば問題無い」
「待て、殺すよりも戦場に送れ。どうせ死ぬから戦死させた方が効率的だ」
「その通りだな。国の為に死ぬのなら平民も喜んで死ぬだろう」
「……しかし現状は如何せん。どうにかしてこの現状を打破するべきだ」
「……士気が落ちているからな。国王陛下に陣中見舞いでもさせるか!」
「それは素晴らしい考えだ! 陛下が兵達を激励するのなら士気も上がる!」
「士気が上がれば、バルデハイム王国の賊軍など一網打尽だ!」
「しかし陛下が首を縦に振るか?」
「王太子に進言してもらおう。王太子の言葉なら嫌とは言うまい」
「そうだな。王太子にお任せしよう」
アスタテスラ国上層部の貴族達は王太子に国王陛下陣中見舞いを進言した。
「……確かに良い考えだが、父上が首を縦に振る訳ないだろう。何らかの口実が……、アレがあるか!」
「アレとは?」
「父上が側室に迎えたいという女がいる。その女と一緒に陣中見舞いをさせれば承諾するはずだ」
「なるほど! 良い考えですな!」
「戦争中だが気分転換という事にすれば嬉々として承諾するだろうな」
「してその女とは?」
「旅芸人の踊り子だ。貴族ではないので王妃は側室に反対をしている」
「それはそうでしょう。平民を側室になんて」
「しかし貴族の側室は信用が出来ない。父上の性癖の件も有るからな……」
「……確かに貴族令嬢には無理ですな」
「だから平民の女だ。父上は平民なら使い捨て出来ると思っているからな」
「……何人の女が捨てられたのやら」
「それを知っている者は父上だけだ。父上の性癖を私達が知っていると分かったら、物理的に首が飛ぶぞ」
「私は知りたくなかったです」
「私もだ。何が悲しくて親の性癖を知らなければならない」
「……王妃は御存じですか?」
「……知っていたら離婚だ」
アスタテスラ国の上層部貴族の、更に上の王太子との極秘会議の結果、アスタテスラ国王は砦の陣中見舞いに行く事になった。
この陣中見舞いは極秘事項だか、バルデハイム王国の密偵は知る事になる。
エルドラージ王国サイド。
バルデハイム王国と戦争する事になったエルドラージ王国。
バルデハイム王国軍は先代国王の敵討ちという事で士気は高い。
逆にエルドラージ王国軍は退却戦をとり被害を少なくする様に務めているので、バルデハイム王国軍は快進撃で領地を占領している。
エルドラージ王国の元ヨーデンポリー王国王都近くで、エルドラージ王国軍は撤退戦を止めて迎撃にかかる。
バルデハイム王国軍は一度後退して戦力を集める事にして、いったん戦場が停滞する。
そしてエルドラージ王国の上層部の更に上の王太子との極秘会議をしている。
「今日の議題は『バルデハイム王国軍との戦争の際に必要な食べ物について』。みんな手を挙げて自分の考えをハッキリと言いましょう!」
「……コンキデムス様」
「はい、マユーラさん」
「お願いですから遊ばないでください。エルドラージ王国は危機的状況なのですよ」
「遊んでないよ? 食べ物は兵達の士気にかかわる事だよ? アンケート結果の一番はカレー。二番はカレーパン。三番は温かくて甘くて心に響く歌の様なお菓子。質問です! 三番目のお菓子の名前はなんでしょうか?」
「コンキデムス様!」
「大丈夫! 作戦は計画通りに進んでいるから。今からバルデハイム王国軍を一気に叩いてルックナー砦を落すから」
「……バルデハイム王国と反対側は?」
「あっち側も大丈夫。情報操作してバルデハイム王国と戦争中とは知らないから。現在膠着状態だよ」
「……どうしてバルデハイム王国と戦争する事になったのでしょうね」
「先代国王が暗殺されてバルデハイム国王が怒ったからだよ。……濡れ衣着せられたな」
「先代国王の暗殺ですけど、誰の犯行だと思いますか?」
「アスタテスラ国かバルデハイム王国の貴族じゃないの?」
「……小さき守護者が守護していたのに暗殺されたのですね」
「小さき守護者はバルデハイム国王と一緒に居たから。先代国王と一緒だったら暗殺されなかっただろうね」
「聞いた話では小さき守護者はとてつもなく強いと」
「うん、強いね。彼は私と同じだよ」
「コンキデムス様とですか!」
「うん、でも小さき守護者はアスタテスラ国に行っているらしいから、今の内にルックナー砦を占領する。ルックナー砦があればバルデハイム王国に有利に立てるからね」
「大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。だから心配しないでくれ。愛しの婚約者よ」
「……コンキデムス様。茶化さないでください」
「茶化していないよ。私はいつでもマユーラを愛しているよ。……頬を赤く染めた君の瞳は百万ボルトだよ」
「意味不明な言葉を仰らないでください!」
「君の瞳は私を虜にしてしまうほど、とても美しいという事だよ。マユーラ、愛している」
「コンキデムス様」
「……御両人。二人の世界に入らないでください」
第三者が現れてコンキデムス王太子とマユーラは離れる。
「ど、どうした! 急に入って来るなよ!」
「密偵の長として報告に来ました。報告書です。では失礼します」
密偵の長はため息をついて報告書を渡して退室した。
コンキデムス王太子は「……馬に蹴られろ」と言いながら報告書に目を通す。
「……バルデハイム王国の神殿長の件ですか?」
「うん。報告書によれば国外退去されたって。理由はバルデハイム国王に諫言したら怒って国外退去を言い渡されたらしい」
「バルデハイム国王は冷静沈着で悪い噂は聞かない方ですよ。そのような方が神殿長を国外退去って……」
「先代国王暗殺の件で起こ怒っていたからね。その怒りの矛先が神殿長に向いたんだろうね」
報告書から目を話して天井を見るコンキデムス王太子。
「私も気をつけないといけないな。一時の怒りで忠臣の諫言を無下にしないように」
「コンキデムス様がそのような事をなさらない様に私が見守ります」
「ありがとう、マユーラ。……そろそろ行ってくるよ」
仕事に向かうコンキデムス王太子をマユーラが止める。
「このペンダントを私だと思って大切にしてください」
「ありがとう、マユーラ。大事にするよ」
ペンダントを受け取ったコンキデムス王太子はマユーラの頬にキスをして退出した。
バルデハイム王国サイド。
バルデハイム王国の姫とその側近達が城内の会議室で話し合いが行われている。
「ミリアリア様。私達が望むのはただ一つです。分かりますよね?」
「もちろんです。アルム様との付き合い方ですよね」
「その通りです。現在、アルムエルグ様とミリアリア様の仲は良いとは言えません。何故か分かりますよね?」
「お馬鹿な貴族子弟達が私とアルム様との仲を嫉妬して、悪意ある噂を流しているからです」
「それだけではありません。傍から見たらミリアリア様とアルムエルグ様の仲は最悪です。これが一番の理由です」
「傍から見るだけで、私達の仲は分かりません。私とアルム様は絶対に結ばれる運命の間柄なのですから」
「それを信じているのはミリアリア様だけです。私達側近はその運命が間違いではないかと疑っています」
「運命です! 私がそう決めました!」
「……話を戻します。アルムエルグ様との関係ですが、このまま行くと婚約解消の可能性があります」
「お爺様が亡くなったからですね。お爺様が後ろ盾になっていたので、アルム様との婚約が成立していたのですから」
「その通りです。先代国王陛下がお亡くなりになり、現在の後ろ盾は国王陛下です。先代国王陛下が今まで反対勢力を抑えつけていましたが、国王陛下は反対勢力を抑える力が足りません」
「反対勢力の貴族は誰ですか?」
「バルデハイム王国のほとんどの貴族達が反対していますね」
「アルム様が魔力を放出出来ないからですね」
「その通りです。『祝福を受けたミリアリア様に欠陥魔法使いは勿体無い』と皆が内心思っている様です」
「そこまで酷いと……」
「酷いと?」
「王族反逆者として馬鹿貴族達を細切れにして粛清したくなりますね」
「……偶に思いますが、ミリアリア様。本当に慈愛と加護の祝福を受けているのですか? 言葉使いが過激すぎて私達側近もドン引きします」
「これでも差し障りのない言葉を選んでいるのですけど?」
「……毒舌の成果ですね。早急に矯正しないといけませんね」
「話を戻しましょう。アルム様の婚約反対は貴族子弟達にも広がっていますよね」
「はい。これはベルファルト殿下の派閥からです。そして女子からも反対意見が出ています」
「……女子の派閥は私とリリムファーム様の派閥ですよね? リリムファーム様は賛成派だと思っていましたけど?」
「女子の反対派は『ミリアリア様を不幸にさせたくない』という考慮からです。アルムエルグ様との婚約は不幸になると考えて反対しているのです」
「その女子達には説教ですね」
「リリムファーム様と一緒に説教してください。ミリアリア様だけだと女子が自主退学する恐れがあるので」
「どういう意味かしら?」
「やり過ぎてしまう恐れが有るからです。ミリアリア様の毒舌に耐えきれる人はアルムエルグ様だけですから」
「……そこまでは酷くないですよ?」
「側で聞いている私達が泣きたくなるくらい酷い毒舌です。本当に呪いのせいなのか疑問です」
「……ごめんなさい」
「話を戻します。ミリアリア様とアルムエルグ様の婚約を成立する為には味方を作る事です。まずは派閥の女子を味方に付けましょう。」
「では制約の血判状が必要ですね」
「……その考え方が恐ろしいです。本当に慈愛と加護の祝福を受けているのですか?」
「神が私に祝福を授けましたが、何か問題が?」
ミリアリアの側近一同は『祝福は性格には反映されない』と思った。
そして『このような性格ではアルムエルグ様がドン引きするかも』と。
外見は美しく可憐な淑女だが、中身は同性もドン引きする性格。
側近一同はミリアリアの性格を矯正出来るのか不安に駆られた。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




