21 エピローグ
「ククク、ココをこうして。ケケケ、アレをああして……」
「何をしているのですか? コンキデムス様。それから変な笑い方を止めてほしいです」
「……悪辣な作戦に相応しく、笑い方を変えてみたんだ。何事も形から入るのがオレの信条だから」
「そんな信条は王族に相応しくありません。それよりも朝食の時間ですよ」
「ヘッ? もう朝食? あ、外が明るい」
「コンキデムス様、また徹夜したのですか? 徹夜は体に悪いから駄目ですと何度も言ったでしょう!」
「ごめんごめん、マユーラ。昨日面白い事を思いついて、計画してたら、ね」
「ね、ではありません! 早く朝食の準備をしてください! 皆待っていますよ!」
「……ねえ、どんな計画なのか知りたくないの? 普通は「どんな計画ですか?」って聞くところだよね」
「そんなことより、朝食が大事です。コンキデムス様は朝食を取ったら執務を始める前に仮眠して疲れを癒してください! 今日も予定が沢山あるのですよ!」
「……そんなこと。せっかく徹夜で計画を練った事がそんなこと……」
「はいはい、そんなことでいじけないでください。聞いて欲しければ素直に朝食準備しましょう。食べたら聞いてあげますから」
「分かったよ。朝食をとる準備するから手伝って」
「それは御自分でしてください。……はぁ、最初にお会いした時は素晴らしい方だと思っていたのに。今では……」
「……おーい、今ではなんだ? って部屋を出たから聞こえないか。しかし太陽が目に染みるな」
徹夜の疲れを感じさせず、着替えを済ませて食堂に行くコンキデムス。
この屋敷は王族のコンキデムスが住んでいる離宮の中の屋敷の一つである。そして屋敷にはコンキデムスの関係者しかいない。
食堂に入るとその場所は、大勢の者達がいる。少年少女から幼い子供達。そして朝食の準備の指揮している成人前の男女。大きな食堂に何十人もの全員がコンキデムスの関係者だ。
「コン様、おはようございます!」
「おはようございます! コン様」
コンキデムスが食堂に来たことに気付いた子供達が挨拶をしたり、寄ってくる。
「みんな! ご飯を食べるよ! 早く準備して! コンキデムス、おはようございます。早く席に座ってください」
メイド服を着たリーダー格の女性がコンキデムスを席に座らせる。その近くにはマユーラも居る。
「みんな揃ったか? ではいただきます!」
「いただきます!」
コンキデムスの合掌後の号令でみんな食べ始める。子供達は我先にと食べ始め騒がしい朝食の時間の始まりである。
この者達は孤児や犯罪者に命を狙われた者達、族に捨てられた者といるが、全員がコンキデムスに救われた者達である。
コンキデムスはこの子達に教育し育てている。成人した者達は従者やメイドとして屋敷で働いていたり、騎士や文官として働いている。
「コンキデムス様、お味の方は如何ですか?」
「美味しいよ、腕を上げたね。さすがマユーラ!」
食事は公爵令嬢のマユーラが中心となって作っている。公爵令嬢がどうして? と思うが、彼女もコンキデムスに助けられた一人であるからだ。
「それで徹夜でどんな計画を考えていたのですか?」
マナーが体に染みており、一人だけ完璧な作法で食事をとっている。コンキデムスも王族だから食事の作法は完璧なのだが、子供達と食べるとその作法が反映されなくなる。
「バルデハイム王国の戦力を減らす計画と二国同盟結成パーティ。いろんな催し物があってバルデハイム王国はきっと驚くだろうな」
「催し物って……。いったい何をする気ですか?」
「その辺は秘密。後で親父達を相談して計画を練らないと」
「コンキデムス様、国王陛下を『親父』とおっしゃるのはどうかと思いますが……」
「大丈夫だよ。執務中に『パパ』って呼んだこともあるし、会議中にも『おとっつあん』って呼んだこともあるから」
自由過ぎる王族の次期国王に呆れる次期王妃。マユーラはため息をついていたら、隣に座っている幼女に「お姉ちゃん、大丈夫? 元気出して!」と慰められた。
そしてコンキデムスの隣で食事をとっている青年が「任務ですか?」と尋ねる。
「みんなに伝えてくれ。今回の任務地はアスタテスラ王国だよ。バルデハイム王国と戦争させる予定だ」
「分かりました。しかし殿下はバルデハイム王国の同盟を結びましたが大丈夫なのですか?」
「エルドラージ王国とバルデハイム王国は短期間の同盟を結んだ理由は、小さき守護者が脅威に感じたからだよ。今のうちにこっちの戦力を整えて、相手の戦力を減らしておかないと」
「確かに、あの戦闘力は計り知れません……。私を含めて何人も簀巻きにされましたから」
「君はオレが鍛えた密偵の中でもトップクラスの腕前だ。それが赤子の手を捻るように簡単に無力化されて、オレもビックリだったよ」
「ハッキリ言って殿下と同じくらい強いかもしれません」
「オレもそう思うよ。だから時間稼ぎの同盟を結んだ。その間に占領したヨーデンボリーを支配して、戦力を整えてバルデハイム王国と戦う」
「バルデハイム王国の守護神である小さき守護者はどうするのですか?」
「……まずは情報収集だな。そして邪魔になるなら消す。オレが鍛えたお前達なら可能だ」
「相手は一人ですから、集団で戦えば可能だと思います」
「他にも正体を暴いて毒殺する方法も考えている。その為の同盟だ。頼むよ」
「はい」
「コン様! 僕も戦う!」
「私も戦うよ! コン様」
「はは、ありがとう。でもまずは文字を勉強して読み書きを覚えて、大きくなったら手伝ってくれ」
幼児達に慕われているコンキデムスを見てため息をつきそうになるマユーラ。今までの話し合いはバルデハイム王国の英雄の暗殺計画や戦争助長計画を朝食時にする会話ではない。そんな会話を幼い子供達にも聞かせるなんて。
この王太子は頭がおかしいのではないかと本気で考えるマユーラ。そしてそんな婚約者を愛している自分も大丈夫なのか疑問に思い始める。
「お姉ちゃん、大丈夫? 元気出して。このデザート美味しいよ」
隣に座っている幼女がデザートを差し出しながらマユーラを慰めてくれた。
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