8 公爵家次男の告白
先王陛下がオレを見て言った。
「さて、アルムエルグよ。まずは助けてくれて感謝する。そしてお前は何をした?剣で切りつけられても傷一つ付いていない、相手を殴っては壁まで吹き飛ばし、瞬時に移動する速さ。お前は何をした!命令だ!答えろ!」
……もう駄目だ!兄さんごめんよ!でもオレ一人だけの罪にしてもらえるように頑張るから!
「申し訳ありません!全部私がした事!家族は助けてください!全部私が悪いのです!」
「……私は何をしたかと問いた。お前は答えるのだ!お前のその力は何だ!正直に言うのなら罪は問わないでやろう」
……はい、全部白状します。
「身体強化の魔法を使いました。申し訳ありませんでした。国の決めた法を破ってしまってすいませんでした!」
……あれ?先王陛下は何も言わない。やっぱり法を破った事を怒っているのかな?当たり前だよね。でもオレ一人の罪にしないと兄に罪が及ばないように!
「誰に習った?」
「……独学です」
「嘘を言うな!」
「すいません。兄に習いました!」
「兄?お主の兄は確か学生だったな?」
「そうです。国の法律で未成年の者が未成年に教えるのは禁止されています。お許しください!全部私が悪いのです!」
オレは神殿で欠陥魔法使いと判定されて兄に頼った。兄は身体強化の魔法を極めろと言ってくれて一年間兄の指示のもとで身体強化を覚えたと先王陛下に説明した。
「兄は私の為に一緒に修行を手伝ってくれました。一日中身体強化の魔法を使い続ける事、早く動く方法、力を強化する方法、反射神経の強化、視力や聴力の強化などです」
「剣が体に当たっても傷がつかなかったのは?」
「皮膚を強化して鉄の様に硬くしました」
「……なるほど。よく分かった。確かに法を破ったのはいけないが、お前は私やミリアやゴーイングを助けてくれた。目を瞑ろう」
「ありがとうございます!できればこの事は誰にも言わないでください!任務に支障をきたすので」
「任務?」
「はい、父上からの内密の任務でベルファルト殿下よりも低い能力でないといけないので」
「……どういう意味かな?」
これは言わない方が良かったのかもしれない。オレは先王陛下に父から受けた任務の説明をした。
「なるほど。ベルファルトよりも低い能力でいる事でベルファルトの機嫌も良くなるし、お前も煽てやすいという事だな。……分かった。お前は私の命の恩人だ。黙っておこう」
「ありがとうございます!先王陛下!」
良かった!無罪になった!家族に罪は及ばない!先王陛下に感謝!
「ではこいつらを動けない様にしなければ……」
「私がやります!」
男達に近づいて両手両足を折る。一瞬で四か所の骨を砕いた。……手加減の訓練に一石二鳥!
「待て!何をしている!どうして骨を折る!紐で拘束すればいいだろう!」
「賊には勿体なくないですか?それに砕いたほうが早いのですけど……」
「砕くな!紐を使え!」
納得できないけど命令だから紐を使うか……。
全員を拘束して次は……。
「神殿に戻らなければならないが……。この場所がどこなのか。ゴーイングが無事なら……」
「神殿の方角はあちらの方です。先王陛下達が居ない事が分かって探している様ですよ」
「……どうしてそれが分かる?」
「聴力を強化して聞きました」
「……一つ聞くが聴力強化はいつも使っているのか?」
「必要な時だけですよ。聴力強化は使い勝手が悪くて。周辺の声が全部聞こえるのです。修行不足で聞きたい声だけを拾えなくて」
「……わかった。聴力強化は禁止だ!理由は後で言おう」
いきなり先王陛下に聴力強化を禁止された。どうして?なにかおかしな事があったかな?
「夜だから動くのは止めておいた方がよいだろう。ゴーイングの傷もなんとかなった。賊どもは……」
「賊は私達が囚われていた部屋に押し込むのはどうでしょうか?窓は鉄格子がありましたし、ドアも鍵をかける事が出来るようです」
「ではそこにまとめて置くか」
「私がやっておきます」
片手で大人を持ち上げて運ぶ。何故か先王陛下がため息をつく。疲れたのだろうか?
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