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23 バルデハイム王国の現状③

 ローデンファング公国とアスタテスラ国の戦争中。

 現在、ローデンファング公国が有利に攻め領地を占領し、アスタテスラ国は不利な立場に置かれていた。

 そんな時、先代国王の訃報が届いた。


「父上が亡くなった!」

「はい、ジャルブランド公爵領でエルドラージ王国の暗殺者に殺されたと……」


 ローデンファング公国を一緒に治めているドックライム公爵と一緒に聞いて私は全身の力が抜けて膝を着いた。

 バルデハイム王国の国王の弟である私、クックスライドは隣に居るドックライム公爵の力を借りて立ち上がった。

 父上が亡くなった。まだ親孝行すら出来ていないのに……。


「クックスライド様、王都に戻って先王陛下に葬儀に……」

「葬儀は略式で終わっている頃です。国王陛下はエルドラージ王国を倒した後で盛大に葬儀すると」


 私は葬儀にすら参加できないのか……。


「クックスライド様! お気を確かに! 葬儀が終わっても貴方には墓前に行かなければなりません!」

「……分かった。ドックライム公爵。後を頼む」

「アスタテスラ国は混乱中なので大丈夫です」


 数日前からアスタテスラ国内が混乱している。兵糧が燃やされたり、敵将が行方不明となったという報告が届いている。

 ドックライム公爵は「小さき守護者が動いている可能性がある」と私に聞こえる様に呟く。

 確かにその可能性が高い。アスタテスラ国と初戦でも小さき守護者によって同じような混乱が起きているのだからその可能性が高い。

 しかし誰の命令で? 小さき守護者は父上の配下だ。父上が死んだのだから誰の命令で動いている? 兄である国王陛下の命令か?


「急いで情報を集めろ! ドックライム公爵、小さき守護者からの報告は?」

「私の処には何も来ていません。それよりもクックスライド様は王都に戻る準備を」


 そうだった。私は王都に帰って父上に会いに行かなければ! そして国王陛下に詳しい説明を聞かなければならない。

 王都に帰る準備をしている途中、訪問の報告を受けた。

 小さき守護者の部下と言われているディーアだった。強行軍で此処まで来たようで疲れ切っている。


「小さき守護者はこちらに来ていますか?」


 疲れ切った声で私達に問うが「来ていない」と返事をすると絶望した表情に代わり膝を付いた。


「ディーア、私達に説明をしてくれ。先王陛下のお亡くなりになった訳とエルドラージ王国の同盟破棄と小さき守護者を」


 ドックライム公爵は私達が知りたい情報を問いただす。

 ディーアは立ち上がって説明した。


「先王陛下暗殺ですが、私も詳しくは分かりません。ジャルブランド公爵領で暗殺され犯人がエルドラージ王国だと。先王陛下のほかゴーイング様と護衛の者達全員が殺されました」


 ゴーイングまで死んだのか! それに他の護衛も全滅だと!


「先王陛下の暗殺現場にエルドラージ王国が行った証拠が残っており、エルドラージ王国の暗殺だとバルデハイム王国全体に広がっています」


 エルドラージ王国が父上を殺したのか。アスタテスラ国の戦争が終わったら私が滅ぼしてやる!


「……情報の広がりが早い気がする。故意に情報を広げた様に。作為を感じるな」

「その通りです、ドックライム公爵。しかし証拠が有り、国王陛下がエルドラージ王国の暗殺を宣言したので……」


 国王陛下が宣言したのでエルドラージ王国の暗殺となったのか。

 エルドラージ王国の同盟破棄の件は、


「その場に居たので説明できます。同盟契約のサインを記入するだけの時に、エルドラージ王国が先王陛下の暗殺の報告が飛び込んでその場で同盟破棄。そして国王陛下がエルドラージ王国王太子を討ち取れと命じられて、その場で戦争状態に入りました」


 ……タイミングが良すぎる。いや悪いのか? ドックライム公爵ではないが本当に作為を感じるな。


「小さき守護者は国王陛下の命令でエルドラージ王国王太子を討ち取る為に行動しました。私は国王陛下を守る為について行く事が出来ませんでした」

「国王陛下が討ち取れと命令したのか!?」

「はい。その時の国王陛下は先王陛下を殺された恨みもあり、小さき守護者だけではなく皆に命令しました」


 ドックライム公爵が質問してディーアが答える。……あの兄が激怒するとは。兄も父上に殺された事で感情を制御できなかったのだな。

 その後はどうなった? 小さき守護者がエルドラージ王国王太子を討ち取ったのか?


「小さき守護者がエルドラージ王国王太子に逃げられた様です……」

「逃げただと! 小さき守護者から逃げる事が出来たのか!」

「はい、クックスライド様。どのような状況下だったのかは私も存じません。そして国王陛下に任務失敗と伝えた小さき守護者は国王陛下に責められて……」

「責めたのか! 国王陛下が小さき守護者を!」

「はい、ドックライム公爵。それほど国王陛下の怒りは凄まじく。私も国王陛下の怒る姿は初めて見ました」


 兄の怒りは凄まじい様だ。兄は昔から怒りとは無縁の人間だと思っていたが、


「そして国王陛下が小さき守護者に『アスタテスラ国との戦争を終わらせてこい』と命令しました。アスタテスラ国との戦争が終われば兵達をエルドラージ王国に向かわせる事が出来るので」

「……という事は小さき守護者はアスタテスラ国に居るのか?」

「命令通りなら……。ドックライム公爵、小さき守護者は来ていませんか?」

「……来ていない。私の処には来ていない」


 ディーアが再度膝を付いて絶望した表情になる。

 ドックライム公爵が頭を抱えてため息をついた。


「ディーアよ。他に何かあるか? 小さき守護者以外の事で」


 膝を付いたままディーアが答えた。


「国王陛下と一緒に同盟締結に向かっていた神殿長が、国王陛下と仲違いをして国外追放となりました」


 なんだって! バルデハイム王国の国王陛下と神殿長が仲違いだと!


「激しい言い争いの末、国王陛下が国外追放を命じられ、神殿長はエルドラージ王国に旅立ちました」


 ……兄よ、……何をやっているんだ。


「……クックスライド様。王都で情報を集めてください。私はディーアと一緒に小さき守護者の捜索をしますので」

「……ドックライム公爵、頼んだ。ディーア、お主は少し休め。倒れるぞ」

「……お言葉に甘えて休憩させて頂きます」


 その場で倒れて意識を失ったディーア。……疲労で気絶寸前だったのだな。

 侍女にディーアを休ませるように指示した後、


「ドックライム公爵、後を頼んだ」

「お任せください、クックスライド様」


 同じ戦場で戦い信頼できる友人となったドックライム公爵。「後の事は頼んだ! 私は王都の状況を見て来る!」


 ドックライム公爵に後の事を頼んで、私は王都に戻る決意をするが、


「大変です! 敵将が簀巻き姿で発見されました。発見が遅れて瀕死で!」


 報告に来た騎士から詳しく聞くと、敵将は発見される三日間飲まず食わずで餓死寸前だったらしい。


「……ドックライム公爵」

「……クックスライド様は王都へ」


 後処理をドックライム公爵に全部任せる事になった。

 本当に王都に行っても大丈夫だろうか?

 ドックライム公爵が過労で倒れない事を祈りながら、私は王都へ出発する事になった。





 私の名はディーア・ダンムレイ。小さき守護者の部下として一生懸命頑張っています。

 そして今は小さき守護者であるアルムエルグ様を捜している最中です。

 探している場所はローデンファング公国とアスタテスラ国が戦争をしている最前線です。

 ……本当に怖いです。どうしてこんな場所で人探しをしないといけないのでしょうか? 答えは捜し人の目撃情報があったからです。

 ……敵国の将軍が簀巻きにされています。小さき守護者の仕業ですね。しかし数日前に簀巻き姿敵将が発見されたので、小さき守護者は此処には居ないでしょう。

 どうかしました? 小さき守護者が目撃情報の報告が届いた?

 次は? ローデンファング公国で? 最前線ではなくどうしてそんな場所で?

 ……行きますよ。私は小さき守護者の部下ですから。ええ行きますよ!

 ローデンファング公国のとある領地。この領地を治めているのはファラレスト・ローデンファング。旧ローデンファング王国の国母であるファラレスト様が治めています。

 海に面して綺麗な領地です。国母の名にちなんでファラレスト領。又の名を監獄領地と言います。

 どうして監獄領地と言われているのかは、とある女性が亡くなって気力を失くした男性達を閉じこめている場所だからです。

 領主の城を監獄に改造して男達を放り込んでいます。監獄内の男達の世話は男達の嫁達が交代で世話しており、主に食事と掃除と洗濯等らしいです。

 ……どうして監獄? あ、あの人ってローデンファング国の元国王陛下じゃ? 他にもお偉いさん達がいっぱい居るし……。

 それよりも小さき守護者を目撃したって人は?


「はじめまして、ファラレストです」


 ファラレスト様って先王陛下の妹君で、この領地を治めている方ですよね。


「この度は……」

「かしこまった事は良いわ。今は一領主ですから」

「……先王陛下がお亡くなりの事、心よりお悔やみ申し上げます」

「……そうね、葬式に出て本当に亡くなったのだと実感しました。兄が死ぬとは思ってもいませんでした」


 ファラレスト様はバルデハイム王国の橋渡しの為にローデンファング国に嫁がれて数十年。家族と別れて苦労なされたでしょう。偶に帰省していた様ですがそれもローデンファング国の為。


「兄と最後に会ったのは数年前でした。アルムも悲しんでいたでしょう」

「……はい、アルムエルグ様も悲しんでいました」


 報告書でアルムエルグ様が先王陛下と一緒にローデンファング国に行った事は知っています。そのときの有った出来事も。



「兄に助けを求めて、ローデンファング国は属国になりましたが、今では後悔しています。年寄りに領地経営をさせて。早く隠居したいわ」


 働き盛りの男性は生きる気を失くして監獄生活ですからね。報告書を読んで呆れましたよ。


「それで貴方はどのような件で来たのかしら?」

「はい、私は小さき守護者を捜している最中で、こちらで簀巻きにされた人が発見されたとお聞きしました」


 小さき守護者ことアルムエルグ様が居た形跡を見つければ上々です。ヒントが有ればよいのですが。


「小さき守護者ね。確かに犯罪者が簀巻き姿で発見されましたが、小さき守護者は誰も見ていません」


 ……空振りですか。此処まで来た意味がないです。今のところ小さき守護者の発見情報は届いていませんし、どこを探せば良いのでしょうか?

 さすがにアスタテスラ国に侵入するのは私でも無理ですし。


「そういえば兄と仲良しだったドックライム公爵家のアルムエルグさんの事ですけど……」


 アルムエルグ様ですか! 表向きは現在体調不良で寝込んでいます! 本当は小さき守護者でアスタテスラ国に居るかもしれません、とは口が裂けても言えません!


「……また体調不良なのですね。アルムエルクさんはお兄様と仲が良かったからね。ショックを受けて体調を崩したのでしょうね」

「……そうですね。私も心が痛いです」


 本当に心が痛いです! アルムエルグ様は先王陛下の葬式にも出席せずに、国王陛下の命令を聞いてアスタテスラ国との戦争を終結させているのですから!


 それにアルムエルグ様が居ないので、私達も苦労しているのです! 主に書類の配達です!

 アルムエルグ様は王都とルックナー砦を三時間くらいで走破します! 普通の早馬でも二日かかるのに! 宰相を務めている叔父が「報告が遅い!」って大変苦労しています!

 他にも書類の配達が遅れているので、エルドラージ王国との戦況報告も遅くなり、現場は大変な状況らしいです。

 ……マジでアルムエルグ様を見つけ出さないとバルデハイム王国が戦争に負けてしまう可能性が!


「ファラレスト様、私は任務に戻ります。お会いできて光栄でした!」

「今度はアルムエルグさんと一緒に来てね。領地を通って帰るでしょう。待っていますから」


 ……ファラレスト様はアルムエルグ様が小さき守護者だと知っているのですか?


「アルムエルグさんが小さき守護者と名乗る前から知っているのよ。お兄様から最初に聞いたあだ名は『非常識少年、国が生んだ理不尽、不条理な神に愛された頓珍漢』よ。少し考えたら正体くらいスグに分かるわ」


 ……そうですね。考えたらスグに分かりますよね! 黙っていて申し訳ございません! しかし小さき守護者は国家機密で!


「分かっているわ。でも帰りには寄って頂戴。待っているわ」

「……はい。必ず」


 脅迫されました。アルムエルグ様を見つけたら、ファラレスト様にお会いさせないといけません。

 早くアルムエルグ様を見つけて、学院に戻さないと! ずっと体調不良で休みでは出席日数が足りなくて留年の危機もあります。そうなったら友人のエリスから怒られてしまいます!

 エリスから『アルムエルグ様が居なくてミリアリア姫の機嫌が悪いのよ。ドックライム公爵家に見舞いも断られて、ミリアリア姫がアポ無しで突撃して止めるのに苦労したの!』と。

 私は友人の為にアルムエルグ様を探さないといけません!

 ……しかしどこを探せば? 一度ドックライム公爵の所へ行きますか。

新しい情報が入っているかもしれませんし。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] これでもしアルムが留年したら国王やドックライム公爵はどう落とし前をつけるのだろう?
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